別れ
翌日ボクは電話で光を講演に呼び出して東京に引っ越すことを話す。
「えぇ!? そんな!」
光は驚いて大きな声を上げる。
「ホントなの?」
「うん」
ボクは申し訳なさそうに頷いた。
「「……」」
双方何を言えばいいかわからず、互いに見つめ合ったまま沈黙。
そんな状態が一分程続いた。
この沈黙の時間はとても長く感じる。
たかが一分と言われるかもしれないが、なんだかよく分からない空気に包まれた空間は通常よりもゆっくりと時間が流れている気がした。
そんなんだから実際の時間は一分だけど、ボク達の体感時間は十分ぐらいに感じた。
「……元気でね」
先に沈黙を破ったのはボクだった。
「のぞみクンも」
そしてそれに光も反応する。
「それじゃあ」
必要最小限の別れの言葉で終わってしまう。
これが切っ掛けで光の付き合いは終わってしまったが、彼と過ごした日々はボクにとって素敵な思い出となり現在に至る。
◇
これがボクと光君の出会いと別れの一部始終だ。
光君と過ごした時間は一年程と、あまり長くはないのだが、ボクにとっては充実した一年間だった。
今まで生きてきた十五年の中で最も幸せな時期だと断言してもいい。
端から見られたら 『それは幻想だ』 とか 『ちょっと美化してるんじゃない?』 なんて言われるかもしれないが。
誰が何と言おうとボクは幸せだった。光君がいたから充実していた。
だから光君と離れ離れになって以降、どんなに嬉しいことや楽しいことがあっても霞んで見える。
光君がボクに生き甲斐を与えれくれる存在。
彼がいなくては駄目なんだ。それは離れ離れになってつくづく感じた。
そんな背景があってか、高校進学を切っ掛けに三重の学校を進学校に選んだ訳。
それに高校生にもなれば一人暮らしもできると思ったからだ。
なお、このことはママは納得してくれた。しかしパパは猛反対してきた。
ボクのパパは親バカなのだ。
だが、ボクの意思は変わらない。
パパの反対を押し切って三重の学校の学生寮で一人暮らしすることに。
そしてなんやかんやで三重に。
どうでもいいことだが、ボクが三重に行く時に見送りに来たパパは大泣きして見送ってくれた (汗)
さて、話が横道に逸れまくったので、次のお話ではそろそろ本編に戻すか (笑)