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気が付けばハーレム勇者

記憶喪失が治ったらパーティーがハーレムになっていた勇者の物語です。

「はぁっはぁっ」


 目の前の四天王の斬撃を受けきった俺達2人は、既に息を切れ切れとして、体はボロボロの状態であった。


「お前たちの力はその程度か、魔王様が出るまでもない」


 その挑発に反応したのか、相棒が四天王に対し、最後の力を振り絞って奥義を繰り出す。


自己犠牲(ソウルサクリファイス)


 『自己犠牲』は、一回の戦闘で一度しか使えない、大変危険な技だ。

 自らの剣に生命エネルギーを注ぎ込み、剣の攻撃力を上げる――まさに自己犠牲という名に相応しい。

 これを扱えるのは、本当に優しい人のみらしく、俺にはそんな芸当、真似する事は出来ない。


「行くよ!! 『十刀』」

 剣を一秒間に十回斬りつける大業を繰り出し、周りが煙に包まれる。


「やったか!?」


 煙が収まった時、四天王が倒れ込んでいるのを発見出来るものかと思われたのだが。


「……クハハハハ!! 貴様の力はその程度か!!」


 期待は外れ、倒れるどころか傷一つ付いていなかった。

 それを見て、絶望に沈んだ相棒はその場で倒れ込んでしまう。


「クハハハハ!! ……つまらん、つまらんぞ。一気に仕留めてやる」


 四天王は手を上にカザして、呪文を唱え始めた。

 一刻も早く止めなければ、2人ともヤられてしまう。


「リン!!」


 相棒の名前を呼ぶも、既に性根尽きたのか、返事すら返って来なかった。


「くそったれ!!」


 俺は呪文を唱える四天王に突進を試みるも、四天王は少しこちらを見たかと思えば、


(フレア)

「くっ!!」


 最小限の炎魔法であしらわれてしまう。


「全く、キレイに倒そうとしてやっているのに、呪文を途中で途切れさせるで無いわ。また最初から唱え直さないといけないではないか」


 四天王はフゥ、とため息をつくと、呪文をもう一度唱え始めた。

 何とか止めなければ、と俺は特殊魔法『足枷』を発動する。

 この魔法は念じるだけで発動出来るモノだが、効果はというと相手を転倒させるだけという単純なモノ。バレたら全く効果は無い。ドラゴン○ールでいうところの太○拳ほどの価値しかない。

 だが、太○拳にだって使い道はある。

 その証拠に、


「ンギャ!!」


 四天王が前へとバランスを崩し、呪文を途中で中断せざるを得なくなったからね。

 呪文を唱える事に集中し、警戒を怠っていた四天王にだからこそ効く技、それが『足枷』だった。

(この隙に!!)

 倒れている相方に少しでも近付いて、相方だけでも逃げさせようとする。

 が。


「甘いな小僧! 双焔(ツインフレア)


 倒れたままの四天王が呪文を唱えた。 この軌道は俺に向かってじゃない、倒れているリンに確実に命中させに来やがった。

 くそ、間に合わねぇ!! このままだとリンが……!!


