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闇に響く声
そこは闇の中だった。
僕は形のない、真っ黒なものに囲まれていた。
手足の感覚がなくなっていき、自分が今何をしているのかもわからなくなる。手を伸ばしているのか、動かしているのか。そもそも僕は地面に立っているのだろうか、宙に浮いているのだろうか。僕の心臓は動いているのだろうか、止まっているのだろうか。
感覚と共に記憶も消えていく。どうやら闇が頭の中まで入ってきているようだ。
抗うこともできず、一つ一つ僕という存在がいなくなっていく。そうして最後に残ったのは何かの名前だった。
【クレイザ】
それが何の名前なのかも今の僕にはわからない。だけどその名前だけは僕から無くならず、ずっと止まっていた。
消えないものを自覚した途端、不思議と心が落ち着いた。もうきっと、大丈夫。自分の中の誰かがそう呟く。
目の前の闇に光が刺す。その光に向かって、間違いなく僕は手を伸ばした。
最後に僕は何かを掴んだ、気がする。それ以上のことは記憶にない。
唯一覚えていることは、消える意識の中で、僕は確かに笑っていたことだ。