47.国王の嘘
賢人たちはノエルメシア王国へやって来ていた。
ナナハルとガルシアは依然、目を覚ましていない。
メロー姫はナナハルのことを献身的に看病していた。
その様子を見ていた賢人は、二人の仲を引き裂くことに後ろめたさを感じていた。
ナナハルはいずれ、日本に連れ帰るからだ。
国王には先代魔王とナナハルの友人、楓の功績で見事魔王を倒したことを報告した。
その先代魔王を紹介した時は、どよめきと嫌悪感、衛兵たちが殺気立った時は焦った。
明るい空気が一瞬にして凍り付いた。
考えてみれば天敵の大将が城内に、しかも国王の目の前にいるのは非常事態だ。
メンバーとして一緒に同行していた賢人たちに、その危険性が薄れていたのは間違いない。
しかしこの遊び人のような風貌と落ち着きのない態度が、本当に魔王なのかと逆に疑われる始末。
「僕は自由にさせてくれれば、なにもしませんよぉ。
少なくとも魔族に人族を襲う理由はないからね」
それに先代魔王は、楓に魔王の座を譲ると明言した。
それはいたって自分勝手な理由からだった。
「魔王城にずっといるのは退屈だからぁ、天使の加護を持つ楓君に、任せますぅ」
「いや、天使の加護持ちなら王家のために尽力すべきじゃ、なんならメロー姫と婚姻を……」
今度は人族と魔族の長が楓を取り込もうと躍起になっている。
互いに楓の腕を引っ張り合って、楓は痛がりながら翻弄されている。
とうとう楓は大泣きして、二人が動揺した隙に逃げ出すと、賢人の足にすがりついた。
「はやく家に帰りたい、助けて賢人さん」
賢人は楓の頭をなでながら、国王に以前した約束を再度お願いした。
「国王様、今回の問題は解決しました。
楓くんも転生者で、帰りたいと希望しています。
私が出した願い、聞き入れてもらえますよね」
国王は唸り、席に戻ると側近に顔を向けたが、側近は首を横に振りながら両手を挙げた。
そして渋々ため息交じりにこう答えた。
「実は、異世界召喚された者を帰す方法は無いんじゃ」
「な、無いんですか」
国王は困り顔で頷いた。
王の間がひっそりと静まりかえる。
国王はさもありげに賢人の条件を受け入れていたが、帰る方法は存在しないという。
「切羽詰まった状況じゃ、断られることを恐れてつい嘘を……」
「嘘ついてました、ゴメンナサイってか!」
国王のいい訳に苛立った賢人はつい口調が乱暴になった。
「貴様、国王様に向かってその口の利き方は……」
「いや、悪いのはワシじゃ。本当にすまなかった」
側近が反論したのを制して、国王があろうことか賢人に向かって頭を下げた。
賢人は憤りながらも、その行動に黙り込む事しかできなかった。
それからしばらくは悶々とした日々を城下町で過ごした。
先代魔王は魂が封印されていた街を復興すると息巻いて帰って行った。
魔王城に戻るのはどうしても嫌らしい。
楓はノエルメシア王国に残り、ナナハルが目を覚ますのを待った。
ガルシアはナナハルより先に目が覚め、事の顛末を聞くと驚いていた。
魔王城で操られていたことは、まったく覚えていないという。
それに先代魔王の攻撃から全快するには更に時間を要した。
マッチャーは餓狼のしっぽ団に戻った。
新たな出会いを求めて魔族のエリアを蹂躙するらしい。
ノイマンはマッチャーたちのギルドへ移籍した。
マッチャーほどの使い手は中々出会えないだろう。
トップギルドに追いつくことも、大抵のクエストも楽に達成できそうだ。
アラキはたまにナナハルの様子を見に来た。
トップギルドにどうしてもナナハルを迎えたいらしい。
しかしその夢は叶いそうも無いので、本人には隠れて静かに手を合わせた。
ネコメは受験シーズンに備えてしばらくゲームから離れるそうだ。
その代わり、現実世界で家庭教師として今後もサポートすることになった。
先代魔王の棺を壊した事がトラウマになっているようなので、君枝さんにメンタル面を鍛えてもらうことにもなっている。
ヒカリも同年代の友達が出来て良かったと思う。
でもお姉さんぶって高校受験に失敗しないことを願った。
光音は先輩にせがまれて、T研に在籍扱いになっている。
本当はゲーム会社でフルタイム働いた方が光音にとってはいいのだろうが、賢人の援護射撃ではその壁を突破できなかった。
そのT研での活動は二年目に入り、メロン農家である賢人の実家で実証実験が始まった。
まだゲームの世界のようにはいかないが、トライアンドエラーを繰り返しながら一歩ずつ前に進んでいる。
そういえば実家に光ケーブルを引くことになった。
監修は実質薫子がおこなっており、かなり無駄な設備が増えた。
両親には遠隔操作のため経費は大学持ちと言ってあるが、薫子が勝手に出してくれた。
父も母も喜んでいたが、薫子との縁談話をしきりに勧めてくるのはまずい。
薫子と最近、やたらと会うことが増えたせいだ。
仕事が時間にとらわれないからといってもそんなに会う必要があるのか。
今はナナハルのこともあるし、幼馴染みでもあるので無理強いは出来ないが、もしオリジンさんのようになったらと考えてしまう。
外堀が埋められていく恐怖に怯えながら、ナナハルを帰還させる方法はないかと、必死に考えを紛らわす賢人だった。
■プチっと業務連絡
2022年11月、VOICEVOX(音声合成ソフト)を使って音声化はじめました。ストーリーは変わりませんが、文脈をいじってます。整理できたら随時更新していきます。@siropan33_youで公開中。
▼朗読動画の再生リスト
https://www.youtube.com/playlist?list=PLqiwmhz1-5G0Fm2iWXSjXfi1nXqLHzi_p




