24.敗北
君枝さんの戦闘能力と、薫子の魔法センスにより、エルフの里に辿り着いた一行は、街にある転生ギルドへ向かった。
転生ギルドとは、このゲームを遊んでいるプレイヤーたちが集まる場所、グループといったところだ。
攻略に役立つ情報や、仲間の勧誘、プレイヤー同士の交流などができる。
ギルドには、プレイヤーが作った、複数のギルドが存在する。
どこに入ってもいいし、条件をクリアすれば自分で新しく作ってもいい。
賢人と薫子は、はじめてギルドに入っている。
初期設定されているチュートリアル的なギルドで、基本的な遊び方を学べる。
ギルド単位で挑戦できる、難易度の異なるサブクエストがこのゲームの魅力の一つだ。
報酬が豪華で、メインストーリーでは入手出来ない強力な装備品や、レアアイテムをもらえる。
陣取り合戦を行うクエストもあり、能力や成果に応じて毎日順位が発表される。
チャット機能についても説明しておく。
個人、ギルド単位、ゲーム全体と三つのチャットが利用出来る。
声を、リアルタイムに文字変換してくれるのがすごい。
更に外来語は自動翻訳してくれるので、世界中のプレイヤーと気軽に会話出来るのだ。
新しい情報はなかったが、三人は神殿へ向かうための作戦会議を開いた。
『竜の神殿までは一本道だから、出会った敵は必ず倒したほうがいいわ。
逃げて挟み撃ちになったら危険だから』
『君枝さんは、攻略したんですか?』
『いえ、今回が初めてよ。どんな敵が出るのかワクワクしちゃう、グへへ*?%^!”$%4あけない』
『君枝さん』
『ゴメンナサイ、余りに楽しそうで、想像しただけで涎が……
あ、いえ、何でもありませんわ、オホホホ』
ふと先日源家で見た衝撃的な情景が頭に浮かんだ。
賢人は身震いした。
『賢人はレベル低いんだから、足引っ張らないようにね。できれば前衛も、もうふたりくらい、仲間ほしいよね』
薫子はゲーマーだが、格闘ゲームしかやらなかった。
七治を探すために、賢人と同じようにアバターを作り参戦した。
君枝さんはチーム君枝(ギルド名不明のため仮称)を離れて、賢人に同行してくれている。
レベルが高くても、中盤以降は危険が高くなる。
この山を越えるなら、仲間は多い方がいい。
『いっそのこと、うちらでギルド立ち上げよっか』
『いいわねそれ、それじゃ私のチームからも呼んじゃおうかしら』
二人はそんな前向きな話をしていたが、賢人だけは迷っていた。
『二人に協力してもらって、なんとかここまで来ることが出来た。
でも弟を探しているっていう事を、あまり他人に広めたくないんだ、ゴメン』
『そうか』
『そうね、私こそゴメンナサイ』
このゲームを始めるにあたり、君枝さんには事情を説明して、七治探しに協力してもらっている。
かなり突飛な話で困惑しただろうが、君枝さんは深く追求もせず、喜んで協力してくれた。
それなのに二人の重荷になっていることに、賢人は焦りもあった。
賢人は少しでも二人に追いつこうと、街にある武器屋に向かった。
街には大きな工房を備えた鍛冶屋がいつくもあった。
どこも広く、品揃えが多い。
がたいのいい店主が仁王立ちで腕を組み、自慢げに、誇らしげに立っている。
しかし賢人が装備出来る武器や防具はなかった。
今持っている装備品を強化するにもアイテムやお金が足りなかった。
落胆しながら店を出ると、突然声を掛けられた。
声のする方へ振り向くと、見知らぬ少年が立っていた。
背丈は今の賢人と同じくらいだが、ひげを生やし、髪の毛はボサボサ。
痩せた体にブカブカの皮の胴着を縛り付け、腰には使い込まれた工具をぶら下げていた。
よく見ると、皺や堀も深く、少年ではなく小さな老人だった。
「あの、何かご用?」
しかし小さな老人は返事もせず、賢人の周りを一周すると、首を振って残念そうに去って行った。
「なんだよ失礼な」
謎の老人に憤りながら、道具屋で持てるだけ回復薬を買い、二人に合流。
勇者が目撃されたという、山頂にある竜の神殿へ向かった。
そして戦闘が始まる。
回復薬の乱用空しく賢人が倒れると、間もなく薫子、君枝も倒れた。
はじめてのドルッセン山脈攻略は、あっけなく失敗に終わった。
■プチっと業務連絡
2022年11月、VOICEVOX(音声合成ソフト)を使って音声化はじめました。ストーリーは変わりませんが、文脈をいじってます。整理できたら随時更新していきます。@siropan33_youで公開中。
▼朗読動画の再生リスト
https://www.youtube.com/playlist?list=PLqiwmhz1-5G0Fm2iWXSjXfi1nXqLHzi_p




