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クロス・フェイト  作者: うみち
第一章 世界終末1
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集合

 城の最上部にある大広間。中央には円形の台座があり、その上に直径一メートルほどの透明な水晶玉が浮いている。広間の中は色とりどりのクラゲが宙をユラユラと漂っており、時折クラゲ同士がぶつかると淡く発光して、また

ユラユラと漂い始める。


「もうすぐ彼らが来ます。これでようやく揃いますね」


 水晶玉をじっと見つめていた一人の少女がポツリと呟いた。


 少女の身長は百四十センチ前半で、膝まで伸びる綺麗な白髪に水色のティアラをつけている。金色の瞳に整った顔立ち、胸元に水色のリボンがついた白いローブを纏っている。


「彼らって?」


 部屋の隅の椅子に腰掛け、本を読んでいた少女が顔を上げずに問いかけた。少女の身長は百五十センチほどで、黒絹のような髪は肩ほどで綺麗に切り揃えられている。フレームの細い眼鏡をかけており、白いワイシャツに紺のブレザーを着て、紺のスカートと黒いニーソックスを履いており、黒のローファーを穿いている。


「あなたたちと同じく、この地に私が呼び寄せた者です。そう警戒しないでください、渚」


 渚と呼ばれた少女はジロリと白髪の少女を睨む。


「警戒するに決まってんでしょ。突然こんなわけわかんないとこに連れてこられてんだし。そもそも、私はまだあんたの名前すら教えてもらってないんだけど?」


「すみません、全員が揃ってから詳しいお話をしたかったんです」


 少女は申し訳なさそうに微笑みながら答えた。


「アッハハハ! あの頃の威厳はどこ行ったのさ? そんなんじゃ、誰にも信用してもらえないよ」


 広間の天井付近で寝転がるようにして宙に浮いている少女が、頬杖しながら皮肉交じりにそう言った。ブカブカの黒いハットを被り、黒いローブを纏っており、唇には紫の口紅を塗っている。


「レミリア、あなたの口の悪さは相変わらずですね」


 少女はため息交じりにそう言った。


「そこの魔女っ子さん。あんた、そこの白い子と知り合いなの?」


 渚はトゲのある口調でレミリアに問う。


「そーだよ。昔は一緒にやんちゃしたもんさね」


「なら、そいつの名前くらいは教えてよ。正直、あんたもそいつも気味悪いったらない。どういう原理で浮いてるわけ?」


「あいつが自分で言うまで待って欲しいって言ったのに、私が教えるのは野暮ってやつだよ。あとこれはただの魔法だよ魔法。厳密に言うと、空間に満ちてる魔力を私の体の回路に通して行使してるんだけど……」


「あーー、もういい、分からないってことだけは分かったからもう何も言わなくていい」


 あらそう、とレミリアは意地の悪い笑みを浮かべて言った。


「はあ。で、あんた達は? あそこの魔女っ子さんと同じくファンタジーな世界から連れてこられたわけ?」


 渚は向かい側の椅子に座っている少女と少年に話しかけた。


「あ、えっと、私はその、ふぁんたじい? っていうのはよく分からないけど、ああいう人は初めて見ました」


 少女はたどたどしい口調でそう答えた。薄緑色のショートヘアに透き通るような緑色の瞳、黄緑色のワンピースを着ている。


「僕は何度か魔女を見たことありますけど、彼女ほど魔力の濃い魔女は見たことないです」


 少年は少しだけ怯えたような声でそう答えた。髪は雑に伸ばされていて前髪で目は隠れている。ボロボロの白いワイシャツとジーンズを身に付けており、見るからに貧困そうな雰囲気を醸し出している。