「リンッ!! 避けろっ!! 避けてくれええぇぇっ!!」


 俺の叫ぶ声も虚しく、リンは俺の目の前で炎の中に消えていった。

 それ以降の記憶は全く無い。何が起こったのかも分からない。


 何も、分からない。


 †×†


 あれからどれだけの間眠っていただろう。

 いや、違うな。

 多分、俺は死んでしまったんだろう。

 リンを亡くしてしまった相方としての宿命なのかもしれないな。

 むしろコレで良かったとさえ思うよ。リンを目の前で失った罪なんて、一生償う事は出来ないだろうし。


 死んで詫びる。これがリンに対しての最高の贖罪(しょくざい)だ。 とすると、俺に今宿っている感覚は一体なんだろうか。

 もしかして、死んだら天国に行けるってのは本当の話だったのか。

 いや、俺は罪人だから地獄で煮えたぎる溶岩に沈められるのが関の山か。

 どうにでもなれ、だ。

 俺は意を決して、重い重い(まぶた)をゆっくりと開いた。


「あ、目を覚ましたわね。ダーリン」

「人違いです」


 急いで視界をシャットアウトする。

 もしかして、夢の世界でサマヨってるのかな、俺。

 見ず知らずの女性が俺の顔を覗いてて、しかもダーリンなんて呼ばれるわけ無いしな、ハハ。

 まぁ、もう一度目を開けたら煮えたぎる溶岩が俺の目の前に鎮座している事だろう。

 薄ら薄らと、もう一度目を開ける。


「あっ、意識を取り戻したんですか、アナタ」

「人違いです」


 慌てて目に瞼を被せる。

 ダーリンの次はアナタ、か。


 うん、幻聴だな。


 先ほどと違う女性が俺の顔を覗いていたって事から察するに、俺は地獄に行くために色々な役所のような場所を転々としているのかもしれない。

 俺に甘い声をかけてくるのはその為だろう。更に俺に罪を上乗せするために釣りに来てるんだ。なんて下劣な奴らだ。

 ならば、もう一度目を開けたら巨大な針山が俺を待っている事だろう。

 そう信じ、待ちきれない思いを胸に、パッと目を開く。


「起きたね、僕の愛しの」

「人違いです」


 目をゆっくりと閉じる。何回もやってると次第に落ち着いて来るね。

 とりあえず、地獄に着くのはまだだったらしい。早とちり、のようだ。

 んで、また別の女性が俺の顔を覗いていたんだが……役所を何個通れば良いんだろうか。そろそろ面倒になってきたんだが。

 良く考えたら、俺は死んでしまったんだし、これ以上罪を被っても同じか。

 よし、次はちゃんと対応する事にしよう。そうしなければ、無限ループに陥る可能性が高い。

 という訳で、億劫だがもう何回目になったか、目を開く作業を機械的に行う。


 すると、そこには先ほどの3人が俺の顔に唇を寄せようとする姿があった。


「どわっ!?」


 慌てて後退ろうとするも、ベッドの上だったらしく、頭を木の壁にぶつけてしまう。

 くそ、閻魔大王の手下め、なんて体を張った事をしてきやがるんだ。そこまでして俺を極刑に下したいのか、そうなのか。

 やっぱりこんな誘惑に負けてはならない。さぁ、ショータイムだ(?)

 俺は魔法カード、『足枷』を発動。閻魔大王の手下Aを転かせる。魔法カード、『足枷』を発動。閻魔大王の手下Bを転かせる。魔法カード、『足枷』を発動。閻魔大王の手下Cを転かせる。

 すると、何という事でしょう。3人とも俺の顔めがけて落ちてくるではありませんか。

 マイ、ガッ!

 そうして、俺の顔には3つの肉付きの良い唇――――ではなく。

 固い固い頭蓋骨が空から降ってきたのでした。

 トリプルヘディングぁぶはっ!!


「だ、大丈夫かしら? マイダーリン」

「お、お怪我はありませんか? あなた」

「唇とか切ってないかな、僕の愛しn」

「大丈夫です」


 そりゃあ痛いには痛いよ? でも死ぬほどじゃない。いや、俺は既に死んでるから……。

 何だ? 何やら違和感を感じる。


「あのぅ、スイマセン。今って地獄まで後何時間程度の場所に居ます?」

「じごくー? 何を言っているんだ、僕の愛s」

「答えて下さい」

「酷い……グスグス」


 とまぁ、とりあえず僕っ子に退場してもらって、残りのクーデレと新妻(形式上そう呼ぶ事にする)に焦点を合わせる。

 何で僕っ子を排除したかって? 知らん、何故か体がそうしろと命令を下したのだ、云々。

 そうして、クーデレに同じ質問をしてみたところ、


「地獄歴2020年、燃えたぎる溶岩や針山を耐え、地獄から自力で這い上がった一人の青年が居た。それが」

「あ、もう良いです」

「ふふ、話はこれからよ、マイダーリン。ココから始まるマイダーリンと私の、愛とロマンスの長編スペクタクルが」

「いや、本当に良いです」

「つれないわね、そういう態度。嫌いではないわよ」


 じゃあ何が嫌いなんだと聞きたい所だが、素直に引いてくれたので良いとしよう。出来れば問題に答えて欲しかったのだが、どうせ聞いたら長編スペクタクルが始まるだろうから。

 多分この中で唯一の良心であろう新妻に同じ質問をすると、こう答えた。


「アナタ、まさか本物ではないんじゃないですか?」


 ガッデム!!

