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女力士への道  作者: hidekazu
力士の娘

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心理戦 ⑤

 大会前日、午前中は協会本部に併設されている相撲場で代表選手及び稽古相手として伊吹桜を含め軽い稽古を。本来なら十和桜もいるのだが・・・。


 アマチュア二人の稽古相手は伊吹桜と十和桜がするのだが十和桜は体調不良と云う事で欠席。替わりにするのが・・・。


「江頭・・・じゃなくて・・真紀さん」

「映見、今お前呼び捨てにしようとしたろう?」とにやけた顔で・・・

「いや・・やだなぁもう・・・ねぇさくら」と映見はさくらにふる

「お久しぶりです江頭さん。あの出稽古以来ですね・・・久しぶりにあえてうれしいです」と頭を下げるさくら。

「久しぶりさくら。少し調子よくないとか聞いたけど」

「大丈夫です。江頭さん本場所応援してます」

「ありがとうさくら。それに引き換え・・・まぁ補欠だからな映見は気楽だろう」

「臨戦態勢です。ハイ」

「映見・・・大学の時はお前に辛いことばっかしして・・・世界大会で表彰台逃したのは・・・」

「ハイ。稽古ですよ稽古。さくら久しぶりに江頭先輩に稽古つけてもらいなよ。一応女性力士だから」

「はぁ~一応だ!映見!」

「恐わぁーい・・・顔が」と映見はにこやかに

「ぜってい潰す!」と映見の首を絞める真似事を


 久しぶりの主将との再会。映見にとってはしごかれまくったにっくき敵。でもそれも今は少しだけ許せる気分。それは真紀も同じ気持ちなのだ。大学時代本気で映見を潰してやりたいこともあった。それは自分の相撲と映見の相撲とのレベルの差がどうしても許せなかった。素直にそのことを認めたくない自分が・・・映見とはあの出稽古以来会う事はなかった。瞳から稽古に復帰したことと今度の大会に補欠ではあるが選ばれたことに正直ほっとした自分がいた。


(女性力士として一歩を踏み出して映見の相撲のレベルを今は素直に認めいっしょに部員として居たことそのことが自分にとって相撲としての大きな財産になっていることを・・・先輩ながら映見に色々なことを教えてもらったよ恥ずかしながら・・・)


「映見!三番勝負しようぜ久しぶりに」

「大丈夫ですか?私、負ける気がしませんけど」と映見は自信満々

「云ってくれるな映見。いざ勝負!」


 その二人の姿を微笑ましく時に羨ましく見ている桃の山がいた。アマチュア経験がない桃の山にとっては願ってもできない。


「桃の山。さくらに稽古をつけてあげなよ」と百合の花

「あっはいわかりました。さくら!」と桃の山はさくら呼びこちらも三番勝負を

「お願いします。桃の山関」と一礼をするさくら

「よろしくねさくら」

「じゃ・・いざ勝負です桃の山さん!」


百合の花が桃の山とさくらの稽古を見ると隣に伊吹桜が。


「桃の山少し元気になったんじゃありませんか?」

「そうだな。この前の合同稽古より動きいいしそれよりも何かイラっとした表情も消えて以前の桃の山に戻ったかな・・・そう云えばさくらと桃の山って似てるよな」と百合の花

「天然ボケのところが」と伊吹桜

「そうだなぁ」


そして稽古の様子を遠目に見る二人の元力士。


「日本チームいい雰囲気じゃないですか葉月さん」と長谷川璃子(元大関 藤の花)

「えぇ・・・桃の山もなんとか」と椎名葉月(元横綱 葉月山) 


 映見と江頭は二勝一敗で江頭が勝利


 桃の山とさくらははなから勝負にならないが桃の山がさくらの動作一つ一つに的確に褒めたり叱ったりそして修正させながら稽古を続けている。


「葉月山の四股名は止め名にするそうです」

「そうですか・・・」

「葉月山の四股名はあなた以外に継承してはダメだと想っていました。葉月山の四股名を継承できる力士なんかもう永遠に表れないと」

「璃子さん・・・」

「私は今でもあなたは裏切り者だと想っていますよ」

「・・・・・」

「あなたが日本の女子相撲界にとってどれだけ重要なのかを自分自身が自覚していながら去ることの意味を」

「璃子さん」

「でもそのことに無意識のうちに協会は甘えていた。あなたの監督就任は最高の宣伝効果を生み注目度は今までの比じゃない。ましてや理事長はあなたを後継者として印象付けようとまで・・・あなたからしてみれば結局は協会の掌で踊るだけ踊らされていた。そう思っても不思議じゃない」

「私はそんなふうには」

「だからもう自由になってください。そのかわりもうあなたが戻ってこれる場所はここにはありませんよたとえあなたが絶対横綱元葉月山とてもう戻る場所は・・・それは肝に銘じてください」

「わかっています」

「でも相撲会場には入れますので来年ここに女子相撲のための常設の相撲会場ができます。本当はそこで落成の土俵入りをしてもらいたかったと理事長なんか想っていたんでしょうけど」

