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二軍 不知火タイタンズ! 第1球

スポ根……かなぁ?

プロ野球に女性選手が導入されたって設定です。

つまりは……そこら辺りは読んで察して下さい。ではどうぞ。

『代わりまして9番、バッター鴨志田将也』

 6対3、9回の裏、ツーアウト満塁。

 ホームランが出ればサヨナラという場面で代打としてコールされ、プロ初打席を迎えた俺をファンが後押しする。


 マウンドに立っているのは、ストレートで押す傾向のある右腕山下。先ほどから変化球ははっきりとしたボールにしかなっていないため、ストレートに狙いを絞って右打席に立つ。


 相手はクサいところを突いて凡打を打たせたいらしく、1球目2球目ともにスライダーを投げてきたが、大きく枠を外れカウントは2ボールとなった。1球外角いっぱいのストレートを見逃して2ボール1ストライク、バッティングカウント。


 そして4球目、マウンドのピッチャーは二度三度首を横に振り、多分投げたかったのだろうストレートが甘く入ってきたのを見逃さなかった。

 真芯に捉えた打球はレフトスタンドへ一直線に伸びてゆき、相手ファンの中へと吸い込まれる。


 代打サヨナラ満塁ホームラン。


 相手ファンからの悲鳴を掻き消すかのように歓声が湧き上がり、俺は一躍その日のヒーローとなった。


ЖЖЖЖЖЖЖЖ


 


「おいコラッ将也!! ボール拾って来いや!!」

「スイマセン!!」


 先輩に命令されて、外野を転々としているボールを慌てて取りに行く。勢いの無い球をグローブで拾って、内野に返す。先輩は礼を言うこともなく、練習に戻ってゆく。

 一時は将来を嘱望され、周りから持て囃されていた俺だったのだが。あの満塁ホームランの打席以降、ヒットが飛び出す事はなく、遂には二軍落ちを宣告されたのだった。

 そして今は、ノックで先輩が後ろに反らしたボールを拾って投げ返す、いわば球拾い役に成り下がっている。


 能力の無い者は、最終的には蹴落とされるのだ。


 今のプロ野球は男女混合となっており、実力があれば性別は全く関係なく起用される。というのは名目上で、女性で容姿などが優れていれば、実力がプロレベルに達してなくとも打席に立つ事は出来る。

 プロ野球の人気が低迷し、女子プロ野球のレベルが上がってきたために出来た制度で、やい色物だやい不公平だと、一部反感は買ったものの、今では浸透しつつある。

 そういった背景でプロ野球が人気を取り戻した代償として、男性の登録選手数が減り、競争が激化した。馬鹿らしくなって自ら引退していった選手もおり、日本プロ野球のレベルは一時的に下がったのだが、毎年ドラフトで腐るほど取るので別に問題は無かった。


「おいカモー、ボサッとしてねぇで練習したらどーだ」

「これもレッキとした練習だよ、オッサン」


 外野からのヤジに大声で答える。いつも見に来てくれているオッサンなので、愛があってのイジリだと受け取っている。二軍にでも、熱狂的なファンは居るのだ。

そういった人達のことを、ファームウォッチャーと言うらしい。


「将也さん、飲み物を持ってきました」


 俺の側に銀髪を靡かせた後輩が駆け寄ってきた。それと同時に周りから歓声が上がる。

 彼女の名は鴨志田マリア。容姿と足の速さを見込まれ今年プロになったばかりで、野球に関してはからっきし駄目なので、誰かが世話係をする事になった。それで偶然、名字が俺と同じだったため、流れで俺に役が回ってきたというわけだ。

 まぁ、そんな彼女にも色々問題があるわけだが……追々話していく事にしよう。


「いつも済まない、マリア」

「いえいえ好きでやっているだけですので」


 そう言って、マリアはバッティング練習に戻っていった。

 野球は守備が基本だと良く言われるが、代打要員であるマリアは基本的に打撃の練習しかしない。いや、させてもらえないのだ。

 もし守備でランナーと交錯してケガでもされたら、邪魔でしかなくなるから。

 足が速いのに何故代打要員なのかというと、能力上の問題ではなく代打の方が顔がテレビに映りやすいから、らしい。

 一部の規格外は、そこからレギュラーを勝ち取っていくのだが、マリアのような選手は、バントか右打ちのサインを出されるのが精々である。


「ヒューヒュー、羨ましいねぇ。俺が後30年若かったら、あんな風に若い子ちゃんとイチャイチャ出来たのに」

「それはマジで洒落にならないんで止めて下さい」


 ニヤニヤしているオッサンにツッコミを入れる。

 最近では、『この子と仲良くしたいから、この球団に入る』とか言い出す選手も出て来たりして、ちょっとした社会問題となっているのだ。そのお陰で潤った球団もあるにはあるのだが。