 あぁ、あの世にすら俺に味方は居なかったよ、リン。地獄から這い上がって天国に行った時はまた一緒に剣の技を競おうな。


「アナタ、帰ってきて下さい。とりあえず、落ち着きましょう。お茶でも飲みます?」


 なんか(なだ)められた。でも折角なので頂いておく事にする。

 ズズ……お、美味しいな。

「大分落ち着かれました? アナタ」

「あぁ、それなりにな。で、ココはどこなんです?」

「どこなのかって、私とアナタの愛の巣じゃないですか」

「聞き捨てならないわね、私とダーリンの愛の巣よ」

「何を言ってるの? 僕と愛しの」

「分かった、黙れ」

「酷い……グスグス」


 大分僕っ子の扱い方が分かってきたな。


「えっと、愛の巣って事は俺って何日もこの部屋に?」

「アナタ、本当に忘れたんですか? 2人の愛し合った3年間を」


 さ、3年!?

 俺は3年もの長い間をコイツらと一緒に過ごしたと言うのか!?

 いや、これもやはり罠に違いない、閻魔大王の手下なんだから、そのくらい……はぁ。

 もう分かってる、五感が自らに備わってる事を確認してしまったから。


 俺、まだ生きてるんだ。


 って事は、コイツらが言っている事は全て本当の、現実に有った事なのか?

 でも、それだと妙だ。

 なぜ輪の中心だったであろう俺自身が全く覚えていない。というか、コイツらが誰かすら分かっていない。

 ハイテンションなコイツらには悪いけど、ここは素直に言ってみるべきかね。


「えっと、俺、あなた達の事を忘れてしまっているみたいです」

「……なるほど、つまりアナタは……なるほど。なるほど? なるほ……どっ」

「理解出来てないなら頷かないで下さい!!」

「つまりは僕の愛し」

「分かってないだろ」

「バ レ た か」

「つまりダーリンは記憶喪失になったって事よね」

「それが一番近い、かな?」


 多分、コイツらの言っている事が正しいならば、その可能性が高い。

 いや、むしろ逆。


 記憶喪失が治ったのかもしれない。


 それが一番しっくり来る。

 記憶喪失が治った時、記憶喪失になっていた時の記憶は忘れてしまうと聞いた事がある。

 リンを目の前で殺されたショックで記憶喪失になり、コイツらに出会って一緒に3年ほど過ごして、何らかのショックで治った、とするのが妥当だろう。

 その事を3人に言うと、


「じゃあダーリンは私達と初めましてになるのね。改めて、私はミーナ。剣士をやっているわ」

「私、サクラって言います。言いますって言うのも何か変ですけど……このパーティーじゃ賢者って事になってます」

「僕はタマ。格闘が得意だから格闘家をやってるよ。お好みで語尾に『ニャン』を付けるny」

「大丈夫です」

「酷い……グスグス」


 なるほど、クーデレはミーナ、新妻はサクラ、僕っ子はタマと言うらしい。

 ではこちらも礼儀として名乗っておくか。


「俺は、ユウキだ。3年前勇者だった」

「何を言ってるの? 今も勇者でしょ?」

「どういう事だ?」

「私達は、ダーリンという勇者の付き人、いえ、婚約者よ?」


 そういや、名前の後に職業を言ってたっけか。


「でも婚約者はダウト」

「嘘なんて付くわけ無いでしょ。ねぇ、2人とも?」


 ミーナがそう聞くと、2人とも首を縦に降り、


「そうです。アナタが3人まとめて面倒を見てやるだとか言ったから今の状況になってるんですよ?」

「僕も何回、愛しのハニーと一夜を共にしたか」

「それはダウト」

「なんで僕にだけそんな事言うのかな、まぁ嘘だけど」


 良かった……嘘で本当に良かった……。

 って、論点はそこじゃなくて。

 3人まとめて面倒を見てやる、だぁ!? 俺、そんな恥ずかしい事言ってたの!?

 ……悪夢だ。


「えっと、そこらへんはどうでもいいとして」

「「「どうでも良くない!」」」


 全会一致してないのでスルーですよっと。


「俺達の目的はなんだ?」


 勇者パーティーとして、一致させとかなければいけない共通認識がある。

 それが、


「魔王を倒す事だ」

「ダーリンに振り向いてもらって子宝に恵まれたいわ」

「アナタと子作りをしたいです。あ、もちろん魔王討伐後で構わないですが」

「僕に命を宿して欲しいな」

「お前らの願望でしかないだろうが!!」


 先が思いやられる再出発となった。

…………ちょっとボロボロですが、なんとか更新です。

四天王なのに一人? ってツッコミは止めて下さい←

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