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女力士への道  作者: hidekazu
相撲との出会い

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相撲クラブ③

 絵里に赤のスパッツの上に廻しを締めてもらう。上半身は黒の長袖Tシャツ。なかなか凛々しい姿に啓史は違う映見の一面を見たような。啓史から見て右側に映見。左側に和樹。映見は絵里に何かしらアドバイスを受けているのに対して和樹はしきりに四股を踏む。何か落ち着かない表情である。


 公園の時計は8時15分前。相撲クラブは夕方6時~8時の2時間。他の部員達は稽古を終え土俵脇に二人の取り組みを冷めた目で見ている。クラブの小学生横綱の和樹に対して体格はいいかもしれないが相撲もやったことないそれも同い年の女子が・・・。


 土俵下から濱田が

「それじゃこれから始めます。さっきも云ったとおり和樹は寄り切り以外の手は使わない。映見ちゃんは何をやってもいい。二人ともそれでいいか」と云うとお互い相手の目を見て頷いた。

「それじゃ絵里、行司をやってくれ」と云われるとお互いの仕切り線中央に立つ。

「では始めます」と中腰の姿勢に二人も仕切り線の前に


「はっけよい!のこった! のこった!」

映見は一気に左を差して、右でおっつける。

「おいおい・・・」と濱田が口にする。

和樹は意図的に動かず廻しを取らせて形を作ってあげようと考えていたのだが映見の動きに一瞬混乱してしまった。

「なんだよそれ!」思わず声を上げてしまった。

映見は、この動作から和樹の体を浮かして不安定にしておっつけていた右手で「上手投げ」の作戦だったがそこは所詮はネットで見た通りにいくばすがなく和樹に右を切られると逆に四つの体制からに和樹に上手をとられ上手投げを食らってしまった。無意識にそれも本気モードで・・・。

「馬鹿野郎!」濱田が土俵下に駆け出す。啓史も駆け出す。

映見は和樹の右上手投げで投げられるぐらいまではまだしも土俵下まで転がされ落ちたのだ。


 和樹に映見を投げよう何ってこれぽっちも思ってなかった。しかし土俵下で動けない映見は現実なのだ。

「・・・・俺そんなつもりは・・・」と土俵上に立ったまま動けない。


啓史は映見に近づき声をかける。すると目を開けてちゃんと反応した。

「映見わかるか?」一瞬まがあったが・・・・

「やっぱり強い・・・やられた」と小さい声で・・・

側にいる映見が背中を手に起こして股割の体制に・・・・

「映見ちゃん私のことわかる?」

「絵里さん・・・」

絵里はほっとすると同時におもわず涙してしまった。

絵里は映見をおぶって公園のベンチに座らせた。

絵里は軽く抱きしめてあげると映見は絵里の胸に顔を埋めて小さな声で「ごめんなさい」と何回も何回も濱田と啓史はとりあえずホッと胸をなでおろす。


 土俵の上には立ったまま。濱田が土俵に向かおうとした時啓史が出で止める

「和樹君とは俺が話すから濱田はちょっと」と云うと啓史は土俵下で靴と靴下を脱ぎ土俵に上がり和樹に話しかける。


「映見はちょっとびっくりしてしまっただけだから何ともないから心配しなくていいから」

「俺・・こんな事するつもりなんか全然なかった本当に・・・・本当に・・・」

「・・・・・」

「映見ちゃんに怪我させるつもりなんか本当に・・・」と云うと泣き出してしまったのだ

土俵に膝から崩れるように土俵の土に涙が・・・・。

啓史はその少年になんと声をかけるべきなのか迷ったが

「そもそも映見が和樹君を挑発するようなことを云わなければこんな取り組みはしなかったはずだから」と云うと啓史も土俵に膝をつき和樹に話しかける。

「君には嫌なことをさせてしまった。父親として謝るよ。映見がこのクラブに入るどうかわからないがその時はよろしく頼むよ。それと家の診療所知ってるだろう?今度遊びに来なさい」と云うと両手をもって立たせ頭を右手でなぜた。坊主頭に近いような髪の毛はたわしのようにチクチクと


