自己紹介
「まあいいじゃねえか! そうだ、これから一緒に戦うんなら、お互いの名前くらい知っとかないとな。俺はケイト・バベッジだ! よろしくな!」
ケイトは皆の方を振り向いて、元気良く言った。
「確かに、アンタの言うとおりだな。アタシはナキ、よろしく」
「えっと、ハインケルです。よろしくお願いします」
「マ、マンチニール、です」
「順応が早いね、そうじゃなきゃここには呼ばれないか。私はレミリアだ、そこの少年が言っていたように、偉大な魔女だから、そこんとこよろしく」
「……立花渚」
渚はそう言ってそっぽを向く。
「アッハハ! 無愛想だね! で、そこの君は?」
レミリアは高笑いして、虚無僧に尋ねる。
「拙僧は名を捨てている。好きに呼ぶがいい」
「そいつ、自分の名前言いたくねえんだってさ」
「いや、そうじゃないでしょ。本当に名前が無いの、この人は」
「どう言う意味だ?」
ケイトは不思議そうに渚に尋ねる。
「出家する時には自分の友人とか家族、私財なんかを捨てなきゃいけないの、もちろん名前もね。だから、この人に名前が無いのは本当」
「へえ、物知りなんだな、渚は!」
渚はケイトを睨んで、諦めたように溜息をつく。
「まあ、一応小説家志望だからね。で、なんて呼べばいいわけ、虚無僧さん?」
「貴殿らの呼びやすいように呼べばいい。呼び名にこだわりがあるわけでもない」
「あっそ、なら虚無さんって呼ぶわね」
「好きにしろ」
「さて、みんな自己紹介が済んだところで、あいつが言ったように夜まで休んだほうがいい。こっちの夜は、君たち
の想像を超えるものだからね」
レミリアは両手を叩くと六人にそう言った。
「そういえば、部屋があるって言ってたけど、どこにあるんだ? ノーデンスちゃんは何も言わずに消えちゃったけど」
「あ、それなら僕が案内できます。皆さんがここに来る前に、僕とマンチニールさんでこのお城を散策したんです。
その時にそれぞれの部屋を見つけましたから」
「そっか! それじゃ、早速案内してもらおうかな!」
「は、はい」
ハインケルは立ち上がって扉まで近寄り、広間を出る。他の者達もハインケルに続けて広間を後にする。
「レミリア、だっけ? 聞きたいことがあんだけど」
最後にナキが部屋を出ようとして、扉の前で立ち止まりそう言った。
「なんだい?」
「アンタも他の世界から連れて来られたのか?」
「ああ、そうだよ」
「なら、どうしてノーデンスのことを知ってたんだ? この世界の事にも詳しいみたいだし、明らかに他の連中とは違う。何なんだアンタ?」
ナキは殺気の篭った目でレミリアを見る。
「まあ、疑われるのは当然か。確かに私は君達とは少しばかり事情が違う」
レミリアはナキの前に降り立つと、真っ直ぐ目を見て言葉を継ぐ。
「けど、私は君達の味方だ、これだけは断言できる。私自身の事情で話せないことが多い。まだ疑惑は晴れないだろうが、信じて欲しい」
ナキは数秒レミリアを見つめ、そうか、と言い残して広間を後にした。
「だから私は他の連中と合わせない方がいいって言ったんだ。余計な問題が生じるからね」
レミリアは大きく伸びをして、中央の水晶玉を見つめる。
「まあ、そっちも切羽詰まってるのは理解してるよ。……今度は私の番かもね、ノーデンス」
レミリアはポツリと呟いて、広間を後にした。