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「あいつら、アタシらの島を奪うつもりか? 人間のクセに、アタシら竜の島に踏み入るとは良い度胸してるじゃないか!」
ナキは指を鳴らしながらそう言うと、セリーネ達の進行方向に先回りするため、翼を広げ、木々の間を縫うようにして飛ぶ。
セリーネと騎士達は草木が鬱蒼と生い茂った森を進んでいく。
「セリーネ様、迷わず進んでいますが、ここには何度か訪れたことがあるのですか?」
一人の騎士が躊躇すること無く進むセリーネに向かって問いかけた。
「いえ、一度だけ西方遠征の際に立ち寄っただけです」
「西方遠征といえば確か、早々に竜の襲撃を受けて失敗したんでしたよね?」
「ええ。ここキプロス島の海岸で野営していた隊の九割が、竜の群れの襲撃により殺されました。なので、今回は大隊での調査ではなく、中隊での隠密調査になったんです」
「セリーネ様はその西方遠征に参加していたんですよね? どうやってその場を生き延びたんですか?」
騎士は上機嫌でセリーネに問う。
「おい新兵! “黄昏卿”って異名くらいは聞いたことあんだろ? セリーネ様は夕暮れ時に戦闘能力が普段の何倍にも増幅する、特殊な魔力を持ってんだよ」
後ろで話を聞いていた別の騎士が、セリーネに問いかけていた騎士にそう言った。
「え⁉︎ セリーネ様が、あの“黄昏卿”なんですか⁉︎」
「その呼び方はあまり好きじゃないんです。––––⁉︎」
セリーネは静かにそう言うと、急に立ち止まり、周囲を見回す。
「セリーネ様、何か?」
「大気の魔力が微かに震えています。近いです」
セリーネはそう言うと、腰の剣を抜く。強い風が吹き、木々の葉を揺らす。
数秒後、前方から巨大な炎弾が高速でセリーネ達を襲う。
「全員退避!」
セリーネは叫びながら炎弾を手に持つ剣で両断する。
「退避だ! 退避!」
騎士達は一斉に、進んで来た道を走って戻る。二発、三発と炎弾は容赦無くセリーネ達を襲う。
セリーネが刀身に魔力を込めると、刀身は茜色に発光する。
「はっ!」
炎に向かってセリーネが剣を振るう。刀身に収束していた魔力が、茜色の斬撃となって放たれる。斬撃は炎弾を全て搔き消し、周囲の木々を斬り倒す。斬り倒された木々が倒れ、土や埃が空中に舞い上がり、大きな土煙が発生した。
「まだまともな調査も出来ていない状況で襲撃されるとは、間が悪いですね」
セリーネはそう言って溜息をつく。
「セリーネ様、退避を!」
一人の騎士がセリーネを呼ぶ。
「ええ、分かっています。すぐに行き––––」
撤退しようとしたセリーネは、炎弾が飛んで来た方向を見て体が固まった。
土煙ではっきりとは見えないが、人の形をした何かが、セリーネをじっと見つめていた。
「人が、人がいます!」
セリーネは指を差しながら大声でそう言って騎士の方を見る。
「何言ってるんですかセリーネ様! こんな島に俺ら以外に人間がいるわけないでしょう⁉︎」
騎士はそう言ってセリーネの側に駆け寄る。
「でも、確かにあそこに! ……あれ?」
セリーネが再び視線を土煙の方へ戻すが、先ほどまでいた人影はすでに無かった。
「そんな、確かにあそこに……」
「とにかく、今は撤退しましょう!」
セリーネは渋りながらも、騎士達と共に海岸へと撤退した。




