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女力士への道  作者: hidekazu
力士の娘

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人は人我は我 ①

真奈美と凛子は初戦のウクライの戦のオーダーを見ながら・・・・。


「すいません。こんな事になって・・・桃の山が欠場何ってまったく考えていなかったので・・・」

「欠場って決まったわけではないのですからとりあえず百合の花を筆頭にアマチュア二人の奮闘に期待するしかありませんので」

「真奈美さんの云う通りになってしまいましたね」

「私の?」


「大阪で初顔合わせした時におしゃってましたよね・・・「アマチュア二人が多少なりとも両横綱の擁護ができるような活躍ができるように」って・・・擁護ってとは想いましたが今になってはアマチュアの二人に確実に勝ってもらわなければならなくなった。おたくの稲倉はアマチュアなりに修羅場をくぐって来ただろうが石川さくらは・・・プロ側の私がとても云える立場ではないんだが」


「正直、初戦からうちの映見を出すことは考えていなかったしまして桃の山が現時点で出場できないことは想定していなかったですが・・・ただ今度の事が昨日の時点で出たことは救いです。これが今日の朝とかだったらとても気持ちの切り替えはできなかった。昨晩は三人で高級焼肉食いに行きまして・・・」


「焼肉?」


さくらと映見に嵌められたわけではないが高級焼肉をそれも三人で五万以上も支払わされてしまったがそれでも重苦しい雰囲気を少しでも払しょくしたいのとさくらの動揺を少しでも落ち着かせたかった。とかなんとか考えていたけど単純に美味かったと云うオチなのだが


「なんか緊張感ないって云われそうですけど・・・」


「余裕?」


「映見が意外と開き直っていると云うか何か肝が据わっていると云うか彼女も色々ありましたから」


 ちらっと映見の姿を見ると軽く四股を踏みながらリラックスしているような姿は桃の山が来ていないと云う悲壮感は感じられない。それは逆に覚悟を決めたと云う表情なのかも・・・。対してさくらも四股を踏んでいるがどこか硬い動きはさくらの気持ちそのものだろう。そして百合の花は小上がり縁手に腰掛け瞑想に・・・。多分映見と同じく覚悟を決めているのだろう


「稲倉がカギになるってことですかね?彼女の相撲ちょっとイメージしていたものと違っていたので」


「どこが?」


「四つ相撲メインの選手かと想っていたが突き押し相撲もかと想えばはたき込みなんかの引き技なんかしたりして真奈美さんが指導するんですか?」


「以前は私も云っていたこともあったのですがあれも頑固で・・・でも最近自分なりに色々想うところもあったのでしょう彼女なりに幅を広げているようです。百合の花関や伊吹桜に色々相談しているようです。私にはしてくれませんがね」と笑みを浮かべる真奈美


「石川さくらは確か相撲部の・・・」


「えぇ島尾は選手としてはちょっと運がなかったけど指導者としては優れた監督です。まだ若いから危なっかしいところはありますが明星高校女子相撲部の躍進は彼女でなければ無理だったでしょうね実際うちの相撲部は高校相撲部に負けると云う大失態をしているんで」


「本当にそう思ってます?本音は愛弟子に負けたことは逆の意味で嬉しかったのでは?」


「いいライバルです。相撲も女としても悔しいけど」


「女として?」


「えぇ・・・相手は私より一回り以上若いんで」


「・・・・」


別に濱田の事があってこんな云いかたをしたつもりはなかったがやっぱり朋美は油断ならないと想っていたりいなかったり・・・ただ彼女の行動が私と光さんをもう一度・・・いやそんな話じゃなくて


 葉月が監督会議が戻ってきた。その表情が会議に行くときと違う事に真奈美と璃子はなんなく感じている。なんか緊張と不安気な表情だったのに今の葉月は少しほっとしたような・・・。


「どうかされました?」と璃子が話しかける


「えっ、何でですか?」


「いや少し気持ちに余裕ができたような」

「璃子さん・・・・気のせいですよそれは今でも気持ちになんか余裕はないですしほんとはそれじゃまずいのですが」

「会議の方は?」と真奈美


 選手のオーダーの提示から試合形式及び流れの確認の最終打ち合わせが会議の内容であった。葉月は選手達と真奈美と璃子を呼び寄せる。


「今朝、ちょっと話はしたけどオーダーは先鋒はさくら・中堅は映見・大将は百合の花で行くわ。特にアマチュア二人にはいきなりプレッシャーをかけるようなことになってしまったけど・・・」


 映見と百合の花はこうなることは想定していたかのように特段不安げな表情を見せてはいないがさくらはどうしても・・・


「さくら、桃の山はあなた達を裏切ることは絶対にしない。それは人として女子大相撲の横綱として・・・。だからさくらはあなたができることを全力でやるその一点だけよ。今日の大会はあなたにとってもちろん映見にとっても厳しい戦いになるそれは覚悟してプロと同じことをあなた達に要求するから・・・それと百合の花」


