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「やはり、貴方でしたか……メトロ」
狂乱の街がようやく夜に抱かれた頃。闇の中に浮かぶ後ろ姿に、声を掛ける。
「どういう事です。最近の貴方たちのやり方は……目に余りますよ」
星明かりもない深い闇に溶けてしまいそうなほどの黒髪と、黒いローブをふわりと翻し、その人影は此方を振り向いた。
血のように深い赤色の瞳が、憂いを帯びて見つめる。
「この街に、未来はなかった」
悪意というよりもむしろ、深い悲しみを宿したような凪いだ声で、彼は言い放つ。
「幼い彼らは、この街では生きられない。仮に生き延びられたとしても……やがて、知ることになる。大人の欲と陰謀に塗れた、更なる地獄を」
彼は、美しい貌をゆっくりと上げ、黒く垂れ込めた空を仰ぐ。濡れ羽のように黒い髪が、さらりと後ろに流れる。
「一人逃した……でも、あとはみんな眠らせた。彼がこの街の真実を知ることは、ないよ。永遠にね」
「貴方はそれでよかったと……?ふざけないでください。貴方は、人間を軽んじている……彼を、復讐鬼にするつもりですか」
「……それも、いいかもね」
赤い双眸が、哀しげに細められる。
「彼なら、僕たちを救ってくれるかも」
思わず、右手を振りかぶった。しかし、拳が目の前の小綺麗な顔にめり込むより先に、彼の身体は黒い雲のようにふわりと歪み、風に紛れて消えてしまった。