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寒風が吹き出した頃、また噂が流れてきました。
「また出たよ」
「外人の男の幽霊」
「犬を連れてた。今度は真っ赤な怖い目をした犬だよ」
その日は、ここから離れた街で殺人事件があり、
犯人と思しき男がこの村に逃げ込んで来たかもしれないと役場や学校に伝えられ、
村は警戒する空気に飲み込まれていました。
私の住まいは森に近いところにあったので、
恐ろしくて授業が終わると途中まで数人の友人と一緒に帰宅したのですが、
いよいよ私一人の道のりに差し掛かり、足早に歩いていました。
森の方をチラチラと伺いながら歩いて行くと、
森の少し奥からぼうっと白い光が見えました。
何かいる。
人影と、しきりと動くもう1つの黒い影がはっきりと目に飛び込んで来ました。
あの人だ。
以前に一度遭遇した、あの背が高い外国人風の男の人と黒い犬に違いありません。
私は恐ろしくて、走って逃げ出そうとしていたはずが、
いつの間にか吸い寄せられるように近づいていました。
犬は吠えながら、宙を飛ぶひょろ長い青白い光を追い回しています。
吠えながら、そうやはり犬の吠える声がまるで風の激しい唸りのように、轟々と聞こえます。
犬の目が真っ赤に光って、怒っているようにも見えます。
青白い光は必死に犬から逃げているようでした。
が、黒い犬はついにそれに飛びついて咥えると、
一息に吸い込むように飲み込んでしまいました。