 我が球団、タイタンズは唯一女性選手を補強するのが遅れ、何故かあっという間に人気は無くなり、モチベーションの低下、主力選手のFA――フリーエージェントなどにより一時弱小球団に成り下がったのだ。

 流石にこれは上も頭を痛めたらしく、しぶしぶ去年から女性選手の獲得に力を入れるようになったというわけ。


「おい、カモ。集合かかってるぞ」

「あ、はい、今行きます」


 先輩に連れられて、ベンチ前に集合している選手達に合流する。もちろん、マリアもいる。

 輪の中心に居るのは、タイタンズの選手兼二軍監督代行を務める南田桃花。名前でも分かる通り女性である。女性としても身長が高い方ではなく、この場にいる事自体が違和感を生む。因みに年は「言ったら殺すよ? カモちゃん」不明である。

 心の声に干渉してくるとは、恐ろしい人だ。

 先ほどの続きだが、桃花さんは選手としては三流だが、人を見る目や容姿、コーチとしての素質を見出され、去年別のチームから移籍して選手兼二軍コーチを務めていた。

 しかし、今年になって二軍監督が急に辞めたため、代わりとして桃花さんに白羽の矢が立ったというわけだ。


「……ってワケで改めて宜しく!」


 円陣の中で拍手が巻き起こる。中には「桃花さん、俺と結婚してくれぇ!!」と叫んでる同期(ヘンタイ)が居たから頭をブッ叩いてやった。


「それじゃあ解散!! あ、後カモちゃんとマリアちゃんは私の所に来るようにね」


 突然の指名を受け、周りがドッと湧く。中には懲りずに「リア充爆発しろ!!」とホザいている同期(ヘンタイ)が居たから急所を思いっ切り蹴飛ばしてやった。気持ち良かった。

 粛正が終わった所でマリアと2人で桃花さんの所へ駆け寄る。


「それで、俺達に用ってのは?」

「そうですよ、マリアも練習しないとみんなに追い付けないです」

「まぁまぁ落ち着いてご覧なさいな。1つ、決めとかないといけない事があってさ」


 桃花さんは俺とマリアを交互に見て、にんまりとし、


「登録名さ、鴨志田兄と鴨志田妹で良い?」

「良くないです!」


 急に何を言い出すかと思えば。マリアと俺は赤の他人だってのに、そんな登録名にされたら本当に兄妹と思われかねん。


「マリアちゃんはどうなの? ぶっちゃけ」

「ぶ、ぶっちゃけ、ですか? えと……えっ……あぅ」


 マリアは否定も肯定もせずに、その場にうずくまってしまった。


「いや、そこは否定しようよ。俺達は兄妹でも何でもない、ただのチームメイトなんだから」

「でも……将也さんは、マリアにとって特別で、お兄さんみたいなモノですから」

「じゃあ義兄義妹だったら良いのかな?」

「俺の家庭関係がいろいろ(こじ)れてると思われるので止めて下さい!! そもそも何でこんな話になったんですか!?」

「いやぁね。登録名さ、四文字以内にした方が収まりが良いじゃない? ゲーム的に」

「確かに五文字以上になったら文字が潰れますけど、それは収録される人が気にするヤツで、二軍の俺にはあまり関係がないです!! てか、そんな事考えてる人なんて居ないでしょ!?」


 ったく、パワ〇ロとかパワ○ケとかのために野球をやってるわけじゃねぇんだよ。

 するとマリアが思い出したかのように顔を上げ、


「え、でも将也さん。去年のに収録されてましたよ?」

「マジで!?」

「はい。ミートGパワーF走力E肩力E守備力Fエラー回避F」

「良くもそんな恥ずかしい能力を公に公表出来たな俺!!」


 説明しよう!

 能力値はAからGまであり、Gから順番に能力が上がっていくのだ。

 つまりは、俺はゴミクズでしかないと言える。ああ、ホールがあったらインしたい。


「でも代打○と人気者が付いてますよ?」

「代打○は何となく分かるけど、人気者は間違いなく晒し者だよ!! てか、何でそんなに詳しいの!?」

「マリア、将也さんの事は何でも知ってますから」

「俺より俺の事に詳しくなってどうすんだ!! そんな事より登録名を考えて!!」


 桃花さんはこの一部始終を見て、ウンウンと頷き、


「鴨志田夫と鴨志田妻ってのはどう?」

「まだ結婚してないですから桃花さん!! 他のチームには夫婦が居たりしますけど、俺達はまだそんな関係じゃないです!! ねぇ、マリア?」

「『まだ』だなんて、そんな……ポッ」


 何でそこで照れるんだ。あぁ、まだって言ったからか。


「いや、そういう意味で言った訳じゃないからね、マリア。確かにマリアは可愛くて、愛らしくて、チャーミングな美少女だけど、マリアとは選手として仲良くしていきたいんだよ。分かる?」

