29.アンガス戦記VR
結果を待つ間、アラキは勇者をヘッドハンティングしようと交渉を持ちかけてきた。
アラキも前から勇者を探していたらしい。
さすがに勇者が弟である事や、異世界に生きている事は教えたくないし、やんわりと断り続けていた。
しかし余りにも熱心に口説いてくるので、本人が同意したらという条件を付けた。
「絶対、本人に確認してくださいね」
興奮気味に声を弾ませながら、念押ししてくる。
光音パパが集計を終えて戻って来た。
何度もこちらを振り向きながら席に戻るアラキ。
賢人はホッと胸をなで下ろした。
「今回のテスト結果を踏まえて選考した結果、三人の方を選ばせて頂きました。
ケンニイさん、ネコメさん、アラキさん、以上の方はこのままお待ちください。
それ以外の方は終了となります。お疲れ様でした。
参加された方に記念品を用意しております。今後もアンガス戦記オンラインを楽しんでください」
名前を呼ばれなかった参加者は退出していく。
ほんのわずかな交流だったが、笑顔で賢人たちに手を振り一声掛けてくれた。
そして残された三人を前に、光音パパは手を一拍鳴らしてから話し始めた。
「さて、皆さん。おめでとうございます。
これほどアンガスの世界を愛してくれていることに社員一同、喜んでおります。
今後の新作ゲームを更に面白くするために、一層精進いたしますので、どうぞ忌憚のないご意見を宜しくお願いいたします」
それから新作ゲームの概要と、テスト期間についての説明を受けた。
アンガス戦記VRとは、仮想現実をヘッドセットで完全実装し、一人称視点でアンガス戦記オンラインを体感できるようになったゲームである。
一部専用サーバーを中継するのでログイン方法が変更されるが、今まで育てたアカウントを使って遊ぶことができるので、より没入感のある冒険が楽しめるという。
期間は三ヶ月を予定しているそうだ。
それと装置の都合で、コントロールセンターでプレイできるのは五時間、同時接続は一人だけという制約があった。
賢人は大学生、ネコメさんは高校生、アラキさんは社会人だが融通が利くそうなので、学生二人の予定を先に決めた。
来月からは春休みに入るので、賢人は週四回午前中、ネコメさんは週二回夕方、アラキさんは土日を中心に週二、三回予定を入れた。
今後の利便性を考えて三人はメールアドレスを交換した。
続けて入る時間帯は無いが、念のためである。
アラキさんからは早速勇者の事を念押ししてきたので無視した。
メールアドレスを教えたのは間違いだったかもしれないと、賢人は今更後悔した。
最後に三人に、メンバーズカードと書かれたICチップ内蔵の会員証を渡された。
受付で提示すると自動認証され、コントロールルームに入ることができるそうだ。
帰り際、アラキさんから怖いくらいのラブコールメールが届くが、一通ネコメさんからもメールが届いた。
『これから、宜しくお願いいたします』
アッサリした文章だが、誠実さが伝わってきた。
ちょっとはアラキさんに見習って欲しいと思いながら、返信を返す。
困ったことがあったらなんでも相談に乗るよ、と付け加えた。
■プチっと業務連絡
2022年11月、VOICEVOX(音声合成ソフト)を使って音声化はじめました。ストーリーは変わりませんが、文脈をいじってます。整理できたら随時更新していきます。@siropan33_youで公開中。
▼朗読動画の再生リスト
https://www.youtube.com/playlist?list=PLqiwmhz1-5G0Fm2iWXSjXfi1nXqLHzi_p




