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08・召喚の謎


「香音?どうした?」


驚いた様な倭さんの声を聞いている内に、謎の感覚がゆっくりと引いて行く。

私、どうしたんだろう。

何かを思い出しかけると、必ずこの変な感覚に襲われる。


「すいません、ちょっと眩暈しちゃって。朝ご飯も食べずに家事やってたからかも」

「ったく、しょうがねぇな。待ってろ、直ぐに昼飯持って来てやるから。好き嫌いとかアレルギーは無いか?」

「はい、無いです……」


心配そうにこっちを見て来る面々に照れ笑いで返しながら、私はさっきの感覚を忘れないでおこう、と思っていた。



「わー!カレイの煮付けだー!」

「こっちでは煮付けなんて無かったからな。今では人気メニューなんだ」


炊き立てのご飯に、切り干し大根の煮物。

青菜のお浸しに茶碗蒸し。メインのカレイにキノコのお味噌汁。


「いただきまーす」


早速カレイの煮付けを口に入れる。

甘味のある煮汁にホロホロとした白身が絡んで物凄く美味しい。

はぁ……毎日ここへ通いたい。


「ほら、日本食ってヘルシーだって言われてるじゃない?それってこっちの世界でも言われてるの。だから、ヤマトには常連さんが多いのよー」


愛さんの言葉に、周りの皆も大きく頷いている。

うーん、本当に美味しい!

何だか色々会った事を全て忘れてしまいそうになる美味しさ。


そして暫く食事を楽しんだ後、食後のお茶を飲みながら色々気になっている事を聞いてみる事にした。


・現在47都道府県の内、どこの人間が連れて来られているのか

・召喚システムについて

異世界人わたしたちの恩恵って?


この3点が今一番気になっている所ではある。


私はその疑問を、皆にぶつけてみた。


「えーと、詳しく知ってるのはやっぱり弥生なんだよな。だけどアイツは旦那の手前、国側の人間だ。俺らに迂闊な事は言えないとは思う」

「そうですか……」


倭さんの言葉を、私も理解出来ない訳では無かった。


召喚者は皆、北・南・中央の何れかの神殿に現れる。

それは当然、そこに”呼び出した者”が居るからだ。

国からの命令で神殿が異世界(日本)から召喚者わたしたちを召喚している。

その際のアレコレを、全てとは言わないまでも弥生さんは知っている筈だ。

そしてそれを口にする事は恐らく許されていない。


「大阪と福岡と兵庫がまだなのは分かってるんです。後、北神殿に栃木の人が居るんですよね?」


私は召喚初日の弥生さんとのやり取りを説明した。


”広島駅前を歩いている人の三分の一は拳銃持ってる説”には成美さんは大爆笑してたけど、他の面々の「え、違うの?」と言った目線にはちょっとげんなりした。


「まぁその程度なら聞けば教えてくれるだろ、そもそも日誌を書くのを許してる位だし。書いてないヤツも居るだろうから、正確な所が知りたければ直接聞くのが一番だろうな。因みに今日は仕事で来てないけど神奈川の奴と京都の奴が居るぜ。京都のはそうそう会えないが、その内向こうから何か言って来るだろ」


成美さんの言葉に、あ、そう言えば私と年の近い人が居るんだっけ……と思い出す。

どっちだろう?神奈川?京都?


「私と年の近いのはどちらなんですか?」

「京都」

「どうしてなかなか会えないんですか?遠くに住んでるとか?」

「いや?すげぇ近くに住んでるよ。ただ簡単には出て来られないんだよ」


何で?

出て来られないって、もしかして病気の状態で召喚されたとか?


「仕方ないよね。王太子妃がそんなホイホイ出て来られないでしょ」


あぁ、王太子妃か……。

じゃあしょうがな――


「え!?王太子妃!?」

「そう。驚きでしょ」


いやそれは驚くでしょ。

だって。


「王子様もくじ引きしたんですか!?」

「驚く所ソコなのね」


玲子さんの冷静な突っ込みは置いておいて、そこは非常に気になる。

元の世界でも、現代では如何に王族皇族と言えども幼い頃からの婚約者と結婚するなんて話はまず無い。

ひょっとしたら異世界でもその制度は撤廃されたのかもしれない。


ただ、「くじ引き縁談」に応募する必要あったの?


