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44.楓の話

 少年は賢人の予想通り、ナナハルの友達、佐藤楓くんで間違いなかった。

 楓はボリュームのあるくせっ毛で目が細く、鼻が高い。

 並ぶと変わらないが、痩せているせいか背が高く見える。

 違った、足が長いせいだ。

 あまり顔を合わせようとしないのは初対面だからだろうか。

 ナナハルと遊んでいた頃と、だいぶ印象が違って見えた。


「とりあえず座ろっか」


 すると賢人は胡座に対して、楓は正座した。

 足崩せばと言っても首を横に振るだけだった。

 賢人は雰囲気を和ませようと、ナナハルとの思い出話をいくつか披露した。

 ナナハルの兄貴であるという証明もしたかったからだ。


「ああー、そういう所ありますね」


 楓は遠慮がちに頷くばかりだ。

 反応がいまいちなのは、不安もあるからかもしれない。

 それならばと、楓のことを質問してみた。


「楓くんはずっとこの街にいたのかい」


「あーハイ。僕が召喚されたのは、そこにある宮殿でした」


 楓はこの異世界で体験したことを順序立てて教えてくれた。


「最初はゲームみたいな世界で興奮しました。

でもここにいる天使たちは、今みたいに僕の声には応答してくれません。

こんな白い大地が広がった世界でやることもなく、途方に暮れているときに、泉の水面に地上の様子が映し出されている事を知りました。

それからはずっと地上の世界をここから眺めていたんですが……」


 賢人たちが冒険していたこれまでの様子も楓はここから注目して見ていたという。

 そして魔王城で起きたこと、ナナハルの様子がおかしくなったことも知った。


「僕はアンガス戦記を攻略した時、ノートにその事も書いていたんです。

ナナハルも知っていたはずなのにどうしてって思ってました」


 楓はその事を伝えることもできず、相談出来る相手もいないこの場所で、悩み、苦しんでいた。


「僕は何でこの世界に呼ばれたんでしょう。

ナナハルは懸命に戦ってこの世界を平和にしようとしていたのに、僕は何もできない。

いつまでも天使に紛れて、なぜ生きなければいけないんでしょう」


 楓の悲痛な声が、賢人の心に響いた。


「俺も大学生になるまでずっとナナハルのことを考えていた。

でも結局何もせず、七年も経ってしまったんだ。

ナナハルはこんな遠い異世界で、縁もゆかりも無い人のためにずっと戦っていたのに」


 賢人は立ち上がり、楓に右手を差し出した。

 楓はきょとんとした眼差しを向ける。

 賢人はその反応に戸惑ったが、理由を知って笑いながら謝った。

 そして地球では七年経っていることや、この姿はアバターで、ゲームとして参加していることなどを説明。

 楓はその話を聞いて何度も驚いた声を上げるが、最後は納得した様子でグッタリしていた。

 驚きすぎて疲れ果てたと言ったほうが正しいかもしれない。


「でも今はここにいる。

楓くんもここにいる理由がきっとある。

だからこうして迎えに来たんだ。

天使の精霊の力を持って、ナナハルを迎えに行こう。

そして一緒に地球に帰ろう」


 賢人は笑顔でもう一度、右手を差し出した。

 楓は手をじっと見つめると、改まって向き直り、賢人と固い握手を交わした。


「わかりました。よろしくお願いします賢人さん」


 そして天使の精霊を探しに街へ引き返した。

 まずは楓が召喚されたという宮殿。

 朗らかな笑みを浮かべた女性の石像に、ステンドグラスから差し込む七色の光。

 燭台に飾られた蝋燭の火と合わさって、幻想的な雰囲気を醸し出している。

 天使たちは手を組んで祈りを捧げ、ここが神聖な場所であることを物語っていた。

 そこで賢人は、この石像になにか仕掛けがあるのではと当たりを付けた。

 もっと石像に近づいて調べたいところだが。

 天使は石像を守るように配置されていて、スネークのようにはいけそうにない。


「天使の精霊なら、私も加護もらいましたけど」


「楓くん! それ早く言ってよ」


 不意を突いた楓の衝撃的な告白に、賢人の動揺した声が木霊した。

 静寂な中、突如発せられたツッコミに、天使から一斉に睨まれた。

 天使に睨まれるのって案外怖い。

 普段大人しい人を怒らせちゃ駄目ってやつ。

 頭を何度も下げながら足早に退散し、楓から真相を聞いた。


「召喚されたときに受け取ったようで、何体か意識すれば呼び出すことも出来そうです」


「うわぁ、それ最強じゃん」


 とにかく気持ちを切り替えて、今度は地上に帰るルートを探した。

 楓もすでに探したそうで、階段やロープ、魔法の類いは見つからなかった。

 しかしこのゲーム、天使の精霊の力が必要な訳だから、絶対どこかで合流出来るはず。

 賢人が目を覚ました入り江から、もう一度念入りに雲の中を探してみることにした。

■プチっと業務連絡

2022年11月、VOICEVOX(音声合成ソフト)を使って音声化はじめました。ストーリーは変わりませんが、文脈をいじってます。整理できたら随時更新していきます。@siropan33_youで公開中。


▼朗読動画の再生リスト

https://www.youtube.com/playlist?list=PLqiwmhz1-5G0Fm2iWXSjXfi1nXqLHzi_p

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