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女力士への道  作者: hidekazu
相撲との出会い
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奉納相撲と校内横綱①

 さくらの通っている百川小学校小学校には珍しく相撲場がある。百川小学校は大正時代に開校した歴史ある小学校である。土俵は開校当時から設置されているのだがここ最近は老朽化による柱や屋根の劣化が目立ち暫く使われなくなっていたが地元の建材会社などから支援などで新規に土俵を作ることとなったのがさくらが入学した年。それによって毎年春・秋と二回ほど学年・クラス別の個人戦・団体戦が行われることにそれも男女分け隔てることなく相撲をするのだ。


 小学校の体育でも相撲が取り入れられている。また地域の氏神様である百川神社では夏祭りの時に奉納相撲がおこなわれているのも相撲を積極的に取り入れている要因でもある。


 小学3年まではある意味相撲と云ってもお遊び的要素もあるのだが4年にもなると体格も精神的にも一回り大きくなってくる。さくらも4年~6年の春までは圧倒的な強さで学年横綱を連覇をしていたのたが夏の奉納相撲でその圧倒的な強さが崩れたのだ。


 女子でありながら横綱として君臨して小学生最後の6年生で秋の相撲大会で優勝すれば3連覇なのだ。


 小学6年の春の大会。さくらのクラスの女子達は圧倒的な強さで優勝することを疑うものは誰もいない。

「さくら、これで春・秋勝てば3連覇だよね」

「すごいよねぇー」

「さくらは女子達の希望の星だからねぇ」


 さくら自身、そんなに相撲に興味があったわけではなかったが小学校の必修授業なのでやっていたぐらいのことだったのだが意外や意外やってみると勝ちまくった。そのことがさらに楽しくなり相撲に熱中することになっていった。

 

 百川小学校が相撲に熱心なのには小さな頃から勝ち負けを体験させることと云うことが学校の教育方針がある。

 

 昨今の運動会によっては順位をつけないとか勝負の有無をつけないという学校もあるらしいがさくらの小学校はそうではなく勝った、負けたは小さい頃にしっかり経験させることが大事。特に負ける経験は大きくなってから初めて味わうと怖くなって負けることの恐怖が先に立ってしまい行動できなくってしまう。その意味では小さい時に勝ち負けを経験させることは大事だという考えなのだ。


 6年生になってからの春の大会。さくらは順調に勝ち進み決勝は他のクラスの男子である今井浩平だった。浩平は3年までは柔道4年以降は野球をポジションはピッチャー。エースではないが地区のリトルリーグチームは欠かせない存在である。過去のさくらとの対戦はいつも決勝で負けるの繰り返し。体格的にも男子といえども差があったのだ。ところが6年になると男子達が一気に成長してくる。特に浩平は6年になりさくらの体格といい勝負。実際、春の大会ではさくらが押し相撲で劣勢に立たされる場面もしかしそこはさくらの相撲技術の優位は動かず。あっさり押し返され万事休す。


 観戦していた女性生徒はさくらの圧倒的な相撲に歓喜して躍り上がる。

「やっぱりさくらだよね」

「これで秋の大会も勝つと校内相撲で無敵の横綱として三連覇じゃん」と女子達は男子達に対してちょっとした優越感に浸っている。

 しかし、さくら自身は浩平の身体的成長に脅威を感じていた。

「勝てたことは勝てた・・・・でも間違いなく力勝負じゃ・・・・」

 6年生になった浩平の体は筋肉質の体に変わり野球で鍛えているだろう下半身の太い足そして大きなお尻。それと前年の秋の大会と比べたら一回り太くなった腕。

 体格的には明らかに浩平の方か゛有利だがそれでも負けないと云うか負けられないと云うプライドがさくらにはある。

 5年生の夏。県の学童相撲大会に出場。地区の予選大会を勝ち抜きさくらは男女・学年関係なく参加する個人選手権の部に出場。他の地区からも参加した女子生徒は一回戦で次々と消えていく中でさくらは各地区の強豪男子を相手にベスト4まで進出。得意の押し相撲から快進撃を続けていたがさすがのさくらもベスト4が限界だった。それでも女子で個々ので勝ち上がった生徒はいままでいなかった。そのことは県内では話題になり地元新聞にインタビューを受けるまでに・・・。