「それは現役の横綱がやることです。百合の花と桃の山であの二人は立派に横綱を張ってくれています。あの二人なら」


 桃の山と江頭が三番勝負をしているがさすがに横綱相手では江頭も刃が立たない。前回の合同稽古の時十和桜との稽古であまりにも意識して劣勢になりながらも五番やって負けることはなかったそれでも桃の山の相撲からはほど遠かったのだ


「十和桜との一件で桃の山が激しく動揺していたことがずっと気になっていましたが今の相撲を見てるともう大丈夫ですね」

「十和桜は協会から追放したほうが良いと想っています」


「璃子さん・・・」


「どうも外で色々云っているらしいのです。桃の山は理事長の娘だからなれたとか日本の女子相撲は海外の考え方から相当遅れているとか・・・まだ女子大相撲の力士や協会を罵倒するならいやそれでも許されませんがこの前の合同稽古で稲倉に完璧に負けてしまったことが相当に腹に据えかねているようでどうも稲倉の事を外で貶しているらしくてそれに理事長と倉橋さんとの関係も嘘八百並べてそれとあなたが相撲界から去るのは理事長に因縁があってって・・・」


「なんでそんなこと・・・」


「自分が力士としてやるべき鍛錬をせず他人のせいにしそれどころか相手を貶める行為など絶対に許してはいけない。あの体格・パワーからしたらまだ全然体を使いこなしていないやるべき事はいっぱいある。なのにそれをせず人の批判など言語道断です。私はこの大会が終わった後番付編成会議がありますが私は十和桜を春場所は出場停止処分かつ幕下まで落とすべきだと提案するつもりです」


「それは・・・」


「葉月さん。私もどちらかと云うと男子の大相撲に準じて女子相撲もと云う世代でやってきた力士です。結局最後は勝ち星が取れるかどうかその他の事には多少見て見ぬふりをと想っていた人間です。でもこれからはそれじゃだめだ。世界ではスポーツかも知れませんが日本では礼節を軽んじるような者が力士をやってはいけないそこは古い考え方かも知れませんが・・・あなたや妙義山。ここのところの百合の花もそうでしょ。負けが続いて内外問わずボロカスに云われながらも愚痴一つ表に出さなかったましてや他人の批判など・・・なのに十和桜は!」


 映見とさくらが二人で形を作りながらそれに対して倉橋が細かな指導を手取り足取り足の運びから廻しに入れる指の入れ方まで事細かに・・・。倉橋がここまでやることは映見でさえ見たことがなかった。


「女子大相撲力士は土俵の上では女を捨てても土俵を下りたら淑女であれ・・・と元横綱三神櫻の遠藤美香さんが【裸体女力士】と云う小説で書かれていたんです。個人的にはあの小説はどうかと想いましたがでもあの一文は私も同意します」


「土俵を下りたら淑女であれ・・・」葉月はつぶやくように口にした


_______________________________________________________________________________


西経女子相撲部 相撲場


 土曜日の午前中。稽古を終え部員達は二人を除いてはもう相撲場には居ない。小上がりの座敷では吉瀬瞳が模擬試合の動画編集を向かい側では瑞希が瞳を眺めながら相撲部公式フェースブックを更新中


「瞳、そっくりだよね」

「何が?」

「監督に・・・」

「監督代行なんだから一応」

「血は繋がっていないけどまるで生き写しのように部員達への指示なんかお前は倉橋かと思ったわ」

「それは褒めてるの貶してるのどっち?」


瞳は黙々と動画編集作業を


「そ云う云いかたもそっくりだよね。あぁ怖わ。それとさあまた濱田さん来ないかな」

「・・・・」

「監督がズル休みの時代理で来たじゃない最初は冗談かと想ったけどさあ。でも稽古ではさすが相撲をやっていただけあって指導も的確で後半の相撲における力学的なんちゃらの講義も面白かったしなんかさぁ島尾さんの気持ちもなんとなくねぇ。私もちょっと何って云うのデートとかして見たいなぁーとかさ・・・まあ歳の差はねしょうがないけど」

「・・・・」瞳は瑞希を睨む

「うん?あぁぁ変な意味じゃなくてあぁぁようするになんだその惹かれてしまうものを持っていると云う意味よいやいや別にねぇ・・・ううん」


「嫌われるよりはいいと思う。倉橋監督の男を見る目は確かな証拠だと」


「なんか何気に自慢してない?」


「ちなみに云っとくけど瑞希と父とではあらゆる意味でレベルが違いすぎるから多分二回目のデートはないと思う残念だけど・・・それとこの前の講義で運動方程式の計算に手間取っていたのにはいただけないってエムエーイコールエフは、高校物理で一番有名なのにってそれと力の合成の2つの力がθで交わる場合の計算も怪しかったってそれと・・・」



「はいはいはいはい・・・もう結構です。ちょっと付き合うのはめんどくさそうなのでハイあきらめました」

「私の父と付き合えるのは監督以外無理だと思う」

「ごもっともな意見で・・・ってそろそろ終わる編集の方?」

「今、インスタ見てるから」

「はぁ~?」




 


 

 


 



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