「あー、そこの女の子はいいとして、そっちの男の子は見たことあるわけ? 魔女を? 魔法とか?」


「あ、はい。僕も素人レベルですけど一応使えます」


「はあーーーー。ほんと、魔法だとか魔女だとか私の理解の範疇を軽く超えすぎてることが、どうして常識みたいに話されてるわけ」


 渚は頭を抱えながら俯いて呟いた。


「そこの僕、魔女を見たことあるって言ってたけど本当かい?」


 レミリアは少年の側に近寄って尋ねた。


「あ、はい」


「ほうほう、それで、私より魔力の濃い魔女を見たことないってのも本当かい?」


「は、はい。正直、あなたほど高位の魔女が存在しているとは思っていませんでした」


 少年は怯えながら答える。


「そうかそうか! いや〜、やっぱり見る目がある人間には分かるんだね私の偉大さが! 君、名は何というんだい?」


 レミリアは少年の言葉に機嫌を良くしたのか、ハイテンションで尋ねた。


「あ、ハインケルです」


「ハインケル。ふむふむ、良い名だ! 見る目のある君にはこの私特製の万能薬を授けよう!」


 レミリアはそう言って指を鳴らすと綺麗な小包が出現し、ハインケルに手渡した。


「あ、ありがとうございます」


「良いんだよ! 君と私の中だ! そこのお嬢さん、お名前は?」


「え? わ、私ですか?」


 少女は突然レミリアに話しかけられ動揺する。


「君以外にいないだろう? お名前は?」


「えっと、マ、マンチニール、です」


「マンチニール……。ほう、なるほど。それでそんな特殊な魔力を帯びているのか。納得したよ!」


 レミリアはうんうんと頷きながらそう言った。


「ちょっと待って。今、魔力を帯びてるとか言わなかった?」


「言ったよ? それが何か?」


 当然だと言うような顔でレミリアは答える。


「その子は普通の女の子じゃないの?」


「アッハハハ! 違う違う! この子は人間じゃないよ、樹木の精霊だ。ある意味では私なんかより高位の存在さね!」


 マンチニールは顔を赤らめながら俯き、渚は唸りながら再び頭を抱える。


「それに、君だってファンタジーな力を持ってるじゃないか」


「はあ? 何それ、どういう意味?」


 渚はレミリアを睨みながら問う。


「しらばっくれても意味ないよ。君からは私がいっちばん嫌いな匂いがプンプンするからね。正確には残り香って言った方が正しいかな?」


 レミリアがそこまで言うと、渚は勢いよく立ち上がり、鬼の形相でレミリアを睨む。


「あんた、冗談抜きに殺すわよ?」


 渚は殺気の籠った声でレミリアに言い放つ。


「フフ、良い顔をするじゃないか。あいつに選ばれるだけのことはあるね」


 レミリアは不敵な笑みを浮かべながらそう言った。


「レミリア、からかうのはやめなさい」


 白い少女はレミリアに向かって静かに注意する。


「ハイハイ。悪かったね、お嬢さん」


 レミリアは素直に謝ると天井付近に浮かんで行った。


「あの、レミリアさん」


「なんだい少年?」


「レミリアさんは僕たちがなぜここに呼ばれたのか知っているのですか?」


 ハインケルは少し怯えながらエミリアに問う。


「ん〜、まあ、大体の想像はついてるかな。私を呼び出すってことは、つまりはそういうことだろうから」


 ハインケルとマンチニールは、エミリアの答えに不思議そうに顔を見合わせる。


「おっと、お待ちかねの客人が来たよ」


 エミリアがそう言った瞬間、広間の扉が開かれナキとケイト、虚無僧が入って来た。


「連れて来たよ、これで全員だな?」


「ええ、ありがとうございます、ナキ」


「すっげえな! 城の外も中も見たことないくらい綺麗だったけど、ここはそれ以上に綺麗だな!」


 ケイトは広間を見渡して大声で叫ぶ。


「今度はスチームパンクのコスプレ男に虚無僧とか……さらに訳がわかんなくなってきた」


 渚は椅子に座って項垂れながら呟いた。

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