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勇者御一行様をお導きせよ! その一

題名通り、勇者御一行――――を見守る騎士の物語です。

魔法あり剣ありの異世界で中世風となっております。

では、冒頭をお読みください。

 俺は三大王国の一つとされるオスマール王国に仕える、しがない騎士だ。


 王国に伝わるオスマール剣術を剣術学校で学び、そこらへんのゴロツキならば何人に囲まれようと倒すことが出来るほどには剣を嗜んだ。しかし騎士ならば、それくらい出来て当たり前であるため、別に突出した特技でも何でもない。


 ある時には三大王国の一つであるローム王国に留学し、勉学に励んだ。その甲斐あってか、世界を渡り歩くために必要な情報、言語を頭に詰め込む事が出来た。だからといって、俺は一国の騎士。オスマール王国から離れることがあまりない俺には必要のないスキルであった。強いて利点を挙げるとすれば、オスマールに観光に来た外国人の通訳が出来る程度か。


 そんな俺が、どういうわけか王様直々の命によって、オスマール王国最大の城、ドブクツアル城に呼び出されたのだ。一流の騎士にのみ入城を許されるその城は、謎に満ち溢れており、侵入を試みた不届き者がものの一分で抹殺されたとも聞いている。


 前述のような不届き者の増加に伴い設置された、外壁に配備された警備兵に、王様からの手紙と入城手形を確認させると、入ることを許可されたのか、門が解放された。俺に付いて来いと言わんばかりに警備兵が中に入ってゆくので、その背中を追う。


 道の横一面に広がっているイギンス式庭園に目を奪われながらも、周りをきょろきょろ見渡していると、まるで都会に出てきたての田舎者のような、滑稽な絵面になるのが目に見えているので、騎士としての風格を保ちつつ、歩みを進めていると、眼前にとてつもない大きさの城が現れた。


 以前に資料を拝読したことはあるが、これまで一度も現物を見たことはなく、ある程度覚悟はしてきたというものの、その予想をはるかに上回る巨大さに圧倒された。まるで俺を潰してやろうかと言わんばかりの圧力に耐えるため、前の警備兵の背中だけに集中する。


 城の入口にようやくたどり着き、その場に待機していた兵士の身体検査を一通り受けると、良いと判断されたのか、遂に扉が開け放たれ、中へと案内される。先ほどの兵士たちはこの内部に入ることは認められていないらしく、いかにも偉そうな恰好をした人物に連れられて、王の間なる場所に案内された。


 壇上には王様が鎮座しており、その脇を騎士で固めていたが、王様の鶴の一声により偉そうな格好をした人物も騎士たちと共にこの場から立ち去り、ついに王の間には俺と王様の2人だけとなった時、ついに王様が口を開いた。


「お主が私が呼んだ騎士、で間違いないのだな」

「はい、手紙と通行手形を持参しております」

「ならばよし」


 王様は髭を撫でて、辺りを見渡し、誰もいない事を確認すると、足を組んでタバコをふかした。


「それで、今回私めをお呼びになった理由はなんでしょう」

「もうここからは無礼講でいこーや。面倒臭いわ」

「はい?」

「堅苦しい事イヤなんだよ俺は。王子の時は好き勝手やれたが、王様になった途端に付け髭を付けなけりゃいかんわ、公的の場だとかで細かいマナーをいちいち守らないといかんわ、女遊びも自由に出来ないわ。だから今くらいは普通に喋らせてくれや」


 王様はタバコをそこら辺りの岩の壁に押し付けて火を消し、手で俺をコチラに招いているようなので、少し躊躇しつつも壇上に登る。


「お前は呑める口か?」

「酒には強い方だと自負しております」

「そうかそうか。なら俺の部屋で一杯やりながら語り合おうや。俺に付いて来い」


 王様に連れられてやって来たのは、王様が住むにはあまりにも狭く、装飾品もあまりない、殺風景な部屋だった。壁にはワインセラーと書かれた扉があるのみで、机と椅子とベッドしかない。昔俺が留学していた頃の部屋にも似ている、ごく庶民的なワンルーム。


