25.自分たちのギルド
これまでとは次元が違う敵を相手にして、完全に打ちのめされた。
賢人が、レベルをあと二十上げたところで、勝てる気がしなかった。
「あんな綺麗事言ってゴメン。やっぱり、ギルド作ろう」
「賢人がいいなら、別に反対しないわよ」
「うちの餓狼のしっぽ団で安全パイがいるわ、間違いなく頼りになるから呼んでもいいかしら」
「アハ、ハイ、そこまで君枝さんが太鼓判を押す人なら安心です。ぜひお願いします」
君枝さんのギルドは、“餓狼のしっぽ団”というらしい。
怖いと可愛いが入り交じった名前に、思わず笑ってしまい、ちょっと緊張が和らいだ。
「それならマキさんと光音君にも入ってもらわない?」
「もしやってくれるなら、ありがたいけど、どうだろう」
「私、連絡取ってみる」
薫子は早速メールで連絡をしているようだ。
「あとは、申請するのにギルド名と、え? 費用が一万?高っけ」
「費用は私、出しとくよ、それよりギルド名どうしよっか」
億トレーダーの薫子にとっては、なんの問題も無いらしい。
その頼もしさに感動したが、また大きな貸しを作ったことで、この先の人生に一抹の不安がよぎる。
「ギルド名はインパクトが大事ですわ」
「でも、目的が人捜しだからなぁ」
「じゃあさ、いっその事、ハル君に向けたメッセージにしちゃえば?」
「それってどういう事?」
「ハル君が見たとき、私たちのギルドだよって、判っちゃう名前とか」
それを聞いて、小学校の頃を思い浮かべたが、どれもピンとこなかった。
結局、賢人の名前と実家の家業で、“ケンとメロン農家”に決まった。
“ケント”にしなかったのは個人情報の開示に反対したからである。
そして今後、チャット中はプライバシー保護も兼ねて、アカウント名で呼び合うことにした。
賢人はケンニイ、薫子はフレグランス、君枝はマッチャーという感じだ。
ギルドを作り、ドルッセン山脈を越えて、一緒に冒険しようと募集をかけた。
賢人はログオフしたあと、期待と不安が重なり、思わず吐息をついた。
薫子はその様子に、緊張しすぎだとケラケラ笑った。
賢人が要塞を出たときには、夜になっていた。
夜空に浮かぶお月さまが、辺りをやさしく照らしていた。
東京より星がたくさん見えた。
あの星のどこかに七治はいるのだろうか。
賢人はしばらくの間、自然の天体ショーをぼんやりと眺めていた。
■プチっと業務連絡
2022年11月、VOICEVOX(音声合成ソフト)を使って音声化はじめました。ストーリーは変わりませんが、文脈をいじってます。整理できたら随時更新していきます。@siropan33_youで公開中。
▼朗読動画の再生リスト
https://www.youtube.com/playlist?list=PLqiwmhz1-5G0Fm2iWXSjXfi1nXqLHzi_p