「何でなんですか!? 少なくともマリアは将也さんにそれなりの好意を抱いてるのですから」

「だとしてもだよ? マリアは15歳じゃないか」


 えーと、マリアの問題について簡単に言うと、そういう訳だ。

 男性はちゃんとドラフトなり何なりで獲得するのだが、女性は容姿が優先されるという事もあって、若い頃から入る事が可能となっている。

 マリアもその口で、花の高校生活を蹴ってプロ入りをしたのだ。理由もあるらしいが、敢えて聞かなかった。

 そのせいなのか、少女マンガにドップリ浸かっていて、運命なんかには滅法弱い。特に名字が同じだとか。多分、それが理由で俺に好意を向けているんだろうが……マリアにはちゃんとした恋をして欲しい。だから、俺は……。


「大丈夫ですから、何とかなります!!」

「ならないから言ってるんだよ!?」


 と、そこで手を打つ音が聞こえた。


「ハイ、ストップストップ。私をほっとくなんて、カモちゃん……一回クビになる?」

「スイマセンっした! 頭撫でるんで許して下さい!」


 そう言って、桃花さんの頭を撫でる。何を隠そう桃花さんは、頭を撫でられるのが弱点なのだ。


「ふにゃ!? そ、それは反則なんだよ!?」

「普通のスキンシップじゃないですか」

「ふにゅ……ふわぁ……わふぅ」


 そうやって頭を撫で続ける事、数分。


「って、長すぎないですか!? マリアも撫でて下さいよ!!」

「そうか? じゃあ頭をコッチに」


 もう片方の手を使って、マリアの頭も撫でてやる。


「ん……んふ……あっ……」

「ふにゅ……ふわぁ……ふりゅ……」

「ウリャリャリャ!」

「あんっ……あっ、ふん……」

「みゅ……ふにゅ……ふりゅ……」


 今思ったけど、この状況は一体何なんだ。

 ムラムラする。そして何か色々虚しくなる。

 とりあえず、1分ほど撫でて、両手を2人の頭から離す。


「あっ、もう終わりなんですか?」

「そうだよカモちゃん。何で手を離すの……じゃなかったよ! また、うやむやにされそうだったよ!」

「ちっ、やっぱり桃花さんは誤魔化せないか。それで、何の話でしたっけ?」

「登録名の話だよ、カモちゃん」


 俺に対してジト目を向けてくる桃花さん。


「そうそう、だったら下の名前で良いじゃないですか。将也とマリアで」

「将也&マリア、なんてどうでしょう?」

「お笑いのコンビになってるし!! てかマリア、どうやってバッターボックスに立つつもりなんだよ!?」

「マリアが右で、将也さんが左です」

「言うと思ったよ!!」


 本当に漫才をしてしまった、嵌められた。

 後悔していると、何やら、視界にちょこまか動いている人が居た。


「あっ、やっと気付いた。えっと、それで『将也』と『マリア』で良いの?」

「それで大丈夫です」

「マリアも異論はありません。ではマリアはそろそろ練習に行こうと思います」


 そう言って、マリアはグラウンドに戻っていった。


「じゃあ俺もこれで」

「いや、カモちゃんはちょっと待って」

「ん? まだ何かあるんですか?」

「もうちょっとね。実は今日付けで女性選手を3人契約したらしいの」

「この時期にですか? また急ですね」

「女性選手に関しては色々緩和されてるからね。それで、その3人も面倒を見て欲しいの」

「え? 何でまた俺なんですか?」


 流石に4人も面倒は見切れないぞ?


「カモちゃんはマリアで女性選手に慣れてるでしょ? それに手を出すような様子もない。適任はカモちゃんしか居ないよ」

「でも……自分の練習もありますし……」

「その分年俸上げてもらうようにオーナーに言ってあげるから」

「そういう問題じゃ、ないんですけど……」

「じゃあ育てられた暁には一軍に推薦するよ? それならリベンジも出来るし、良いでしょ?」


 それは美味しい話だ。

 早いところ結果が欲しいからな。それにはチャンスが無けりゃどうしようもないから。


「それなら受けます! いや、やらせて下さい!」

「それで良いんだよ、カモちゃん。じゃあ明日連れてくるから、頼むよ?」

「はい!!」


 そうして安請け合いしたコーチの話が、まさかあんなに大変な事だったなんて思いもしなかったのです。

どうだったでしょうか。


野球小説だというのに見事にハーレムフラグびんびんですね(笑)

どうしてこうなった。

まぁ、これはこれで楽しくなりそうかもですが。


野球は好きなんで、コレはぜひともやってみたい作品かもです。文章力さえ向上すれば←


☆感想宜しくお願いします☆

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