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女力士への道  作者: hidekazu
相撲との出会い

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奉納相撲と校内横綱③

 夏休みに入り地区の話題は神社の夏祭りと奉納相撲一色。奉納相撲は小学生から大人までが二日間かけて行われる一大イベントである。小学生の部の話題は女子力士石川さくらが男子力士を退けて三連覇できるかと百川小学校がライバル校の久瀬小学校を団体戦で久しぶりに優勝旗を奪還できるか!

石川さくらと云う大戦艦を擁していてもどうしても勝てなかったのだが・・・・。


「奉納相撲に出るのは消極的だったのにどうしたの?」

「小学生最後だし爺ちゃんが出ろ出ろうるさいし・・・」


自宅で昼飯をしながら母と話をしていた。


「爺ちゃん相撲好きだからねぇ・・・友達に孫が出るって言いふらしてるから今更辞めたとかはできんよ」

「わかってるよ」と云うと自分の部屋へいって夏休みの課題に・・・・


 午後4時、浩平は着替えいつもの尾根へ走りこみに行く。今週末の奉納相撲のためと云うのは表の話で裏はさくらに会えるのではないかと云う期待もあるのだが・・・。

 あの夜、さくらは自宅玄関前で降ろしていこう会っていないのだ。あれから一週間さくらと会ったあの時間走りに云っているのだが会うことはなかった。さくらの家に行ってもいいのだが他のクラスメートだし玄関前で別れたのに行くのもどうかと云う変な拘りのせいで夏休み以降会ってはいない。百川神社は今週開催される祭りの準備で忙しくやぐらを建てたりテントの設営・照明など関係者が忙しなく作業をしている。いつもはひっそりしている土俵も綺麗に整備されひび割れなどは一切なく土の表面はなめらかに・・・。


「いつも来てるよね?奉納相撲出るのかい」と声をかけてきたのは神社の宮司だった。

「はい、初めて出る予定です」

「どこの学校?」

「百川の6年です」

「百川か石川さくらちゃんがいるんだけど団体戦は本当に勝てんからな」

「さくら知ってるんですか?」

「知っとるよだってすぐそこやし・・・友達か?」

「クラスは違うけど団体戦出る予定です」

ほぉと云う顔をしながら宮司は

「もしかして消防団倉庫前の今井さんのお孫さんか?」

「あぁはい」

「あぁそうか・・・爺ちゃん喜んでたよやっと出る気になったてさくらといい勝負したんだろう」


狭い地域の話だから伝わるのも早いのだが爺ちゃん多分余計な事も云ってるんだろうな


「最近、さくらと会いましたか?」

「あぁあったよ。彼女も毎日裏山走ってたのにここずっと走ってないと思ったらなんか足ねん挫したとかで自転車乗って市営のプールに行ってるそうだよ」

「プール?」

 そうかだから会わないのか・・・さくら足の調子よくないのか・・・

「この前自転車こいて行ってるの見たけどたいしたことなさそうだったわ。なんたって三連覇掛かってるしなぁ」


 浩平は正直安堵した。あの時俺と会っていなかったらあんなことにはならなかったのではないかとある種の罪悪感のようなものを感じていた。勝手に追ってきたのはさくらでそれでもって怪我をしたわけで別に自分のせいではないのだが・・・。


 「今年、百川小が久瀬小から優勝旗を奪還したらさくらはさぞよこ喜ぶだろう。いつもさくらが一人で戦ってきて結局最後は体力使い果たして負けてしまう」


 団体戦は先鋒・次鋒・中堅・副将・大将の5人1チームで戦い5勝したほうが勝ちになる。極端な話で云えば副将まで全敗だとしても大将が5人勝ち抜けば優勝。百川は昨年さくらを大将に決勝まで云ったが決勝で大将として5人連続で相撲を取ることとなり最後の大将戦で力尽きてしまったのだ。個人戦では盤石でも団体戦は鬼門なのだ。


「あんたがさくらを援護してやらんと」と肩をたたきそれだけ云うと社務所の方に戻っていた。


「団体戦か・・・」土俵の上には、7本の幣、榊、献酒の瓶子やお清めの塩などが並んでいる。

(さくら団体戦で絶対優勝しような!)浩平は土俵の前で一礼すると裏山へ・・・・。


浩平自身がここまで相撲に熱くなるとは思わなかった。(俺が絶対さくらに優勝旗持たせてやる)


 奉納相撲の前日、選ばれたメンバー学校に集合して稽古をおこなった。さくらも顔を出したが右足首には黒いサポーターが巻かれていた。

 みんなからサポーターのことを聞かれても適当に誤魔化して触れようとしない。


 普通に四股は踏んではいるし見た目には何ともなく見えるが・・・・申し合い稽古がおこなわれているがさくらは不参加。本来ならさくらが先頭に立ってというところなのだがそれはさくらの判断でやめたようだ。相撲クラブの顧問の教師にはそれなりの理由を云って稽古は自粛する旨とのことで了承を得たらしいが他のメンバーからすると校内横綱が負傷していることは不安以外の何物ではない。


