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厚く広がる雨雲を見上げる人影。激しい雷鳴と共に大粒の雨が降り始める。来たかと呟きながら足元から魔方陣を展開する人影。声が高めなので女性だと思われる。そのまま上空に浮かんでいく。魔方陣が上にある範囲は雨が降ってこない。上で受け皿になって雨を受けてめているからだ。受け止めれる限界に近づくと丸く変形して水を包む。包んでいる最中にも受け皿の魔方陣は消えることなく存在し水をためている。視線を転じると広範囲で魔方陣が展開しているので雨が反射して幻想的な光景を作っている。この光景を作っている者達を水球師という。
元々気候が穏やかな自然環境の国だったが進歩していくうちに自然バランス崩れ天災が多くなっていった。特に豪雨・干ばつが猛威を振るうようになった。国は対策を急ぎ長期的な計画と短期的計画を打ち出した。長期的なものは自然を戻す事。短期的計画は水の操作にたけたものを集め雨水を貯めて貯蓄し干ばつ時に使用すると言うことだ。それ以来、水の操作の長けている者を排出し豪雨に備える国策かとられその者達を水球師と呼ぶようになった。
ギルドのベンチには大勢の水球師たちが順番待ちをしている。今は豪雨のシーズンだから多いのだろう。番号札を取り待ちながら勉強する。暴雨シーズンは3か月。そのなかで1年分の生活費を稼がなくてはいけないが、それを出来るのは一部の人間性だけ。それ以外は副業を持っているのである。私ー日村 優希もその例に当てはまる。去年採取の免許をコンプリートしてある程度余裕のある生活出来たが急な出費や体調不良で稼げなくなると大変だから貯蓄を増やしたいので今出来る資格を取る。薬草を採取出来るので初級の製薬を取るつもりである。軽い傷薬・軽い火傷の薬と保湿剤(つまり化粧水)傷薬・火傷は中級のほうが売れるが化粧水は確実に売れる。私が作るのは自分専用の化粧水だから確実に売れると思う。先ずは知り合いから試供してもらいクチコミを狙うつもりで、すでに先輩に頼んでいるから大丈夫なはずだ・・と捕らぬなんとやらを考えていると呼ばれる。
カウンターに行き水球が入った袋とライセンスカードを出す。ライセンスがないと買い叩かれたり逮捕される事もあるから重要だ。ついでに身分証明書にもなるし。
「縮小レベル2。耐久レベル5」ボソッというとわかりました。と奥に行ったので時間がかかると思い椅子に戻る。縮小レベルは25メートルプールの水をビー玉位にしたこと耐久レベルは水を貯めておけるレベルである。レベル1〜レベル10までありレベル1が数ヶ月。レベル10なら5年間位は保存出来る。私のレベルはまだまだ新人のレベルである。レベルが高いほど買い取り金額が上がるので頑張って腕を上げないと駄目だ。保水力をあげても圧縮が弱いと買い取り金額が下がってしまうので、目標はビー玉位でプール2杯くらい。それだと中級レベルと言うことで金額が上がるんだけどなー。参考書でも読んで魔方陣を改造するか魔力を上げるかどっちかなんだけどなー。魔方陣は弄れる所は全て弄ったから魔力を上げるほうが確実に上がりそうだな。少し鍛練するか。上限を上げる方法ってなんだっけ?考えていると査定が終わったようで呼び出された。
「うちのレベルでは2個しか買い取れません。一度中央で進級の審査を受ける事をおすすめします」言われてハア?と思ってしまう。そんなに強く掛けていないし。中級レベルじゃないと思うけど・・・職員さんが間違えること無いからな。一度行ってみるか
「わかりました。買い取り可能の物だけでいいです。手取り5万で後は振り込んで貰えますか?」
「わかりました」とてきぱきと処理してくれる職員さん。誰も大金を持ち運びたく無いよね♪っと言うことで、最近は振り込みメインなのだそうだ。5万だけ受け取り、書類にサインをして残りの15万は通帳へ。
施設内の検定所に寄り道して製薬免許初級を受ける事にした。検定所には色々な人がいる。大抵私と同じ年代の駆け出しさんが多いけど。私も駆け出し2年目の18才です。頭の良い兄とパッチリ目で甘え上手な美女の間に挟まれて育ったので、家族以外から要らない中傷(本人たちはそう思ってないかもだけど)を受けていたので基本的教育が終わったと同時に水球師になりましたけど何か?え。私の容姿?そんなこと聞いて楽しいですか?黒髪根暗のモブですよ。すれ違っても直ぐに忘れてしまう様な顔だから気にしないでくださいな。
