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26.勇者ナナハル

 数日を経て再びアンガス戦記オンラインの旅に出る。光音、マキさんも、時間が合うときは共闘してくれることになった。ギルドには五人が新規加入してくれたが、驚くことに、その中に勇者ナナハルが入っている。薫子の作戦が見事に当たり、一気に目標は達成された。

 賢人はまず現在オンライン中の新規メンバーに挨拶した。


「皆さん、初めまして一応団長やってますケンニイです。

皆さんのステータスを拝見すると強くて頼もしいです。

これからよろしくお願いします」


「よろしくー」


「どーもー」


「ご期待に応えられるよう、頑張りまする」


 そしてギルドの目的は達成され、早々にやることが無くなったことを説明すると、当然ながら不満が出て、二人がそのまま離脱してしまった。薫子はいつもと変わらぬ口調で明るく声を掛けてくる。


「目的は達成したけど、ゲーム自体はまだ道半ばだし、ここら辺で討伐クエストこなせばいいんじゃない」


「拙者は強いとこならどこでもよいでござる。

何回か共闘させてもらって、残るか否かは判断させてもらい申す」


 彼の名はノイマン。モニターに映る容姿からかなり小柄な体躯だが黒い顎髭(あごひげ)が渋い。蛮族の服がよく似合っている。声は低く年上の男性と思われる。身長より三倍はあるであろうハルバードを片手で持ち、攻撃力だけ異常に高い。ドワーフという種族らしい。


「強い殿方、大歓迎よ、もうワクワクが止まらないわー、グへへ」


 ゲーム中の君枝さんは興奮すると性格が危なくなるようだ。そんな話をしていると、もう一人新規加入者が現れた。


「お待たせ、マッチャー。皆さん、今日からよろしくお願いします」


 爽やかな声で挨拶を交わす。


「あら、待ってたわ。オリジン、頼りにしてるわよ。あ、皆さん紹介します。

我が“餓狼のしっぽ団”団長のオリジンです。

彼は前衛も後方支援もこなせる器用な人なの。一杯こき使って下さいね」


「オリジンて言います。微力ながら参戦します。どうぞよろしく」


 どうやらマッチャーが言っていた人らしい。とても優しくて人当たりがいい雰囲気だ。ただ団長って聞こえたが、しっぽ団の行く末が心配になった。ここでも君枝さんの暴走ぶりが目に浮かんでしまった。


 オリジンは、レベル七十一の探検家。くないや太刀、ブーメランを使って遊撃できる、前衛、後衛どちらもこなせるオールラウンダーらしい。


 そして目的にしていた勇者が遂にやって来た。モニターに映った彼は、どことなく雰囲気が弟に似ていて賢人は確信した。彼は暫く動かず黙っていたが、見たことがない文字列が画面上に表示された。声では無く、文字で話しかけてきたのだ。文字は自動で日本語に翻訳されていく。


『賢ニイ、会エテウレシイデス。皆、元気デ居マスカ』


 勇者と同時にオンラインになったアカウント名でガルシアというプレイヤーが同じく文字でメッセージを発する。


『彼ガ、良ク話ニ出テクル、オ兄サンカイ、オ兄サンモコッチニ来タノカ』


 まずは質問してみることにした。


「君は弟の橘七治か。本当に、七治なのか?」


 少し間を置いて、先程のように文字が出てくる。


『賢ニイ、貴方ガ橘賢人ナラ、僕ハ弟ノ橘七治デス』


 ヘッドホンから「おお」と薫子の感激した声が聞こえる。


『オ兄サン、僕ハ七治ト、異世界デ冒険シテイマス。オ兄サンハ、ドウヤッテココヘ来タノデスカ』


 ガルシアは、異世界での旅について話してくれた。彼も弟と同じく召喚されて地球へ戻る方法を探していたという。エルフの里から南に位置するロモコンシア共和国で弟と出会い、魔王討伐に協力してくれているそうだ。


 地球ではシトルというゲーマーだったと聞いて、薫子は驚いていた。プロの世界では有名なゲーマーらしい。


 賢人は今の状況を簡単に説明する。その話を聞いたガルシアは沈黙してしまった。


 ここにきて判ったことはゲームだと思っていたこの世界は、弟が召喚された異世界だった。原理は不明だが、失踪した弟と無事再会を果たし、兄は万感(ばんかん)の思いで弟を抱きしめ喜びあった。めでたし、めでたし。


 『劇完』


 ……じゃないぞ。まだ全然解決していないじゃないか。


 賢人はひとまず新しい仲間を引き連れ魔神討伐のクエストを大量に受注し出発した。


 勇者とガルシアの攻撃は凄まじかった。フルカス、ラムウ、カイム、ムールムール、ベリアルなど名のある幹部悪魔をほとんど二人で圧倒した。


 高難度のクエストを次々と達成し、賢人達のレベルも引き上げられていく。マッチャーとオリジンの見事な連係プレーあり、勇者の快進撃に即発されてノイマンも躍動し雄叫びを上げる。


 ガルシアは攻撃系魔法と防御系魔法を同時発動しながら、勇者を援護し、賢人を擁護する。その姿はまるで大賢者のようだった。


 ガルシアの話では、異世界へ渡ったとき、神からギフトを授かったという。ナナハルも何か特殊な能力を得たのだろう。二人は神の化身のように他の追随を許さない程、強力な力を持っていた。


 魔王が復活する度に、異世界に済む王たちは、異世界召喚の儀式を使い地球から人間を集め、勇者を誕生させる。そして世界平和を謳い(うたい)魔王討伐に向かわせるという。


 七治、当時十歳という若さで異国の地に飛ばされ、無理難題を押しつけられても忠義を尽くし(たくま)しく生きていた。賢人は戦うナナハルに目を注ぎながら、この世界のご都合主義な大人達に(いきどお)りを覚えた。

■プチっと業務連絡

2022年11月、VOICEVOX(音声合成ソフト)を使って音声化はじめました。ストーリーは変わりませんが、文脈をいじってます。整理できたら随時更新していきます。@siropan33_youで公開中。


▼朗読動画の再生リスト

https://www.youtube.com/playlist?list=PLqiwmhz1-5G0Fm2iWXSjXfi1nXqLHzi_p

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