 さくらは別に相撲クラブに入っているわけではなく学校の相撲クラブだけである。本当は相撲クラブに入ってみたいと云う思いはあるが残念ながら近所にはないその代わりさくらが行く菱川中学校には相撲部があり県大会では団体で常に上位の成績を残している強豪校がある。さくらは月何回かは出稽古ではないがその中学校相撲部へ稽古をつけてもらっていた。残念ながら女子部員はいないのだが男子相手の相撲は小学生のさくらにはとても厳しいがそれでもさくらにとっては大きな自信付けになっていた。


 そんなさくらにとっては浩平の成長度に関してはやはり脅威とあると同時に負けることの不安が頭をよぎる。校内では敵なしだと思っていたのに突然、変身でもしたかのような浩平が現れた。そしてもっともさくら自身が許せないのは、相撲に関しては素人のような浩平に負けそうになったことこれだけは認めたくなかった。今までは特段勝負に拘っていなかったのに・・・。


 「秋の大会にはどんなことが勝ちたい。その前に奉納相撲で勝って勢いをつけて」


 さくらは学校の相撲クラブが終わるといったん家を戻ると今度は裏山でのクロスカントリーが日課になっている。自然の起伏を走るため、普通のロードを走るよりも心肺機能を強化ができるし起伏のあるコースでは、自然と筋肉への負荷が高まり脚力を強化を含めた下半身の強化ができる。


 裏山は200m前後の低山が連なる山域なのだが急傾斜のアップダウンが多く、複雑な山道が入りくんだ、本格的なトレッキングコースと云える。距離的には3キロぐらいなのたがそれでも平らな道とはまるっきり別物である。


 そこをさくらは毎日走っているのだ。そして今日も走っているのだが今日はクラブの練習が長引き家に帰り30分遅れで裏山の尾根へ向かって走り出す。いつもながら尾根に向かうコースは傾斜がきついと云うよりもロッククライミングでもするように設置してある鉄の鎖でよじ登るなコースであるそこを抜け尾根に到着すると今度は尾根伝いに隣の山に向かうのだがこの尾根のコースは木々の根がむき出しで非常に走りにくいちょっとでも油断すると根に足を引っ掛けて転んでしまう。

「なんか今日は体が重いなぁ・・・・」と思わずつぶやいてしまった。それは当たり前で学校に行く前の早朝も尾根に上がりそこにある大木を「鉄砲柱」に見たて稽古し四股を踏むことを日課にしだしたのは春の大会以降・・・。


 さくら自身なんでここまでしてるのかわからなくなる時がある。浩平に負けそうになって次は負けてしまうと云う恐怖感がそうさせてしまうのか? さくらはその不安を打ち消すように走る走る。とその時、自分の走る足音とは違う走る音が聞こえる。


 「下の方から?」

さくらの両脇はさくらの背丈以上の藪で下のコースの様子は全く見えないが足音同時に息遣いが聞こえてくる。

「近づいている!」

もう少しでコースは下りになる。

「誰?」

その時上がってきたのは、紺のトレーニングウェアーに身を包みながら息を荒げながら登ってきた男・・。

「浩平君・・・・」

さくらは足を止めたが浩平は何も云わずさくらの横を通り過ぎさくらが走ってきたコースを走り去っていく。

「浩平君・・・なんでここを」

さくらは無意識に方向転換して浩平を追い始める

「何やってるの私なんで・・・なんで浩平君を」


さくらは無意識のように浩平を追う・・・なんで追っているのかなんのために・・・。







 


 


 



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