さて、職員さんが「製薬免許初級のかたは小ホール2に」と言ってますから行きますか。小ホールには数人いる。目の前には様々な薬草を置いたテーブルと精製に必要な道具はがおいてますが明らかに必要無いものを置いてますね。何を選択するかも試験内容なんですね。さて、傷薬と保湿剤を作るのが課題ですか。じゃ、頑張りますか
傷薬に必要な薬草を選び刻み煮ます。ある程度煮詰まりましたら魔力を入れると何故か固まってくる。ちょうど良い感じの粘着力が出てきた所で止めて容器に詰める。道具を洗浄後、保湿剤用の薬草を数点を持ってこれも刻み煮詰める。薬とちがってこちらは濾して薬草をを取り除いて容器に入れて提出。魔力を込めなくても良い感じになるようにブレンドしているので保湿剤は大丈夫だろう。魔力を込めないの?っと言う顔をしている職員さんに一礼してからホールを出る。30分位に合否が出るからハラハラしなくてストレスにならなくて良い。予想した通り合格していたので、ライセンスに追加記入してもらうためカウンターへ。カウンターで魔力を込めない理由を聞かれたので、自分の魔力を込めれば効果がアップするので。と教えると後ろの職員さんの動きが凄かった事だけ報告します。女性はいくつになってもきれいでいたいですよね♪
用事が全て終わったので家路につこうとすると呼びとめらる。南部です豪雨予想が出たが、新人さんが上級者と折り合いが悪く誰も組んでくれない。どうしてもとお願いしたら私を指定してきた。と説明が。呼ばれるのは良いですが、私は期待される動きはできませんが?疑問に思いながらも稼ぎが多くなるなら別に良いかな?と軽い感じで受けたがちょっと後悔した。ついた先の転送門前には嫌な雰囲気。北部にあたるここの地域から出すのだから転送は当たり前。広範囲で長丁場っぽいのでチームを組むのは常識。私は一人のほうが効率的なので組まないけど。それでも熟練者は少人数で食料も薬も用意しているんだろうと言う参考にしたい装備をしている。私は急遽なので、保存食と水が少し不足していたからここで補給。序でに情報を貰いに先輩の元に行く。多分呼んだのは先輩たちだろうから。
金髪と茶髪がトレードマークの先輩方。金髪の方が心配性で茶髪が大雑把。でも仕事はきっちりしているから信用度が高い。熟練者と談話しているのを見つけて声をかけると驚かれた
「いつも言うが、声をかける前にそれを脱げ!気配がわからん」叱れたのでフードのみ脱いで頭を下げる。驚いていた熟練者も認識してくれようだ。
「こいつ人見知りで。これ(人避け)無いと外に出れないみたいなんですよ」と謝ってくれるので謝罪の意味を込めて眠気覚ましスペシャルを配る。ハーブ茶なんで薬には引っ掛からない。組んでれば誰かが入れてくれるから良いよね?と言うことでパックの方を。
「今渡しているお茶なんですが眠気覚ましなんで飲んでやってください。かなりきついので薄めてくださいね」注意点を伝えてくれる。ウム。いい人や♪
そんなことをしながら情報を聞くと夜半から朝方まででしかもかなりの水量とのこと。失速したらすみませんと先に謝ると大丈夫だろう。と励まされ転送門を通り指示された場所へ。
現地ではすでに降り始めようとしている雨雲か空を覆っている。ヤバイな。呟きながら古傷を擦っていると降り始めた。まだ先輩たちは配置に着いてないよね?大丈夫か?などと考えながら陣を発展する。少し広めに発展するのは、配置していないだろう先輩たちに配慮してだ。激しい雨のなか水球が数個出来た位に全員が配置した。と連絡が来たので陣をいつもの大きさにする。その後は、いつも通りに術を展開しながら食べたり飲んだりして過ごす。体力・精神力と共に脳みそも激しく動かしているから甘いものを摂取する。陣を発展する・水を貯める・水球にする。と言う作業は以外と計算能力を必要とするのだ。馬鹿じゃできない仕事なんだよ!
雨が止んだのは予定を2時間ほどオーバーした頃である。