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女力士への道  作者: hidekazu
力士の娘

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心理戦 ④

べッドボードに置いてあったスマホが鳴る。相手の電話番号が表示される登録されていない相手。普段なら出ないのだが・・・・。


「はい」

「あっもう寝たかなと想ったのだけど・・・元横綱三神櫻の遠藤美香です」

「遠藤さん・・・」

「あんまり現役力士に直接は電話なんかしないんだけど」

「あっあの・・・雑誌やネットなとで記事読ませてもらってます」

「今はフリーの相撲ジャーナリスト見たいな仕事やっているけどねぇ協会の仕事しないで緊張している?」と笑いながら


「えっあぁ・・・ちょっと寝れないことがあって」

「そうあなたもそんなことがあるのね。最近のあなたの表情にちょっとねぇ・・・」

「どうして私の番号知ってるんですか?」

「うんちょっとね・・・ある方からあなたがちょっと悩んでいるみたいだから話してあげてくれませんかって云われてね」

「そうですか・・・」


 桃の山はスマホを耳にあてながら青白い光を纏ったスカイツリー見ながら


「遠藤さんは私の母のライバルとして相撲してきたわけですが・・・」

「ライバルって云われていたけど妙義山関とは雲泥の差よ。引退間際はもうボロボロの状態だっと思うわ妙義山はそれでもそんなことは表面上は一切見せなかった。私が勝てるようになったのはそんな状態だったから・・・」

「母は三神櫻関に優勝を奪われた時物凄く悔しがっていて家でも話しかけるのも怖くて・・・」


「それは悪かったわね横綱は本当に勝負の鬼だったからでもそれだけ相撲に真剣だった。とても私が敵う相手ではなかった。それでも自分だけ勝てばよかったわけではない。あの絶対横綱の葉月山関をスカウトしてきたんだからそ云うところはあなたのお母さんの凄いところよね。最後は葉月山関に投げ飛ばされて引退したわけだけど・・・その母から生まれた娘が横綱になった。それはきっと運命だったのよ。」


「別に私は・・・」


「あなたは自分でこの道を選んだ。そして若くして横綱になった・・・相撲は実力の世界どんなに親が偉大でも実力が伴わなければそして努力をしなければ三役には上がれないましてや横綱何って・・・桃の山関今までやってきたことに自信を持ちなさい。自分が妙義山の娘と云う事は捨てる必要はないましてやそれを重荷だとおもっているとしたら大きな間違えよ。


 私が雑誌で百合の花関を厳しく評価したもう一つの意図はあなたに百合の花を奮い立だせる母譲りの鬼のような相撲を期待しているの・・・若くして横綱になってしまったあなたはこれから大変だと思う。肉体的と云うよりも精神的に・・・百合の花はあなたに葉月山を引退に追い込んだあの頃の自分をあなたに期待している。百合の花の本気はあんなものではないわあなたの本気もまだまだこんなものではないでしょ?あなたは横綱だけどまだまだ挑戦者なのよ!」


「三神櫻関・・・」

「元三神櫻だから一応云っとくけど」

「すいません・・・つい」

「とかにかく今は桃の山は桃の山よそれは肝に銘じなさい。それと・・・自分が真の横綱と想えたら妙義山に改名しなさい。妙義山の四股名を継ぐごとができるとしたらあなたしかいないのだから」

「遠藤さん・・・」

「今度の大会期待しているわ。決して楽な戦いにはなりそうもないけど」

「はい」

「それじゃ」

「あの」

「なに?」

「誰に頼まれて私に・・・」

「ちょっと不器用な姉御からね」

「姉御?」

「それじゃ」


電話は遠藤の方から切れた。遠藤は女子相撲の解説者・雑誌などの媒体なとで女子相撲に関しての記事を書いている。相撲協会に属してはいるがどちらかと云うと少し距離を置きご意見番的位置とでも云うのだろうか?協会にも厳しいことを云うこともある。理事長の山下紗理奈を公然と批判した記事も書いたことがあった。公傷制度の設立に関して理事長と対立したことがあった。 


 日本での場所以外にも女子力士達はここ最近は海外遠征も多くある意味男子の大相撲よりも過酷な面もある。それに対して理事長は一種の甘えのような公傷制度には批判的立場だったのだ。そのことに真向対立したのは遠藤(元横綱三神櫻)だったのだ。公傷制度以外の諸問題において理事長自身はそんな気がなくともいつの間にか裸の女王様になりかけそうになっていた。その彼女を救ったのは遠藤だったのだ。唯一紗理奈に意見を云えるいや云ってくれる存在なのだ。


「こんなところで宜しいですか元絶対横綱妙義山」

「その云いかたやめてくれるか・・・まったく」


 理事長の山下紗理奈は品川にある遠藤美香の仕事場として借りているマンションにいるのだ。


「あなたが一言かければいい話じゃないの?」

「倉橋にあなたは黙っていた方が良いって云われたんだが」

「倉橋さんか・・・あなたの天敵ねぇ」と笑みを浮かべながら

「・・・・」


 小さなオフィスの窓から東京タワーがレインボーカラーに照らし出されている。


「桃の山はこれから苦しい経験を積んで絶対横綱としてコアなファンからも力士達からも認められるまでは多少時間を掛けた方がいい。覚悟していたとしても横綱になればますますあなたの四股名は重圧してのしかかる。桃の山がどんなに強くても遅かれ早かれ妙義山と云う壁にぶつかる。