「ほら、そこに座れや。酒は良いのを用意するからよ」

「銘柄と年代さえ言ってもらえれば後は私が取りに参りますが」

「別に構わんよ。俺はこの家の主、お前さんは客人だ。それだったら客人は家主からの計らいを黙って受けるのが礼儀じゃないかね?」


 一国一城の主にそんな事を言われてしまってはコチラとしてはグゥの音も出ない。王様の言う通り、椅子に座って待つ事にしよう。

 そうして王様が持ってきた3本のワインをそれぞれグラスに注いでテイスティングを楽しんだ後、その中で気に入ったワインを飲み込む。


「味はどうだ?」

「フルーティーで飲みやすいです。しかし、恐縮なのですが、こういった味であればそこまでの価値は無いかと」

「はははっ、大当たりだ。そこらへんに良く売ってる安物のワインだよ。高いのは自分の口に合わなくてな、色んなワインを飲んできたが、お前さんの飲んだワインが一番好きだ」


 この王様らしいな、と今ならば感じる。

 こんな庶民的な方が王様であれば、この国は安泰だろう。


「じゃあ他の二本は?」

「どっちも、騎士の年収ほどの価値はあるだろうな。親父の遺産だが、飲む機会が無かったのであけさせてもらった。捨てるのは流石にもったいないと思ったのでな」


 どうやら俺は、国宝級のワインを侮辱してしまったようだ。何故二つも空けてしまったのかを聞くと、城には来客などは殆ど無く、自分の飲むワインが貯まってゆく一方なので、少しでも整理をしたかった、という事らしい。


「そんなに整理したければお売りになれば良いんじゃ?」

「一度売却して、その噂が世間に広まってみろ。ワインを売らねばならないほど王国の財政が悪化しているかと思われるだろう。今でこそ三大王国の間で協定が結ばれているものの、いつ裏切られ攻められるか分かったものではない」


 ワイン一本で戦争になる世の中とは、平和になるのはいつの事になるのだろうか。


「その不安を払拭するために、お前さんを呼んだんだけどな」

「はい? それはどういう事ですか?」


 急な話の展開に戸惑うが、良く考えてみれば今まで王様とワインを飲んでいたこと自体が可笑しかったのだ。

 一気に酔いが醒めた俺は、王様の話に集中する。


「お前さん、ローム王国へ留学に行ってた事あるだろ?」

「ええ、結局騎士としては無駄足になりましたけど」

「それを活かせる仕事をやってみる気はないか?」

「どういった仕事ですか?」


 まさかローム王国への遣いだとかをやらされるんじゃあるまいな。いやしかし、それだったら俺じゃなくても大丈夫だ。だったら何だろう。


「まだ機密情報なんだが、実は魔王がこの世に誕生したんだ」

「魔王ですか!?」


 存在するだけでこの世に災厄をもたらすとされている、あの魔王が誕生したというのか。


「それを倒すための精鋭として、勇者的ポジションに我が国の王女アーベル=アラ=オスマール、魔法使いでもあるイギンス王国の王女カレン=アベ、さらにローム王国の女騎士団長エルクール=シンドバッドを徴収する事になっている」

「エルクールさんも来るんですか!?」

「手はず通りならば、その予定だ」


 喜びを隠しきれず、その場でガッツポーズをしてしまった。実はエルクールさんとは、ローム王国に留学した時に一緒に勉学に励んだ仲で、今でも度々手紙のやり取りを行っているのだ。

