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田園奇譚  作者: のすけ
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その年の夏も終わりの頃になって、村で不思議な噂が流れ始めました。

夕方、まさに陽が落ち切ろうとする時間に、黒い犬を連れた色白で背の高い、

美貌だけれど、どこか人間離れした男の人が現れるというものでした。

男の人は黒髪だけれど、外国人なのか瞳は紫がかって見えたとか、

連れている黒い犬の目が金色に光っていた、という噂もありました。


「僕も見た。その男の人」

「黒い犬を連れた人でしょう」

「そう。水色の目の犬」

「水色、そんな犬いるの」

「金色じゃなくて」

「いや、水色だった」


男の人は、ある時は何をするでもなく、田んぼの中にじっと立っていたという話であったり、

森の中から歩いて出て来たという話もありました。

けれど、近づいたり会話をしたりしたと言う話は聞きませんでした。


でも、冬の訪れを待つ頃になったある時、

友人の家からの帰り道に、私は一軒の家の前で背の高い人影を見かけたのです。

その時、もしかするとこの人が噂の男の人かな、と思いました。


その人は黒い犬を連れていました。

かなり大きな犬です。

その犬には首輪も鎖も見当たらないけれど、大人しく従順に男の人のそばにいました。

だんだん近づくと、男の人は見上げるように背が高くて、

柔らかくうねった艶やかな黒髪でした。

白いシャツに黒いズボンを履いて、ズボンにはベルトでなく黒い帯のようなものを腰に巻いていて、

もう晩秋の風も冷たいというのにのに、靴も履かず白く骨ばった素足で地面を踏みしめていました。


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