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田園奇譚  作者: のすけ
7/8

犬が何度も吠えると、その度に突風がむせぶような音が辺りに響きました。


「サーベラス。静かに」

と優しく言って花井先生は、その恐ろしい異形(いぎょう)の犬に向かって微笑まれました。


サーベラス、と呼ばれた黒い三つの頭を持つ犬の姿はとても怖いのだけど、

まるで縄みたいな尻尾をしきりと振って、

花井先生に会えたことをとても喜んで甘えているようでした。


しかも目を凝らすと、犬のその尻尾は赤い舌先をチロチロのぞかせた蛇なのです。

犬は興奮しているようで(よだれ)が地面にこぼれ、

雫が落ちたその場所からは緑の茎が伸び出して、瞬く間に何かの植物が生まれました。


それは毒草のトリカブトでした。


「いけませんよ」

と、花井先生は言うと地面に生まれたその毒草を摘み取りました。

トリカブトは先生の手の中で白い花びらに変わって、風に(すく)われるとすぐに消えて行きました。


今はもうすっかり苦しさが癒えて正気を取り戻した私に、花井先生は言われました。


「これでもうお会いすることはできません。でも、どうかお元気でね。皆さんとのことは忘れません」


そして、まるで宙に踏み出すように歩いたかと思うと、

花井先生と男の人と、3つの頭を持つ黒犬の姿は跡形もなく消えたのです。


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