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クロス・フェイト  作者: うみち
第一章 世界終末1
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決意

「ノーデンスとやら、一ついいか?」


 虚無僧は落ち着いた口調で続ける。


「大きな戦があったことは分かった、貴殿が人ならざる者だということもな。だが、その戦いが拙僧らと一体なんの関係があるというのだ? 何故拙僧らが戦う必要がある?」


 虚無僧の言葉を聞き、ノーデンスは静かに口を開いた。


「この世界にある楔を破壊されれば、外なる神が復活して、この幻夢郷(ドリームランド)が破壊されてしまいます。そうなれば、貴方達の住む世界だけではない、あらゆる世界が消滅してしまうのです」


「どういう事だ?」


「ここ幻夢郷(ドリームランド)は全てのパラレルワールドの起点となっています。この世界が破壊されれば、ワールドパラドックスが発生して、連鎖的に世界が消滅していく事になるのです」


「その、パラレルワールドやらワールドパラドックスとは何なのだ?」


「パラレルワールドってのは、あり得たかもしれない世界線の事だよ。例えば、君が生まれた世界が存在しているのと同時に、君が生まれなかった世界が並行して存在しているんだ。枝分かれした樹木を想像すればいい」


 レミリアは虚無僧の側に近寄って、虚無僧の問いに答える。


「にわかには信じられんな」


「世界には君の知らない事は無数にあるんだよ。そんでもって、ワールドパラドックスだけど、世界軸を遡ってその世界の出来事を改変した結果、その先の世界に矛盾をきたすことを指すんだ。つまり、全ての世界の起点である幻夢

(ドリームランド)を破壊されてしまえば、その先の世界全てが無かった事になる」


 レミリアの説明を聞き、虚無僧は納得したのかそれ以上追求することは無かった。


「あ、あの、私たち以外にこの世界に連れてきた人はいないんですか? 正直、どうして私が呼ばれたのか、よく分からなくて……」


 マンチニールは不安そうな顔でノーデンスに尋ねた。


「はい。私は今、楔の維持と防衛にほぼ全ての魔力を費やしています。楔のそばを離れることも出来ません。ですから、全ての並行世界の中から、最も力ある貴方達を選抜してここに呼んだのです」


 マンチニールは何か言いかけようとするが、何も言わずに俯いてしまった。


「あ、あの、その楔っていうのはどこにあるんですか?」


 ハインケルは手を上げて尋ねた。


「楔はこの城そのものです。楔自体が簡単に壊れてしまわないように、そして、常に私が管理出来るよう、この形にしました」


「はあ、神様ってのはなんでもアリなんだねえ」


 ナキはため息交じりにそう言った。


「説明は以上です。貴方達には、この楔を守るのと同時に、眷属たる旧支配者の打倒をお願いしたいのです。この戦いが終われば、元の世界に皆さんを送り届けることを約束します。どうか、私に力を貸してください」


 ノーデンスはそう言うと、七人に向かって頭を下げる。


「俺らの世界が危ねえなら、答えはイエスに決まってるだろ! それに、レディの頼みは断っちゃならねえって、爺ちゃんに教わったからな!」


 ケイトは一歩踏み出して、力強くそう言った。


「はあ。悪魔の次は邪神とか……ほんと笑えないわ」


 渚はため息をついて、皮肉交じりにそう言った。


「アンタは協力しないのかい?」


 ナキは渚を見て尋ねる。


「どう考えたって協力する以外の選択肢なんて無いでしょ、世界がかかってるんだから。そう言うあんたは?」


「もちろん、協力する。世界を壊されるなんてたまったもんじゃ無いからね」


 ナキは動じることなくそう答えた。


「頼もしい限りね。で、そこの虚無僧さんは?」


「構わん。拙僧は行く当てもない根無し草だからな」


 虚無僧は先ほどと変わらない落ち着いた口調で答えた。


「レミリア、協力してくれますね」


 ノーデンスはレミリアを見て尋ねる。


「拒否権が無いようなもんじゃないか、あんたはいっつもそうだよね」


 レミリアは呆れながらそう言うと、ハインケルとマンチニールの方を見る。


「そこの少年少女、君達はどうするんだい?」


「あ、はい。それしか僕たちが助かる道が無いのなら、僕も協力させて頂きます」


「あ、あの、私、戦いなんてしたこと無いんですけど、本当に大丈夫でしょうか?」


「大丈夫さ、危なくなったら私を呼べば良い。それに、君もあいつに選ばれてここに呼ばれているんだ。きっと何か、君にしかできない役割があるはずさ」


 レミリアは諭すようにマンチニールにそう言った。


「皆さん、ありがとうございます。では、夜までしばしの休息を。また後ほど、皆さんにお声掛けさせて頂きます。では、夜にまた会いましょう」


 ノーデンスはそう言い残して、ゆっくりと煙のように広間からいなくなった。


「全く、人使いが荒いのは昔から変わらないね、あいつは」


 レミリアは溜息をつきながらそう言った。

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