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クロス・フェイト  作者: うみち
第三章 英雄譚Ⅱ ––ナキ––
16/21

「あいつら、アタシらの島を奪うつもりか? 人間のクセに、アタシら竜の島に踏み入るとは良い度胸してるじゃないか!」


 ナキは指を鳴らしながらそう言うと、セリーネ達の進行方向に先回りするため、翼を広げ、木々の間を縫うようにして飛ぶ。


 セリーネと騎士達は草木が鬱蒼と生い茂った森を進んでいく。


「セリーネ様、迷わず進んでいますが、ここには何度か訪れたことがあるのですか?」


 一人の騎士が躊躇すること無く進むセリーネに向かって問いかけた。


「いえ、一度だけ西方遠征の際に立ち寄っただけです」


「西方遠征といえば確か、早々に竜の襲撃を受けて失敗したんでしたよね?」


「ええ。ここキプロス島の海岸で野営していた隊の九割が、竜の群れの襲撃により殺されました。なので、今回は大隊での調査ではなく、中隊での隠密調査になったんです」


「セリーネ様はその西方遠征に参加していたんですよね? どうやってその場を生き延びたんですか?」


 騎士は上機嫌でセリーネに問う。


「おい新兵!  “黄昏卿”って異名くらいは聞いたことあんだろ? セリーネ様は夕暮れ時に戦闘能力が普段の何倍にも増幅する、特殊な魔力を持ってんだよ」


 後ろで話を聞いていた別の騎士が、セリーネに問いかけていた騎士にそう言った。


「え⁉︎ セリーネ様が、あの“黄昏卿”なんですか⁉︎」


「その呼び方はあまり好きじゃないんです。––––⁉︎」


 セリーネは静かにそう言うと、急に立ち止まり、周囲を見回す。


「セリーネ様、何か?」


「大気の魔力が微かに震えています。近いです」


 セリーネはそう言うと、腰の剣を抜く。強い風が吹き、木々の葉を揺らす。


 数秒後、前方から巨大な炎弾が高速でセリーネ達を襲う。


「全員退避!」


 セリーネは叫びながら炎弾を手に持つ剣で両断する。


「退避だ! 退避!」


 騎士達は一斉に、進んで来た道を走って戻る。二発、三発と炎弾は容赦無くセリーネ達を襲う。


 セリーネが刀身に魔力を込めると、刀身は茜色に発光する。


「はっ!」


 炎に向かってセリーネが剣を振るう。刀身に収束していた魔力が、茜色の斬撃となって放たれる。斬撃は炎弾を全て搔き消し、周囲の木々を斬り倒す。斬り倒された木々が倒れ、土や埃が空中に舞い上がり、大きな土煙が発生した。


「まだまともな調査も出来ていない状況で襲撃されるとは、間が悪いですね」


 セリーネはそう言って溜息をつく。


「セリーネ様、退避を!」


 一人の騎士がセリーネを呼ぶ。


「ええ、分かっています。すぐに行き––––」


 撤退しようとしたセリーネは、炎弾が飛んで来た方向を見て体が固まった。


 土煙ではっきりとは見えないが、人の形をした何かが、セリーネをじっと見つめていた。


「人が、人がいます!」


 セリーネは指を差しながら大声でそう言って騎士の方を見る。


「何言ってるんですかセリーネ様! こんな島に俺ら以外に人間がいるわけないでしょう⁉︎」


 騎士はそう言ってセリーネの側に駆け寄る。


「でも、確かにあそこに! ……あれ?」


 セリーネが再び視線を土煙の方へ戻すが、先ほどまでいた人影はすでに無かった。


「そんな、確かにあそこに……」


「とにかく、今は撤退しましょう!」


 セリーネは渋りながらも、騎士達と共に海岸へと撤退した。

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