 啓史は土俵を降り靴と靴下を手に取ると濱田に話しかけた。


「彼のこと怒らないでくれよ。・・・・ところで映見は?」

「絵里と一緒にロッカールームに行ってシャワーでも浴びさせてると思う・・・。啓史、本当に申し訳ない。指導者として失格だ申し訳ない」と頭を下げた

「気にしてないと云えば噓になるけど映見は何ともないと思うから今日のことは今日で終わらせてくれ」


 土俵に部員達が集まり和樹に何かを話しかけたこと和樹も含めロッカールームに・・・・


「本当に申し訳ない。ただ俺も市には報告しないと後々問題が・・・・とりあえず診察だけでも」

「診察????あのさぁー一応俺医者なんですけどねぇ」と笑いながら云うと

「何かあっらそれなりのことはしてもらうし慰謝料含めて多額の請求してやるわ」

「すまん・・・」

「もう大丈夫だから本当に」


 二人は公園の中央にある公園管理事務所の休憩スペースへ・・・すでに着替えを終わっている小・中何人かの部員達が濱田に話しかけてくる。

「映見ちゃん大丈夫なんですか?」

「今、絵里と他の女子部員とロッカールームにいるからもうじき出てくると思うとりあえず心配しなくていいから」と濱田が云うととりあえずは安堵の表情を浮かべた。

「でも・・・」中学男子の部員が

「あんな相撲素人の女子にされて一瞬慌てているうちに反射的になげちゃったって感じに見えて・・・和樹は意図的には絶対やらないだろうし・・・・」

「意図的にはやってないよ。彼は,映見に意図的に両まわしを取らそうとしていたと思うから・・・それなのにうちの娘は・・・」

「啓史。そうであっても寄り切り以外の技は使わないと和樹自身が云ったのにやった。それより俺が許したことが間違いだった。全責任は俺にあるから」

「映見は大丈夫だからもうその話は終わりだ」と啓史。

「それより和樹どうした?まだ着替えてるのか?」

「あいつ、相当ショックみたいで山谷先輩がなだめてるんて゛すけど泣いちゃってて・・・・」

「ふうーん。まぁショックは大きいだろうが・・・・わかった。とにかくお前達はもう帰りなさい時間が時間だし」時刻は8時30分を回っている。

男子部員は各々自転車で帰る者歩いて帰る者と・・・いかにも街のクラブと云う感じだ。その直後、和樹と中二の先輩部員の山谷が出てきた。

憔悴しきったような歩き方で濱田の前に立った。

「映見のお父さん。今日はすいませんでした」と頭を下げ

「僕はわざとあんな投げをしようとは全然想っていなかったしあんなことになるなんて・・・」と云うと急に土下座をし始めた。

「ちょちょっと待て」と啓史は和樹を無理やり立たされる。

「君の本心はよくわかった。だから今日のことは今日で終わりだ。土俵の上でも云ったけど今度のことの一番の原因は映見にある。それは事実なんだ」

「もう相撲やめます」

「ちよっと待て」

「もう相撲はしたくないです」と涙ぐむ。

今度は映見と絵里が出てくる。映見は呆気欄干という感じで絵里や他の女子部員達と何か楽しそうに・・・。そして、和樹の泣いている姿を見て

「何泣いているの」と一言云うと・・・・。

「やっぱり和樹は横綱だねぇー。色々考えて完璧にあの手でいこうと思ったらあっさりやられた。

土俵の下に転がされて頭の中が星だらけになってあー天国いったかなぁー」と平然と言い放った。

それを聞いてクスクス笑い出す女子部員。それを聞いてさらに涙があふれる和樹。

「和樹君。今日のことは気にしなくていいし。私は大丈夫だから泣かないで」とタオルで和樹の涙をぬぐってあげる。

「先生、今日は本当にすいませんでした。もう二度とあんなことは云わないしやりません」と頭を下げ詫びる映見

「わかりました。でクラブはどうします入部してくれるのなら大歓迎だけど・・・」と濱田。

「それは、土日よく考えて月曜日答えを出します。それでいいですか?」

「わかりました。両親ともよく相談して結論を出してください。今日は色々あったけどお疲れ様」

「でも、先生今日は楽しかったよ本当に」と笑って見せると今度は和樹の前に

「今日は本当に嫌な思いさせてごめんなさい。じゃ月曜日学校でねぇ・・・じゃお父さん帰ろ」と父の手を引く。

「啓史、車で送るよ」

「あーでもいいよ娘と歩いて帰るから今日は本当は色々個人的にことも話たかったけどそれはまた今度」と軽く礼をすると二人で管理事務所の休憩スペースを手を繋ぎながら公園の中に消えていく。


 相変わらず意気消沈の和樹。

「和樹。あんた映見ちゃんのことどう思ってる?」と笑みがからかうような云い方で

「・・・・・」

「映見ちゃん和樹に・・・・見たいよ」

「・・・・・」

「じゃ先生帰ります。小学生達はあたしが家まで送りますからそれじゃ」と二人の小学生を連れて

休憩ルームには濱田と和樹の二人だけ。

「映見ちゃんもお父さんもあぁ云っているんだからもう余計なこと考えるな月曜日になったら学校行っていつも通りにすればいい」と頭を撫でる。

「それじゃ帰ります。失礼します」と云うと和樹も出ていく。


 週明け啓史から濱田のもとへ映見の入部希望の電話が

「まぁよろしく頼むよ。どうもあの一件以来相当相撲熱高まってさぁ」

「わかった。一応こっちで相撲用のレオタードとか廻しとか用意するけどいいか?」

「あーわかった。あとで相撲クラブ会員用サイトのアドレスメールするからそこにサイズやら色々記入してくれ後入部希望の件もそのサイトから頼む」

「了解」


 ここから本格的に映見の相撲が始まる。





 

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