 まさかそのエルクールさんが騎士団長になっているとは思わなかったが。


「それで、自分は何をすべきなのでしょう」

「実はな、お前さんにはその3人のサポートをしてもらいたい」

「サポート、ですか?」

「そうだ、それもこの勇者御一行に正体を気付かれないようにだ」


 正体に気付かれないようにサポートしろ、と言われても正直イメージが湧かないのだが。


「それは、何故でしょう?」

「実はな……我が国の王女アーベルは弓の腕は確かなんだが、剣を持たせるとからっきし駄目でな。勇者的ポジションなもんだから剣を持つと言って聞かないのだ」

「では、アーベル王女以外を選出するなり、アーベル王女の立ち位置を換えてもらえば良いじゃないですか」

「それが、既に三国内で決められてしまってな。もし変更するような事があれば王権の権威が失墜し、衰退していく恐れがあるのだ。つまりは変更はもう効かないのだ」


 よっぽど喉が渇いたのか、王様は手に持っていたグラスに先ほどの安いワインを注ぎ込み、一気に飲み干した。


「それでも、アーベル王女の他にエルクールさんとカレン王女が居るわけじゃないですか。別に問題はないのでは?」

「それがそうでもないらしいのだ。カレン王女は魔法の研究に没頭した挙げ句、最近まで部屋に籠もっていたらしくてな。外出させる理由が欲しかったがために選出したんだとよ」

「でも、エルクールさんは大丈夫でしょう?」


 エルクールさんは俺がローム王国に居た時から剣や槍の腕の良さで有名であった。その人の何処に欠陥があるのだろうか。


「いんや、このエルクール団長がくせ者でな。エルクール団長は三王国間で満場一致の選抜だったのだが、パーティーを全員女にしなければ参加しないというのだ」


 エルクールさんが実はレズに目覚めているといった事実に驚きを隠せない俺は、グラスに残ったワインを一気飲みする。


「そのパーティーで魔王を倒す事が果たして可能なんですか!? 仮にも魔王ですよ!?」

「それが不安だからこうやってサポートを頼んでいるのだよ。……今回の選抜は三王国間で戦争を起こさないためのものでもあってな。個人個人が本来のパワーを出せば魔王を倒す事は出来ると思われるのだが、今回は事情があるだろう。最悪の場合、命を落としかねない。そこで、君がサポートに入るのだ。お前さん、魔法も使えるんだろ?」

「回復術式と簡単な攻撃術式のみですが」

「それで構わないさ」


 実は、ローム王国に滞在中、イギンス王国から留学してきていた魔法使いから簡単な術式を教えてもらっていたのだ。その時は気分転換のためだったのだが、まさかこんな場所で使えるとは思わなかった。


「お前さんは多種多様な能力を持っている。それを世界平和のために使う気はないか?」

「勿論お受け致します。このハークルスが、命をかけて勇者御一行をお守り致します」


 一国の騎士としてこれ以上の名誉は無いだろうし。


「そーかそーか。では、3日後の朝9時に3人をここから出発させるのでな。上手く後を追ってくれ」

「分かりました」

「あぁそれと」


 と言って、王様は懐から小さい箱のような物を取り出した。


「もし困った時はコレを使え。きっとお前さんのためになってくれる事だろう」

「分かりました」


 その後、ワインをもう一杯だけ頂いて、長居するのもナンセンスなのでお暇する事にした。


「では、頼りにしてるぞ」

「はい!!」


 そうして、俺のサポートライフが始まったのである。

いかがだったでしょうか?

第一話の第一話ともあって少し緊張します(笑)


少し解説しますと、三大帝国はもじってます。

イギリス、ローマ、オスマン……ほとんどそのまんまですねwww

因みに、イギンス王国の王女は日本風の魔法使い……陰陽師、ローム王国の王女はケモノ耳(俺得)、我が国オスマール王国の王女はスタンダードのツンデレ(はたしてデレがあるのか謎だが)お嬢様にしようと思ってます。


そしてこれからの展開ですが、三人の王女様はなんだかんだ言って箱入り娘ですので、世間の事をよく知りません。エルクール(ローム王国)も勉学には長けてますが、色々な事が初めての経験で暴走してしまうのです。そこで主人公があの手この手でどうにかしつつ、冒険を成功させるというサクセスストーリー(?)です。


☆感想を宜しくお願いいたします☆

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