終わり、そして始まり
「いつ見ても綺麗・・・・・」
午前0時。とある高校の屋上で、1人の少女がそう呟いた。目前の光景とそれを見つめる少女の様子は、どんな名画にも勝る程、美しかった。
屋上に立ち、高校の制服に身を包む少女。微風で揺れる少女の長い黒髪。罅割れた空。そこから落ちていく黒い破片。その破片によって割れ、崩れる大地。
壊れていく、世界。
普通、世界が崩壊する所を目の当たりにすれば、恐怖し、何も言えずに立ち竦むか、悲鳴をあげ、逃げ出すだろう。とても落ち着いていられる状態ではない。ましてや綺麗なんて言わないだろう。
では何故、少女は綺麗と言ったのだろう。その答えは空にあった。
崩れていく空でそれは、幻のように霞んで存在した。
紅い朧月。
それが少女を魅了し、綺麗と言わせた。普通じゃありえない、紅い朧月。それが、世界を『破滅』へと導いている。
そして、少女は知っている。紅い朧月の正体も、何故、朧月が現れたのかも。
―この『破滅』を止め、世界を救う方法も。
少女は制服のスカートのポケットからあるものを取り出した。少し古びた黄金色の金属・・・・・鍵だ。
「綺麗だけど、世界は壊させない」
少女は鍵を天に翳し、言った。
「転生」