23.アンガス戦記オンライン
いつの間にか年が明け、商店街では新春セールで賑わっている。
一方、薫子の要塞、4階のコンピュータールームでは、賢人がアンガス戦記オンラインを特訓していた。
アバターは性別や外見、種族の設定が自由に出来ると知って、薫子がおこちゃまサイズに変更。
アカウント名はケンニイ。
理由は七治が知る賢人の姿、呼び方のほうが、気がつきやすいからだと言われた。
七治側から考えての話である。
ゲーム音痴の賢人は、口を挟むことができず、薫子にいわれるがまま、キャラクリの設定は完了した。
『ケンニイ、狙撃手、人族、レベル一』
君枝さんの熱血指導を受けながら、基本操作を覚えて始めたまでは良かったが、レベルがなかなか上がらず、苦労していた。
勇者ナナハルと名乗るプレイヤーは、推奨レベル六十五、のエリアを攻略しているという情報があった。
早く先に進みたいのだが、周りの敵が強すぎて、今のレベルでは、途中で倒れてしまうのだ。
このゲームは、エリアごとに推奨レベルが設定されている。
出てくる敵のレベルが、エリアごとに決まっているからだ。
大陸の更に東に位置する、アンガス島、はじまりの街からスタートして、西に向かって広大なオープンワールドが舞台となる。
魔王が住む魔王城に近づくほど、推奨レベルが上がっていくので、プレイヤーはボスを倒して鍛錬したり、武器を強化したりしながら、とにかく西へ進んでいく。
推奨レベル三十のエリアには、転職を可能にする街がある。
商人として商売したり、農業や酪農を営んだり、この街で定住するプレイヤーも結構いると教えてくれた。
そう考えると、レベル五十でいまだに冒険者の君枝さんはやはり、強者で間違いない。
『マッチャー、騎士、人族、レベル五十』
格闘ゲームのプロである薫子は、要領よくレベルを上げていた。
強いボスを低レベルで倒した方が、レベルの上がりが早いので、推奨レベルが高いエリアで経験値を稼いでいたのだ。
『フレグランス、魔術師、エルフ、レベル三十』
「何がそんなに難しいのよ、何このステータス。
装備とか初期のままやってるとか、もー、あり得ないんですけど」
薫子が賢人のステータスを確認すると、呆れた声を上げる。
賢人は最初のエリアで装備した武器と防具のまま、ずっと戦っていたのだ。
というより、装備の切替方法を知らなかった。
レベルは五、武器はこん棒、木の盾、装備はおかんの頭巾、ラフな服、ラフなズボンという有様だ。
これでレベル五まで上げられたことが奇跡だと話す。
薫子のアドバイスを受け、商人の街、デニールに向かった。
この店で一番の剣と盾を買い、装備する。
それから素早さアップ、スピドーの実が、練り込まれたライ麦パン。
筋力アップ、マッスル豆の炒り豆。
防御力アップ、ロック鯨のソーセージ。
体力回復、ハイリンゴのシードル、それらを爆買い。
ボス戦で、アイテムを大量に消費する戦略で、賢人はレベルを急速に上げていった。
レベルを挙げると同時に、薫子の指示通り、メインストーリーも消化していく。
レベル十で商人の街、デニール、組合長の悩みを解決。
レベル十五で、崩落したルナー山脈のトンネルを修復。
レベル二十五で、要塞ルナードルの防衛に参加。
レベル二十九で、ルナー鉱山に住み着いた、魔神デカラビア撃破。
レベル三十三で、要塞の街、ブレイブフロートで起きている、ギルド間の衝突を解決。
その結果、賢人はレベル三十八、ボウガン、旅人のバンダナ、旅人の服、旅人のズボンを装備。
体力値は千以上、攻撃力、防御力は百三十以上、素早さは二百以上、熟練度は百以上上がっていた。
薫子はレベル五十五、君枝さんはレベル六十八になっていた。
大陸を縦に分断する、ドルッセン山脈を越えた西のエリアは、魔王軍が占領する、魔族エリアだ。
レベルは最低でも六十以上を推奨している。
そうした中、ドルッセン山脈の山頂にある、竜の神殿で、勇者ナナハルが目撃された、との情報があった。
そこで麓にある、エルフの里へ向かうことに決めた。
■プチっと業務連絡
2022年11月、VOICEVOX(音声合成ソフト)を使って音声化はじめました。ストーリーは変わりませんが、文脈をいじってます。整理できたら随時更新していきます。@siropan33_youで公開中。
▼朗読動画の再生リスト
https://www.youtube.com/playlist?list=PLqiwmhz1-5G0Fm2iWXSjXfi1nXqLHzi_p




