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5.父倒れる

賢人が実家に戻るきっかけをつくりたくてこの話を思いつきました。

 T研でロボットの試作機と基本動作のパターン解析が終盤に差し迫った頃、賢人のスマホに母親から急を要する電話が入った。


「父さんが倒れて、今病院に向かってるんだけど、賢人にも来て欲しい」


 二つ返事で電話を終えると、着替えや手近な物を無造作にボストンバックに詰めて地元へ帰る電車に飛び乗った。

 地元にある総合病院は、実家から車で小一時間程度の場所にある、田舎にはめずらしい、最先端の病院である。

 電車とタクシーを乗り継ぎ、到着した頃には、午後になっていた。


「今日運ばれてきた橘の親族ですが、何号室ですか?」


 受付で来客用の名札をもらって、足早に病室へ向かう。

 病室の入り口に貼られたプレートには、四人分のスペースがあったが、書いてあるのは父の名前だけだった。


「よお、賢人。久しぶりだな。ロボットは順調か。いやぁ、まいったよ。腰をちょっとやっちまってさ。ガハハハ」


 病室に入るなり、笑いながら豪快に答える父が、ベッドの上で点滴を受けていた。

 傍らには母が心配そうな顔で付き添っている。

 久しぶりの再会だというのに、相変わらずの元気な声を聞けて、ひとまずホッとした。

 そして母のそばに椅子を引き寄せ、腰掛けてから、病状を聞いた。

 荷物を運ぼうとした時、転倒して、腰を打ってしまったそうだ。

 レントゲンでは骨に異常は見られないと伝えられた。


「今まではこのくらい朝飯前だったのに、いつの間にか歳くっちまったかな。ガハハハ」


 口ではこう言っているが、転倒した後、返事も出来ずにうずくまってしまったので、慌てて救急車を呼んだらしい。


「ごめんね、母さん、心細くなっちゃって。忙しいのに」


「大丈夫だよ。それより命に関わる病気とかじゃなくてよかった」


「なにいってんだ賢人、俺は丈夫だけが取り柄なんだ、病院なんて糞食らえだ、ガハハハ」


 点滴のせいか、担ぎ込まれた当人が一番元気だ。

 逆に母の衰弱ぶりが気になるほどである。

 弟のことが重なっているのかもしれない。


 父がロボットの話を聞かせろ、とせがむので、サークルでの研究成果や、飛び級してきたミオンの話しをした。

 この日、父は初めて入院した。

 賢人は一時的に大学を休み、実家の手伝いをすることになった。そして久しぶりに我が家へ帰ってきた。

次話でやっと、ヒロイン(幼馴染み)が登場します。


■登場人物

父:頑固親父。豪快、思いやりがある。今回、腰を痛めたが回復力が早い。病気の類はこれまでしたことがなかった。

母:温和、優しい、行動力がある。七治が失踪してから気分の浮き沈みが激しく、気弱になった。


■プチっと業務連絡

2022年11月、VOICEVOX(音声合成ソフト)を使って音声化はじめました。ストーリーは変わりませんが、文脈をいじってます。整理できたら随時更新していきます。@siropan33_youで公開中。


▼朗読動画の再生リスト

https://www.youtube.com/playlist?list=PLqiwmhz1-5G0Fm2iWXSjXfi1nXqLHzi_p

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