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田園奇譚  作者: のすけ
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その時、

「やめて。ハデス」と声がして、花井先生が忽然(こつぜん)と目の前に現れました。


「私はここにいます」先生は(りん)とした声で言いました。


「探したぞ」

男の人は柔らかい表情になって目を細め、花井先生に向かって言いました。



途端に、私を縛り付けていた胸苦しさと凍るような寒さが一瞬にして解けました。


「私たちの国へ母を送り届けて来ました。緑豊かなこの土地を離れがたくて、(しばら)くの間あなたの目をくらませていました」

花井先生が、ハデスと呼んだその男性に話しています。


「もう冬が来る。契約の時だ」

ハデスは深い声で静かに、心なしか先生に言い聞かせるように言いました。


「もう少しここにいたかったわ。でも承知しています。すぐに参ります」

花井先生は答えると、呆然としている私のそばに寄り、優しく肩を抱いて支えてくれました。


抱きかかえられているうち、安心と暖かい心地に充たされて体が楽になりました。


「辛い目に遭わせましたね。もう大丈夫ですよ。先生は今度、この方と一緒になることに決まったのよ。

でもすぐに、ここを離れなくてはならないんです」


そう言われた先生の瞳はまるで星を宿したように金色に見えて、

今は髪も黒髪でなく、波のように金色になびいて光り輝いていました。

お顔も、これまで知っていたはずの先生のお顔とは違って神々しく、直視できないほどに美しく見えました。


あの黒い犬が無邪気に先生にすり寄っていました。

犬の瞳は金色で、心なしかその顔つきも笑っているように見えました。


気がつくと黒い犬も今はその姿を変貌させていたのです。


金色の瞳のその頭の隣には淡い水色の瞳をした頭があり、

そしてさらに、紅蓮(ぐれん)に光る瞳を備えた頭がありました。


黒い犬には3つの頭が生えていて、

そして3つとも違う顔つき、違う色の瞳をしていたのです。





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