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31.帰還する方法

 ナナハルが勇者として呼ばれたのは、ノエルメシア王国というゲームでも最初に訪れる国だった。

 召喚された日、王の間で国王に謁見し、三百年前の呪縛から解き放たれた魔王が世界征服を狙っており、平和を取り戻すため戦って欲しいと伝えられた。

 正義感が強く、心優しいナナハルは、国王の願いをアッサリ聞き入れ、魔王討伐へと旅立った。

 達成すれば王女との婚姻という、賢人にとって受け入れがたい約束までしていた。

 ナナハルにとってはゲーム感覚で街を転々としながら魔王討伐の準備をしていた。

 ときを同じくして異世界に呼ばれたガルシアは、目的も無く街をさまよっていた。

 ガルシアが召喚されたのは、国ではなく森の中だったという。

 つまりこの世界の至る所に、ゲームクリアした人たちが点在しているのではないか。

 ナナハルと一緒に遊んでいた佐藤楓という少年も、きっとどこかで暮らしているのだろう。

 いまだ帰還する方法は見つかっていないが、ナナハルは国王との約束を果たすため、魔王討伐するまでは帰れないと言う。

 世界が滅びるという結末は、今まで出会った人達の事を思うと辛すぎると悲しそうに呟いた。


 ここはエルフの里の一角にある食堂、ララノア亭。

 色白で長い金髪が目を引くエルフ姉さんや、ショートボブで幼く見える可憐なエルフ少女が、可愛いメイド服を着て働いている。

 男にとって理想であり、至福の店だ。

 賢人もつい目で追ってしまうが、料理を運んできた背の高いメガネを掛けたエルフ姉さんに冷たい視線を向けられ、目が泳いだ。


「もしかして国王に頼めば、地球に帰還する方法を教えてくれるかもしれない」


 ナナハルは野菜スープをすすりながら、楽観的に答えた。

 賢人はエルフ姉さんの視線をごまかすように、ソーセージにかぶりつく。


「それができるなら、最初からそう言うだろう。

んん、んまいな

王女と一緒になるより、んぐ、国に返すって言った方が、お前もやる気が出るんじゃないか」


 食い散らかしながら冷えたエールを煽ると、チリチリとした喉ごしに感嘆の声を腹から響かせた。


「ゲームの世界に来たら最初は誰でも、興奮すると思うよ。

だから早く帰りたいとかは、考えなかったけどな。

それに、……いや、なんでもない」


 ナナハルは何か言いかけたが、すぐに撤回して黙り込んだ。

 賢人はしばらくその意図を考えたが、何も思いつかなかった。


「そんなもんかなぁ、でも親も心配してるし、俺だったら帰りたいけどな。

そこまで無理強いはしないけどさ」


 長い間この異世界にいれば、こっちも大事だと思う気持ちは尊重したい。

 ここでなぜ賢人は普通に食事しているのかと疑問に思ったならお答えしよう。

 VRは味覚も嗅覚も再現されているので、食べなくてはもったいないからなのだ。


「それにしても、ナナハルは見た目が全然変わらないなー」


 大学生になっている賢人(今はアバターで小学生に扮している)に対して、ナナハルの姿はなぜ小学生のままなのか。

 異世界に召喚されると歳を取らなくなるとか。


「そんなにすぐは大きくならないでしょ。まだ一年も経ってないんだし」


 ナナハルの言い訳に賢人は唖然とした。


「どうしたの、そんなに驚いて」


 大きくならないのは、時間の流れが地球と違うからか。

 ナナハルの感覚で、まだ一年しか経っていないと思っていたことに、また一つ異世界との違いを見つけた。

 そして地球では七年の月日が流れていることを、ゆっくり丁寧に説明した。

 この見た目もゲームで作ったアバターなんだと付け加える。

 ナナハルはお化けに遭遇(そうぐう)したような驚愕(きょうがく)の表情を浮かべると、急におどおどし始めた。


「そんな、どうしよう。早く帰らなきゃ。あー、でも、魔王が、この世界が」


 急に知らされた自分の境遇(きょうぐう)に混乱する気持ちは分かる。

 賢人はしばらく黙って見守り考えを(めぐ)らせる。


 ここでは四季もなく、気候変動も起こらなかった。

 朝が来れば夜が来るの繰り返し。

 地域によって雪や雨が降ったり、嵐が吹き荒れ落雷が発生するが、大陸 全体はほぼ快晴という世界。

 そんな異世界にとっては一年という単位すら意味が無いのかもしれないな。


「落ち着けって、今更の話だ。まずは魔王討伐をして、国王との約束を果たそう。

その時帰る方法を聞いて、一緒に地球へ帰ろう。王女との結婚は諦めろ、まだお前は小学生なんだから」


「わかった。そうする。よーし、頑張るぞ」


 正義感が強いところも、優柔不断なところも全く変わらない姿を見て、賢人はなぜか安堵した。

 やっぱりナナハルに間違いない。

 まずは仲間の力を借りて魔王討伐を成し遂げよう。

 賢人は弟を地球に連れ戻すために、新たな目標を立てた。

次話から第三章に入ります。異世界での冒険と、エンディングに向けてやっと動き始めます。


■プチっと業務連絡

2022年11月、VOICEVOX(音声合成ソフト)を使って音声化はじめました。ストーリーは変わりませんが、文脈をいじってます。整理できたら随時更新していきます。@siropan33_youで公開中。


▼朗読動画の再生リスト

https://www.youtube.com/playlist?list=PLqiwmhz1-5G0Fm2iWXSjXfi1nXqLHzi_p

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