11.痛恨の不祥事
久しぶりに会った賢人と薫子の関係性にも注目です
実家に一時帰省している賢人は、ミオンから得た情報を、早速薫子に伝えていた。
困惑しそうな内容だったが、そこは経験豊富な幼なじみ、すぐに納得してくれた。
「つまりハル君は、ファンタジーの世界でこの魔方陣の情報を得たということになるのかな」
「うん、そう、かも、ね」
「ファンタジーの世界に友達がいるとかかも、すてき」
「まさか、ありえない……」
賢人は鼻で笑ったが、途端に不機嫌になったので、慌てて視線をそらして口笛を吹いてごまかした。
その様子に薫子は呆れたが、ひとつ咳払いをして、今度はノートの余白にキーワードを書き出した。
小学生、失踪、ファンタジー、魔方陣、それを円で囲みながら考え込んでいる。
賢人も当時やっていたことを考えてみた。勉強、読書、犬の散歩、家の手伝い、サッカー。
手伝いはナナハルだったか。しかしどれもしっくりこない。
夏、夕方、セミやカエルの鳴き声、暑い、Tシャツ。
考えれば考えるほど底の見えない沼にハマってしまったようで、どこかの名探偵のように頭をかきむしった。
薫子は小さな円卓に座り、ど派手なノートパソコンを取り出して、セットアップを始めた。
賢人の家にはネット環境がそもそも無いので、モバイルルーターを持参してくれた。
ネットショップで先日買ったらしい。
手早く設定を済ませると、回線速度の遅さに文句を言いながらも、当時の出来事を検索し始めた。
その様子をそっと後ろから盗み見る。
『二〇××年八月。十日連続猛暑日、海の事故が多発、甲子園で××選手躍動、海外で同時多発テロ発生、往年の名俳優他界……』
子供が失踪したという記事は出てこない。
警察が調べても未だに手がかりがない情報、そんな都合良く見つかるわけがないだろう。
そう思いながらも、目を皿にしてパソコン画面を凝視する。
薫子が検索結果のページを次々と送っていくと、ある見出しが目に飛び込んできた。
「ちょっと待って! その見出し」
賢人は薫子の肩をつかみ、前に乗り出して指を差す。
「これだ! 『アンガス戦記発売、クリアできない無理ゲー、と話題殺到』、これだよきっと」
ナナハルもハマっていた、無理ゲーだ。
記事を読むとおぼろげながらも確信した。
アンガス、確かにそんなタイトルだった。
『ハイファンタジーの世界を舞台に、勇者となって仲間を集め、魔王を倒す家庭用テレビゲーム』
ファンタジー、魔方陣、ナナハルはこのゲームにはまっていた。
「ちょっと、ケンちゃん、これが何? えー、キャー」
賢人は興奮しながら、薫子をうしろから抱きしめていた。
余りのうれしさで、涙を流しながら。
薫子は戸惑いながらも、その腕を振り払うことはせず、そっと手を添え一緒になって喜んでくれた。
“アンガス戦記”ってネットで検索すると、“アラド戦記”って出てくるけど、全く関係ありません。パクってませんよ。
本小説に登場する“アンガスの日常”っていう小説を原作にしたゲームだから“アンガス戦記”って安易な考えで名付けただけですからね。次話で解説入ります。
■プチっと業務連絡
2022年11月、VOICEVOX(音声合成ソフト)を使って音声化はじめました。ストーリーは変わりませんが、文脈をいじってます。整理できたら随時更新していきます。@siropan33_youで公開中。
▼朗読動画の再生リスト
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