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出会い


 それでは昔話を少々。

 

 光君との出会いは十年前に遡る。

 当時幼稚園生だったボクはパパの転勤で三重にやって来た。

 パパの仕事の都合とはいえ、はっきり言って乗り気じゃなかった。

 何故なら、都会から田舎に移り住むなど馬鹿げたことだと考えていたからだ。


 この頃のボクは東京以外の都道府県はみんな田舎だと小馬鹿にしていた。

 性格もエリート意識の強いタカビーなヤツであった。

 過去の自分ではあったが、はっきり言って嫌なヤツだ。

 それも絵に描いたような嫌なヤツ。 ……いや、嫌なヤツを具現化したような存在と言っても過言ではない。

(自分のことだが、思い出したらムカムカしてきた!)


 そんなんだから幼稚園でも馴染めないで孤立。

 態度も悪かったこともあり、クラスメートからのイジメも受けた。

 正直、自業自得と言わざるを得ない。


 しかし当時のボクはまったく反省せずにパパやクラスメートが悪いと逆恨みした。

 また、それと同時に解決策も考えた。


 とは言っても当時五歳児のボクに解決策が思い付く訳もなく、一人公園のすべり台に座った状態で悩み黄昏ていた。


 だが、そんな時。


「ねぇ」

「おわっ!?」

 いきなり背後から声をかけられたので、ボクはとても驚いた。

 おまけに変な体勢ですべり台から滑り合ちる。


「ふんぎゃあ!」

 その状態のまま顔から砂場に着地 (?)

 第三者的目線で見た場合、とんでもなくカッコ悪い姿を晒してしまったと言える。


「パッパッ!」

 顔についた砂を両手で払いとる。

 そして砂を払い落とすと……。


「なにするんだよ!」

 ボクは怒ってソイツを睨み付けた。


「ごめん、ごめん」

 文句を言うとソイツは直ぐに謝った。

 しかし謝り方がかなり軽いかんじだ。


「まあいいだろう」

 腕を組みつつ、ボクはぷいっとそっぽ向いた。

 端から見るとなんと偉そうな態度なんだろう。

 こういった偉そうな態度も、当時のボクに友達がいなかった原因の一つだろうな……。


 しかし、なんやかんやで許すあたり、幼稚園生の素直さは少なからず持っていたようだ。


「じーーーーっ」

 さて、事が一段落 (?) するとソイツの姿をじーっと見詰めた。

 服装はTシャツに短パン。髪型は短髪の金髪。顔つきはきょとんとしていた。


(男の子か……)

 ソイツが男の子だと分かると、ボクは少し嫌な顔になった。

 何故なら、この頃のボクは 『男は女に劣る存在』 と考えていたからだ。

『女=男より優れている』 という極端な女性優越思考の持ち主であった。

 要するに、基本的に男を見下してた訳だ。


 そんなんだから差別的な発言は日常茶飯事。

 そのことで男子ともよく揉めた。


 無論ソイツのことも見下したような目で見た。


「?」

 けれどもソイツはボクのそんな心裏に気づくことなく、きょとんとした表情でクエッションマークを浮かべていた。


(コイツもしかして頭悪い?)

 正直この男の外見的に頭良さそうな顔ではない (ただし、極端に頭の悪そうな容姿でもないが……)

 なんて考えていたが……。

 

「ハッ!」

 忘れていたことを思い出す。

 それは……。


「ところでオマエは誰だよ!」

 ソイツをピッと指差す。

 そう。ソイツが誰なのかという問題だ。


「僕ですか?」

 指差されるとソイツは自分の顔を指差して質問する。


「そうだよ!」

 状況の分かってないソイツにちょっとムカつきつつあった。

 そんなんだから口調も乱暴になり気味。


「名乗れよな!」

 この頃のボクの喋り方の荒いこと荒いこと。これじゃあ乱暴な男の子もいいところだ。

 幼稚園の組でも男子から 『男女』 と呼ばれていた (個人的に嫌な思い出の一つ)


「僕の名前ですか?」

「そうだよ!」

 話しているとつくづく要領の悪い男だ。

 同い年ぐらいなのにとても鈍臭い。ハキハキしているボクとはえらい違い。


「え~と……僕の名前は青葉光あおばひかるです」

「ふ~ん。青葉光ねぇ……」

 聞いた瞬間冴えない名前だと思った。

 まあ、名前=その人のイメージという訳ではないけどな……。


「で、キミの名前はなんていうの?」

「ボクか?」

「うん」

 光はコクリと頷く。

「ボクの名前は浅間のぞみ」

「浅間のぞみ……いい名前だね」

「そ、そうか?」

 光の予想外の反応にボクは若干しどろもどろ。

 何故ならボクは自分の名前が好きで誇りをもっていたからだ。

 そして名前のことで誉められたのは生まれて始めてだった。そのためちょっと嬉しくなってしまった。


「ねぇ、のぞみクン。一緒に遊ぼ」

「ああ、うん」

 光はボクのことを君付けで呼ぶ。

 どうやらボクのことを男の子だと勘違いしているらしい。


(こんなかわいい女の子を男の子だと勘違いするなんて、なんてヤツだ!)

 などと思ったが。当時のボクのヘアースタイルはショートカット (現在はロングヘアー)

 口調も男の子みたいだったし、更にはズボンを穿いていたのでボーイッシュな美少女だった。

 そんなややこしい恰好していたからボクのことを男の子だと勘違いするのも分からないことではない。


 そもそも、なんでそんな男の子みたいな恰好しているのか簡単に説明しますと。それには当時の流行背景があった。

 それはボクの幼稚園でスカートめくりが流行っていたのだ。

 無論ボクもスカートめくりの被害にあった。それまでスカートを穿いていたけど、スカートめくりされて以降はズボンを穿くようになった。

 そんなんだから元々ボーイッシュだったのが更にボーイッシュになっちゃった訳だ。


 説明終わり。


「ね、のぞみクン遊ぼ♪」

「わかったよ」


 第一印象は最悪だったが、光は気さくに接してくれた。

 そして公園で遊び始める。

 遊んでる最中にいろいろ聞いてみた。

 すると彼は隣町に住んでいて偶然公園に遊びに来てたらしい。

 その時に見たことないヤツ (ボク) を見つけたので話し掛けてきたとのこと。

 ただそれだけの理由……。


 でも、ボクが光でも多分同じことしただろうな…………。


 まあそれはともかく。

 正直言って光と遊ぶのはとても楽しかった。

 そんなんだから時間のことを忘れて全力で遊んでしまった (笑)

 結局、その日は夕方頃まで遊んだ。


「あ~~! 楽しかった♪」

「だな!」

 帰り道が途中まで同じだったので、ボクと光は一緒に歩いて帰る。


 第一印象最悪だったのに、帰る時間になるとすっかり意気投合していた。

 これもちびっ子特有の無邪気さか?


「のぞみクンまた明日も遊ぼうね」

 別れ際に光がそう誘う。

「ああ、もちろんさ」

 無論即答でOKした。

 それ以降、光と毎日遊ぶようになった。


 これが光君との出会いの経緯だ。

 次はどうして光君と離れ離れになったかの経緯をお教えします。



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