9.魔方陣の謎
喫茶店は大学近くの商店街の一角にあります。
ツタが生い茂るビルの一階に入り口があり、看板からしてレトロな雰囲気。隠れ家的な外観をしているイメージです。
ミオンから魔方陣のことで連絡をもらった。
直接話しを聞きたかったので、大学そばの喫茶店でまちあわせ、説明を受けることにした。
ミオンが持ってきた本には、魔方陣と呼ばれる幾何学模様が、いくつもかかれていた。
かなり分厚いその本は、魔方陣の歴史書、いや、取扱説明書といったところか。
魔方陣を囲むように、びっしりと書かれた象形文字は、説明文だというが、賢人には解読できなかった。
問題のページを見せてもらうと、確かにその記号や文字の配置が、ノートにかかれた模様と驚くほど類似していた。
異世界召喚に用いる魔方陣だと説明してくれた。
「ミオンはこの説明文がなんで読めるの?」
「父から教わりました」
ファンタジーの世界では、何らかの使命を帯びて、異世界から呼び出す行為に使われると言う。
そのほかにも異世界と繋がる方法は存在し、場合によっては命の代償がともなうとか。
とても信じられない話だが、ミオンは怖いくらい神妙な面持ちで説明している。
賢人は話しを聞いているうちに、あるエピソードを思い出した。
小学生の頃から作り話がうまかったとヒカリが話していた。
父親は作家だという話も。
つまりこれは、なにかの作品の為に作られた、設定資料なんじゃないか。
かなり年季の入った本に見えるが、実は小道具か何かで、作らせた人は非常に凝り性なのでは無いか。
そう考えると、なんだか気持ちがほっこりした。
「そこで僕が考えた推理は、弟さんは異世界へ、召喚されたのでは無いかと。
つまりその、弟さんは今、地球ではない世界で生きているのではないでしょうか」
ミオンは言い終えると、じっと賢人の目を見て訴えかけてくる。
「そうかそうか、それなら今まで全く消息が掴めなかった理由にも、説明がつくな。フフ」
冗談半分で話に乗ってみたところ、ミオンは自信ありげに頷いて、満面の笑みを浮かべた。
「……え?」
ミオンが納得して話しを続けようとしたので慌てて問い直す。
「あ、でも科学的には、現代社会において魔法とか異世界とかはどうなのかな、なんて……」
「そんなことはありません。
未だに解明できないことも、文明の違いから生まれる些細なことです。
父はよく、『目に見えないからといって何も無いとは考えるな。
そこには想像を超える重要な手がかりがあるかもしれない。
常識を疑え、目に見えなくても感じ取れ。
発見は自分の常識の遙か上に存在するのだ』と申してました」
賢人はなおも反論を試みたが、たたみかけるように持論を展開するミオンに、常識の上をゆく教育方針だった事だけは痛いほど伝わってきた。
痛いというかもう、ミオンの将来に不安さえ覚えた。
ミオン目線で考えれば、異世界ありきで考えれば、納得できることもある。
本に書かれた魔方陣は、確かにノートにかかれた模様と類似していた。
でもそうなると召喚者は誰なのか。
なぜナナハルが選ばれたのか。
本人の意思で異世界へ向かったのか。
召喚された人間は、帰ってこられるのか。
まったくもって理解できない世界観に、ミオンの報告で、より頭を悩ませる結果になってしまった。
■登場人物
賢人:大学生。
ミオン:同級生。父親が作家。魔導書を所有。ファンタジーの世界観に詳しい。
■プチっと業務連絡
2022年11月、VOICEVOX(音声合成ソフト)を使って音声化はじめました。ストーリーは変わりませんが、文脈をいじってます。整理できたら随時更新していきます。@siropan33_youで公開中。
▼朗読動画の再生リスト
https://www.youtube.com/playlist?list=PLqiwmhz1-5G0Fm2iWXSjXfi1nXqLHzi_p




