8.光音の協力
大学に戻ってきました。
数日後父が復帰したので、仕事の手伝いもそこそこに、賢人は大学に戻ることにした。
T研ではミオンの活躍により、ロボットの根幹部分が完成し、トライアンドエラーを繰り返しながら、いいペースで完成に近づいていた。
その一方で、ナナハルのノートにかかれていた模様について意外な反応を見せたのも、ミオンだった。
クラスメイトやT研のセンパイに、スマホで撮影してきたこの模様を見せると大多数がイラストやロゴ、ベクター画像といったアートと答え、格好いいねとか、イラストレーターにでもなるのかと言われた。
「その魔方陣、センパイがかいたんですか?」
ミオンはこれを、ごく自然に魔方陣と言いきった。
しかもこれは忠実に再現されていますと関心している様子に、賢人は帰り際、時間をとってもらい、この写真について説明した。
「そんなことがあったなんて、スミマセンでした」
失踪の話を聞いて、ミオンは困惑したが、賢人は構わず自分勝手に話を進める。
「いや、別に謝ることじゃない。プライベートな事だし、負担に感じたらすまない。ただこの模様が弟のノートに描かれていたのが気になって、知人と調べてるんだ」
ミオンはうつむき、黙ってしまった。
賢人の方は、逆に興奮して声が震える。
「ミオンはこの模様、魔方陣て言ったけど、何でそう思ったの? 教えてくれないか」
そう言いながら前のめりに拝み倒した。
ミオンは両手を振りながら、観念したように頷いて、魔方陣のことを話してくれた。
「センパイ、やめて下さい。わかりましたから。えっと」
その話を、かなり大雑把に結論づけると、薫子の予想はだいたい当たっていた。
「あぁたぶん、それで合ってます」
ミオンはそう言って笑った。
賢人も笑った。
二人の間に、なんとも言えない、不思議な時間が流れた。
ミオンは子供の頃、魔方陣がたくさん載っている本を読んでいた。
家には数え切れないほど本があって、その中の一冊だという。
父親は作家だった。書斎には大きな本棚が並び、天高くそびえ立っていた。そんな中の一冊だという。
賢人は感心した。本の量にではなく、その膨大にあった本の内容を覚えていたことにだ。
今度、その本を探してくれることになった。
本を読めば、もっと詳しいことがわかりますよと言った。
賢人は心強い協力者が増えたと喜び、ミオンと連絡先を交換した。
この事をきっかけに、ミオンとは今までより仲良くなった。
よく話をするようになり、知識が豊富で、プライベートなことでも気軽に相談できる間柄になっていった。
そんな中、ミオンの事を知っていた女子高生の話をしてみた。
「あのさ、家庭教師のバイトで教えてる子が、小学生の頃ミオンの同級生で、よく遊んでたって。源ヒカリって言うんだけど、覚えてる?」
それを聞いたミオンは、すぐに心当たりがあったらしく、笑顔で大きく頷いた。
「ヒカリちゃん、覚えてます。元気ですか、あの時は挨拶も出来ずにお別れしちゃったから」
今は大学入試に向けて頑張っている事を説明した。
ミオンの嬉しそうな反応に、賢人はある考えが浮かんだ。
「ミオンて、意外に友達少ないのか?」
突然のいじりに、ミオンは驚いたが、寄ってくる人は先生たちや大人たちばかりで、正直少ないと寂しそうに教えてくれた。
「ヒカリちゃんに、連絡先教えてもいいかな。あの子、話したそうだったし。勿論、ミオンが良ければだけど」
ミオンは快く快諾してくれた。あとに訪問した日、連絡先を伝えると、ヒカリも飛び上がって喜んでいた。
これでやる気が上がればいいんだが。賢人は内心、そう考えていた。
■登場人物
賢人:主人公、大学生。
ミオン:飛び級してきた同級生。父親は物書き。漢字で書くと「光音」
ヒカリ:賢人がバイトで家庭教師をしている女子高生。光音と同級生。
■プチっと業務連絡
2022年11月、VOICEVOX(音声合成ソフト)を使って音声化はじめました。ストーリーは変わりませんが、文脈をいじってます。整理できたら随時更新していきます。@siropan33_youで公開中。
▼朗読動画の再生リスト
https://www.youtube.com/playlist?list=PLqiwmhz1-5G0Fm2iWXSjXfi1nXqLHzi_p