17.光音の父親
ミオンは父親に確認するということで、賢人たちは連絡を待っていた。
マキさんは顔バレしたくないと、ミオンから聞いたゲーム会社を裏から調査している。
弟が書いていた攻略ノートも探してはいるが、見つかっていない。
薫子はマキさんとチャットで連絡を取りながら、ゲーマー仲間のネットワークを広げているようだ。
連絡を待つ間、賢人は何かヒントが見つからないか、先日実家で見つけたゲームソフトを遊んでみることにした。
しかしチュートリアルの町からほとんど進めない。
賢人にとっては無理ゲー以前の問題だった。
攻略方法をネットで探しても、八年以上前に発売されたゲームだ。情報が出てこない。
賢人はゲーム機の電源を切り、気分を入れ替えようと外に出た。
時は経ち、ミオンから連絡を受けた頃には、ゲーム機は押し入れの奥へと強いられていた。
スケジュールを合わせ、薫子を連れてミオンの父親が務めるゲーム会社へやってきた。
そこは都心のオフィスビル街に建つ高層ビルだった。
インディーズ会社と聞いていたが、こんなビルにオフィスを構える会社がメジャーじゃないとは信じられない。
一階の総合窓口で、受付嬢に訪問先を伝えると、モニターをタッチして訪問者リストと照合する。
その後も、名前を記入したり身分証を提示したり、かなり厳重なチェックを受け、無事、ゲストと書かれた名札を手に入れた。
名札を首からぶら下げると、最後にエレベーターの説明を受けた。
そこで名札をかざすらしい。
到着したエレベーターに乗り込み、言われたとおり名札をセンサーの上にタッチすると、自動で階数が表示され動き出した。
エレベーターに設置されたモニターには、階数とともにそのフロアにある会社のPR動画が流された。
操作ボタンは開け閉めのみで、名札で指定されたフロアにしか降りられない仕組みらしい。
エレベーターの自動化に感心する賢人。
薫子はモニターを食い入るように見つめていた。
指定されたフロアに到着すると、ミオンが笑顔で出迎えてくれた。
賢人と薫子は、間仕切の低い開放感あふれるオフィスを通り抜け、会議室三と書かれた部屋へと案内された。
白を基調としたデザインで、大きな四角いテーブルがひとつ、部屋の真ん中に置いてある。
ミオンに習って横並びで椅子を引き出し、座りながら会社の雰囲気を口にすると、薫子も同意してくれた。
ミオンは照れながら、ここはどういう部署か簡単に説明してくれた。
上のフロアもあるそうで、賢人はその規模に驚かされた。
そこへ白髪交じりでセミロングをセンター分けにした男性が入ってきた。
日本人離れした顔立ちで顎ひげを蓄えたダンディーな中年男性。
ぱっと見イケメンだが、頭を掻きむしっている仕草に残念な気分になった。
ミオンに遅れて賢人と薫子が立ち上がると、「まあまあ」と手で座るように促しながら、テーブルの向かい側の椅子を引いて座った。
そこでミオンがお互いの紹介を始める。
「父の木村イチタカです。作家で今はここでゲーム制作の研究員をしています。
こちらはロボット工業大学精密機械工学科一年、テレイグシスタンス研究会の橘賢人先輩。
先日話した弟のナナハルさんを探しています。
隣は朝日薫子さん。
橘先輩の幼なじみでナナハルさんの友人でもあります」
薫子のフルネームを知っている事に驚いたが、顔には出さず、和やかにお辞儀する。
「息子から大方、話は伺いました。大変心苦しいお話で、心中お察しいたします。
私の原作が関係してると聞いて驚きましたが、生憎、弟さんについて、見当が付きません。
つきましては、私の出来ることはなんでも協力いたしますので、今後も息子共々ご自愛ください」
拍子抜けするほど非常に丁寧な言葉遣いで、「こちらこそよろしくお願いいたします」と重ねてお辞儀を返した。
早速、弟の写真を見せながら、これまで調べたことを伝えたが、どの質問も、目を閉じて、首を横に振るばかりだった。
当時発売されたゲームについても、出版社任せだったそうで、どんなゲームだったのかすら覚えていないという。
原作者でもジャンルが違うとそうなのか、と疑問に思ったが、返答におかしな点はなかった。
こちらが持つカードは全て出し切り、静寂の時間ができると、イチタカは時計を何度か見返して「もういいでしょうか」と慌ただしく会議室を出て行った。
ゲーム会社で研究員というのが、どんな仕事なのか想像もつかないが、とても忙しそうだ。
ミオンは詫びてきたが、あんなに忙しい中、時間を作ってくれたことに感謝した。
それにミオンパパはとても感じのいいひとで、ナナハルの失踪に関わっているとは思えなかった。
今後も協力してくれることになったのはありがたいと、ミオンに頭を下げ、「またね」と笑顔で別れた。
会社を出てしばらく歩くと、無意識にため息をついた。
薫子も元気がない。
再び暗礁に乗り上げた船は航海士を失い、この広大な海の上で立ちすくむほか無かった。
■プチっと業務連絡
2022年11月、VOICEVOX(音声合成ソフト)を使って音声化はじめました。ストーリーは変わりませんが、文脈をいじってます。整理できたら随時更新していきます。@siropan33_youで公開中。
▼朗読動画の再生リスト
https://www.youtube.com/playlist?list=PLqiwmhz1-5G0Fm2iWXSjXfi1nXqLHzi_p