「はい」


「私にとってあなたは絶対横綱だから・・・頼むわよ」


「はい」


 今、桃の山が十和桜と会っていることを云う事はしなかったその必要はないと想ったから。二人がどう今回の事をどう決着をつけるのかもちろん一方的に悪いのは十和桜であることは明らかだがそれ以前から桃の山には苦手意識があったことは事実。桃の山の正当なライバルとして十和桜がなってくれたらお互いに成長できる。確かに今回の事は決して許されるものではない当然それ相応の処分は下されるべきではあるがもしできるのなら女子大相撲界に残ってもう一度一からやってもらいたいもちろんそれは本人次第だが・・・・。


「三人ともこれが日本の女子相撲ってところを見せて・・・以上」


 三人は大きく頷く。適度な緊張感を従いながら。


「璃子さん・真奈美さん。よろしくお願いします」と葉月は軽く頭を下げた。二人も同じく。


 すでに会場では一回戦のロシアvsイギリスが始まろうとしていた。控室のモニターに映し出されている会場の様子から観客席はほぼ満員、否応なく緊張感が高まる。


(桃の山、中途半端な気持ちで土俵に立つのなら来なくていいわ。来るのなら万全な気持ちで来なさいよ。ここで勝つことが二代目妙義山を襲名する大事な場所なのよ!それをできるのは桃の山あなたしかできないことなのよ!)


------------椎名葉月 自宅-----------------------


時刻は午前十時を回っている。桃の山と十和桜はリビングのソファーに対面で座ったまま十和桜は桃の山に視線をずらすようにしながら時間だけが過ぎていく。


「大会に行かないつもりですか?」と十和桜は俯いたま桃の山には視線を合わせない。


「それはあなたが女子相撲界に残りたいと云わないのなら大会に行くつもりわないわ。さっきはそのつもりだったんじゃないの?口から出まかせ?」


「やっぱり私は・・・」


「私は理事長に直訴する。忖度と云われてもいい私がいいと云っているの!私の母が理事長だからなに?私はあなたに貸しを作るとかなんってさらさらないから!」


「私が十和田富士の娘だからですか?」


「十和田富士関は私の母より相撲は強かったと思う。過去のアーカイブを協会のデーターベースから見て大怪我の前までは足元にも及ばなかったと云うのがよくわかった。今まで母の取り組みのアーカイブなんか意識して見なかったのだけどやっぱり二人は凄かったんだってだから私達もいいライバルになれるんじゃないかって・・・私が最も苦手なのは十和桜なの大柄なくせしてスビート相撲もできるまるで十和田富士関のように相撲のDNAってそう云うものなのかと・・・」


「なんで・・・・」十和桜にとって桃の山の一言一言が心に痛いそれが桃の山の本心であるから余計に痛いのだ。桃の山に十和桜相手に腹芸なんかできない本当に素の気持ちしか表現できない純粋無垢な一人の女性とても勝負の世界で生きて行けるような女性ではないことを力士仲間は感じているから・・。


「私はあなたみたいに勝負だけに拘れない勝ち星だけを取るために相撲以外で相手を陥れてと云うのは許せない。でもそれは自分の心ひとつで直せることもったないよ十和桜!」


「うっっっ・・・」


 もう十和桜自身云う事はなくなった。横綱桃の山の純粋な想いに反論するようなことはもう・・・。


「もう一度初心に帰って相撲・・・やってくれるよね?」

「うっっっ・・・」


 桃の山はソファーから立ち十和桜の両手を持ち立ち上がらせるとそっと抱いてあげた。


「力士の仲間達の前でこんなことはできないからね」

「桃の山さん・・・」

「今日は私の付き人になってくれるよね」

「でも私は・・・」

「横綱桃の山として私はあなたを守る。だからあなたはそれに応える義務があるのここで逃げたら十和田富士関の顔を汚すことになる。それは私も同じ。もう私達に逃げ道はないの前に進むしか」

「わかりました。横綱にそこまで云われてしまったらもう」

「ありがとう十和桜」


 二人はしばらく抱き合ったまま時間だけが過ぎる。すでに大会は開催されているにも関わらず桃の山にとっての優先事項は十和桜との和解・・・いや和解と云うのはちょっと違うのかもしれない十和桜が一方的に悪いのだから・・・でも桃の山にとってはもうどうでもいい話なのだ。天性な相撲センスと努力で横綱になった桃の山にとって今回の事は大きな試練。でもそれをある意味乗り越えることができた。勝負師と云う力士である前に一人の女性として一人の人としてそれは十和桜も同じ・・・。


 これからここを出て会場に行ったとしても多分二回戦は始まっている。日本が敗退していればそれは桃の山の責任でありその時は引退するつもりでいる。それは横綱としての責任の取りかた勝負しなければ絶対にいけないことを放棄したのだから・・・・。


(私の相撲人生を賭けるつもりではなく本当に相撲人生の生死をかけて日本が負けたら私の力士生命も死ぬのよ!)







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