 大関昇進の時あなたが妙義山を桃の山に譲ろうとした時に断ったのはまだその域には達していないから横綱になっても改名しなかったのはまだ自分の相撲に納得していないからいや妙義山を越えていないからってことだよ。あなたの娘らしいよ」


 紗理奈は小さいため息を一つ。


「なんかそれは違う様な気がする」

「違う?」

「あの子にとっては私じゃなくて葉月山なのよ」

「葉月山かぁ・・・」と美香はニヤニヤしながら

「何が可笑しいのよ」

「葉月山はもう止め名になるの?」

「本人に打診はしたけど私はそのことに執着しないって」

「彼女らしいと云えばらしいけど・・・」

「葉月山は妙義山より重いけどねぇ」

「まるで私の四股名が軽い云いかただな」

「葉月山の相撲は見るものを熱くした。相撲に興味がなくても葉月山の名は日本どころか世界でも・・・許せない彼女の事?」


 紗理奈は美香の問いに答えなかった。日本女子相撲にとって椎名葉月は至宝だったのだ。確かに彼女にとって女子相撲界入りは意に添わなかったかもしれない。それでもあの時、葉月が人生を掛けることができるのは相撲しかなかった。そして頂点に立ち日本はおろか世界で活躍し次は女子相撲界のために仕事をしてもらいたい当然やってくれるものと想っていた。なのに・・・


「椎名葉月が今度の代表監督を受けたのは最初で最後の恩返しのつもりで受けたのよ。だって相撲界を去ると決めていれば何も受ける必要はなかった。引退して多分迷っていたのでしょうでも彼女が相撲以外の女としての幸せを見つけたことができたのならそれはそれでよかったんじゃないの?」


「北海道に戻って結婚するそうだ」


「よかったじゃない。彼女ならいい奥さんになれる。家族をすべて失ってしまった彼女が今度は新しい家族を築くそれも北海道で・・・それを許せないだとかあり得ないでしょバカもんが」


「・・・・」


「彼女が幸せになってくれれば今やっている力士達だって励みになると思う。女子相撲やっている女なんか相当な変わり者と想われていたんだからそれを変えてくれたのは葉月山なんだからそれだけでも凄いことなんだからだいたい女子相撲力士が結婚する相手って男の大相撲力士とかってなんかねぇ如何にもって感じで・・・」


「ふーん誰の事云っているんだよ」


「誰?いやいやよくあるケースってことよ。ちなみに私はスポーツライターとなんかねぇ縁があって・・・紗理奈は・・・あぁぁそうだよねそうそう」


「すいませんねぇ如何にもで世間では奥さん横綱で旦那が大関だったことは私生活でも格の上下関係はあるのかとか云われてねぇ・・・あげくには鬼の絶対横綱妙義山じゃ大関の旦那は気苦労がとか云っていたどっかの作家気取りの相撲評論家だが解説者だが知らんけどよりによって相撲の実況中継でさらっと云いのけた糞女がいてねぇ! それに何スポーツライターだお前の旦那だって大相撲元前頭だろうが!」


「あぁぁなんかねぇ・・・噂ではねぇ・・・誰の事云ってるの?」


「お前だよ!!」


 紗理奈が長年、理事長を続けることができているのは美香のフォーローがあってこそ。現役時代はライバル関係とは云われていたものの美香からすれば横綱でありライバルではあったが強い統率力で力士達を引っ張ってきたし男性中心の協会とやりあったこともあった。そんなことは絶対自分にはできない。だからこそ絶対横綱妙義山なら女子相撲に新たな変革をもたらしてくれると・・・そして紗理奈が理事長に就任して変わるのかと想ったが思想は男子の大相撲と変わらなかった。


 方針に異論はあったものの初代絶対横綱と云うある種の絶対権力に反旗を翻す者がいなかったなかかつてのライバル元横綱三神櫻だけは公然と異論を唱えることも多々あり協会所属ながら距離を置く形になってしまった。しかしその独裁もそう長くは続かなかったし女子大相撲もファンどころか力士の入門者も減る状況にそして協会としての人材も・・・そんななか唯一頼ったのは美香だったのだ。


 女子大相撲が世間に認知されアマチュアの女性選手が活躍しそれなりの収入を女子大相撲でできるようになったのは美香の功績が大きい。紗理奈は協会の中心に入って一緒に仕事をしてほしいと頼んだが美香は首を縦に振らず今の関係なら協力するがそれ以上に協会との関係は持ちたくないと・・・。


 美香は相撲以外にも小説・ノンフィクション作家として多方面で活躍しておりそこに協会の中枢での仕事は現実的に無理なのだ。それでも理事長が相談していることは協会の幹部達も見て見ぬふりと云うか幹部達も何気なくアドバイスを聞きに行くこともしばしば・・・。そんな関係の二人なのだ。


「もう帰るわ。美香と話しているとどうもイラっとくる」

「そうねぇ。私も張り手の一発でも想う時があるんだけどねぇ」

「けぇ、相撲は大したことなかったのに口だけは達者だなぁ」

「あなたに勝てるのはそれしかないんで・・・・紗理奈」

「はぁ・・・」

「桃の山に妙義山の四股名早く継がせなさい。それと葉月山の四股名は止め名にしなさい桃の山のためにそして椎名葉月のために」

「美香・・・」


「次の時代を背負い継承するのは桃の山改め二代目妙義山よ。妙義山の娘に葉月山を継承させるつもり!」

「美香・・・」


「相撲界から完全に去る者に帰えれるような場所を作ってはダメよ。あなたもいい加減葉月山離れしなさいよ!あんたには横綱の娘がいるのよ!」


「美香・・・あんた」


 


 




 





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