私のその疑問には、美穂さんが答えてくれた。


「……元々は王族の為に異世界人を召喚するつもりだったみたいね。だけど、その恩恵を王族だけに独占されるのはどうかって反対運動が起こって、それでじゃあ公平にくじ引きにしてやろうじゃないかってなったみたい。勿論、出来レースと言うか王族にくじが当たる様になってたみたいなんだけど、ここからが笑えるの。くじ担当者にその旨が上手く伝わってなくて、”本当のくじ引き”になっちゃったのよ」


あー……分かった。

それで結局、その時は一般人が当たったんだろう。

それでますます、くじ引き申請が増えたって所なんだろうな。


「で、肝心な王族に当たらないまま終わらせられないでしょ?でも基本的には召喚は一国から一人のみ。だけど、初期に召喚した日本人から昔は小さな国が沢山あって、それが今の都道府県だって聞いたんでしょうね。それでそこを突いて来たんだと思うわ」


成程ねー。

今一つ釈然としないけど、そういう事だったのか。


では、召喚の仕組みは?

今の所、10代~20代しか呼ばれてはいない感じだけど。

それに、最初に美穂さんが言ってた「自転車」発言。これも気になる所ではある。


「あの、”縁談”が売りな訳ですから、ある程度の年齢制限かけてるのは分かるんです。だけど、どうして”私達”だったんでしょうか。それと美穂さん、さっきの自転車の話……」


私の問い掛けに、美穂さんは小さく頷く。


「そうね、これは北神殿の子から聞いたんだけど、”何かしらの疾患を抱えているもの””既婚者と心に想い人が居る者”は召喚対象から省かれているみたい。確かに、私別に好きな人とか居なかったし。そして召喚対象になった者達は、全員直前に共通の行動を取っていた。それが”自転車に乗っていた”と言う事なの」


――つまり。

10代~20代の、健康面に問題が無く心残りみたいなものも無い、自転車に乗っていた男女が適当に各都道府県から一人選ばれたって事なのか。


(……普段は自転車なんか乗らんのに。寝坊なんかせんかったら、自転車になんか乗らんで良かったのになぁ)


「何で自転車?」

「うーん、何か自転車のタイヤが回転する時の衝撃が召喚魔法の波動に合ったんじゃないかみたいな事は言ってたけど」

「ざっくりしてるなー……」


まぁ良いか。

連れて来られた原因をどんなに考えたって、帰れないんじゃ意味無いもんね。


「……そもそもの召喚理由が”王族の為”とかなんだったら、やっぱり異世界人との間に生まれた子供は能力が高い、とかなんですか?」


「そうね。この世界は、”魔法”が存在するし所謂”魔物”ってやつも居るの。私達の子供は皆、高い魔力に高い身体能力を持ってる。国の要職についている人たちや高い実力を持った冒険者とかも皆、祖先に異世界人が居るって噂。日本人だけとは限らないからね?」


――そうか。

確かに、弥生さんは『ここの所日本人が集中的に召喚される様になった』って言ってた。

それ以前には、他国の人も居たって事よね。

この国の人達は皆顔立ちが西洋系だから、パッと見じゃわかんないけど。


ところで。

私、一番肝心な事聞いてなかったかも。


「あの、この国って、何て言う名前の国なんですか?」


その質問には、あぁ、と言う顔で倭さんが教えてくれた。


「カエルム、だよ。神聖王国カエルム、がこの国の名前」


カエルム、かぁ……。

”帰る無”みたいで、不吉な名前。

帰ると言えば……もうそろそろお開きの時間だし、家に帰らないといけないんだー……。


「あー、家帰るのヤだなぁ……」


「そうだ!成美さんから聞いたけど香音ちゃんの旦那様、黒蛇姫でしょ!?いーなぁ、あんな素敵な旦那様!毎日が目の保養!羨ましい!」


身悶えしながら、楽しそうに笑う愛さん。

どうリアクションして良いか分からず、思わず成美さんの方を見る。


――彼は絶対に私と目が合った筈なのに、素知らぬ顔で素早く目を逸らしていた。



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