 稽古が終わりさくらに声をかけても「大丈夫だから心配しなくて」と笑顔で答えるがどうしてもそれが作り笑いに見えて仕方がない。

「さくら。調子をよくないんだったら辞退したほうが・・・」と云った後に余計な事云ってしまったと思ったがさくらは

「大丈夫だよ心配しなくてもそれより明日決勝で対戦したいねぇ」と・・・


 奉納相撲 個人戦。


さくらも浩平も順調に勝ち上がりライバルである久瀬小のメンバーを撃破して二人の望み通り決勝でぶつかることとなった。


土俵下では学校での春の大会同様女子と男子の生徒達が応援に駆け付けている

「さくら!三連覇だよ」

「浩平!男のプライド見せてやりゃ」


      声援はヒートアップ。保護者も含めてある意味今日の大一番なのだ


 二人は一礼をとて土俵に上がると二人は土俵の端で四股を踏む。それに合わせ観客は掛け声をかける。

「よいしょ・・・」

「よいしょ・・・」

掛け声に合わせて四股を踏む。お互いにその振動が響いてくる。それが終わるとお互い蹲踞する。


 さくらは今までになく緊張していた。確かに三連覇がかかっている事。足の状態が良くないことなど色々あるが一番は浩平の体だった。改めて裸の体に黒廻しを巻いた姿はさまらよりも一回りも大きく。あんこタイプではない筋肉質の体。さくらとて155cm・55キロなのだがそれでも浩平はさらに大きいのだ。

 (春の大会の時より一回り大きくなっている)怪我をしておんぶしてもらったときに背中の大きさを感じていたが

 (さくら、足の怪我直ってないのになんで・・・)

浩平はさくらと違って勝負のことよりさくらの足のことでいっぱいなのだ

 さくらのここまでの相撲は得意の四つからの投げではなく立合いの際の変化からの叩き込み。さくらのことを知っている観客からは「つまらない相撲」と云う声も・・・。さくらの右足首はサポーターで固定してある。

 浩平は、さくらが変化してきたらそれに掛かって負ければいいとさくらとは全く真逆のことを考えていたのだ。


「見合って見合って…はっけよい、のこった!」

さくらは立ち合いからの変化でと想っていた浩平にとっては意外だったことに両まわしを取ってきたのだ。浩平も慌ててとりにいく

(何やってんだよさくら。そんな状態でする気かよ)

(浩平君、何やってるのよそんなに簡単に両まわしを取らせる何って舐められたもんね)

さくらと浩平との膠着状態が縛ら続いた。


浩平はさくらがこの体制から投げに来るかと思ったが・・・・浩平の耳にさくらの苦しい声が


「はぁはぁはぁ・・・」「はぁはぁはぁはぁはぁ」

さくらの息が早々上がってたしまったのだ。額に汗が浮かぶさくら。

(ろくにトレーニングもできていなかったんだろうだったら)

浩平は四つのまま「さくらを持ち上げる様に揺さぶりをかけると浩平は胸を合わせて浩平は一気に土俵際まで持っていくと腰を低くして一気に吊りだして勝負はついた。


 女子生徒達からは悲鳴が男子生徒からは歓喜が境内に地響きのように響き渡る。


さくらは土俵上でひざまずいて両手をついてしまったまま立ち上がれない。浩平は両手を差し伸べる。「立てるか・・・」

「うん・・・」

浩平はさくらの脇に両手を入れて立ち上がらせる。

 額に大玉の汗を浮かべた顔は悔しさであふれているのかと思ったが苦笑いしながら

「完敗だよ。やっぱり男だねぇ完全に力負け」と

「さくら・・・」


小学生の部が終わり中学生の部・成人の部が終わり各部の入賞者が土俵上で表彰され幕は閉じた。


 男子達は社務所の裏で着替え浩平も終えて出るとさくらが社務所前のベンチに腰を下ろしていたが浩平の姿を見るなり少し足を気にするような素振りを見せながら浩平の前に歩いてきた。


「足大丈夫か?」

「大丈夫だよありがとう」

浩平は一つ息を入れて

「明日の団体戦・・・・絶対優勝旗待たしてやる」

「・・・・・」

「えっあっぁぁ・・・・ゆうぅぅ優勝しよな絶対」とみるみる顔を真っ赤になるのが自分でわかるほど恥ずかしながら興奮している自分にさくらはみるみる表情が変わる浩平の表情を見ながら

「絶対優勝しようね。それと、今日の相撲本気でやってくれてありがとう」

「えっ・・・」

「私が変化してくると想ったんでしょ?あんなにあっさり両廻し取らせるんだもの」

「えっあっぁぁ・・・・」

「もし、わたしに勝ちを持たせるようなことしてたらひっぱたいていたと思う」

「・・・・」

それだけ云うとさくらは女子友達と祭りの出店へ・・・・

(なんか俺の考えていたこと見透かられてるなぁ)と後ろ振り向くと。


何人かの男子のクラスメートが・・・・


「浩平。さくらとできてるのかよ」とからかい始めた。

「・・・そんなわけないじゃん」

からかわれながらも

(さくらに勝たせてあげなくてよかった。それはさくらにたいして失礼だものなぁ。あれでよかたっんだ)


 翌日の団体戦は浩平が三人抜きして残り一人でさくらに一人目は相手の大将に突っ張りから突き出されたが再度の戦いで今度は四つ相撲からさくらが渾身の上手投げで団体優勝。


 百川小の秋の大会は二人とも万全の態勢で対決して力強さを増した浩平が完璧な横綱相撲のようなさくらの果敢な攻めを真正面から受け止めてひるまず余裕をもって返えしての堂々とした勝ちで横綱の称号をさくらから最後の最後で奪ったのだ。


 中学進学後はさくらは当然のように相撲部へ浩平はもう一度野球をしたいということで野球部へ


 さくらは浩平が相撲をやってくれるのかもと淡い期待もあったが・・・・それでも小学生最後の相撲大会は忘れられない思い出になったことはお互い同じだった。


 




 




 

 






 

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