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短編もの

神様だって恋をする

多大に暴言、若干下ネタを含みます。

ご注意下さい。

天使に夢を持つ諸君に告ぐ。

残念ながら天使なんて良いもんじゃない。

所詮は神の使いっ走りである。


俺、アロは戦争の神に仕える天使だ。

というと戦で大活躍!なイメージらしいが、

だいたいあの天上天下唯我独尊クソ野郎のパシリである。

メンドクセーちまちました仕事を押しつけられてばかりだ。

別に細けー事嫌いじゃねえからいいけど。

ちなみに神も大体上の神の下僕だ。

ヒエラルキー社会なのは地上と変わらねーぞ。


今までの俺の語りを聞いたら分かると思うが、

天使がみんな麗しい美形で清廉とかじゃないからな。

中にはそりゃイメージ通り、金髪長髪白皙紳士もいるけどよ。

俺みたいな乱雑な、むしろ悪魔だろって言われるヤツも多いからな。

つーわけで幻想はぶち殺せ。


「おい、アロ」

「何だよ、クズ」

「腸ぶちまけんぞ、お前」

「じゃあ腕の一本ぐらいもぎとってやんよ」


だいたいコイツが俺を呼びつける時は、

仕事を押しつける時と決まっている。

他のヤツから見れば物騒だろうが、この程度の応酬は日常茶飯事。

好戦的な神の僕だ。その影響か、俺は反骨精神上等である。


役割上、争いには慣れてる。でも下克上はしない。

クズこと戦争の神である俺の主にとっちゃ、

俺なんか戦闘力5のゴミ、ガチでやられたら困るんでな。


「で、本題は。またリリシャか」


核心を突いたらしい、目を逸らすクズ。

俺からすれば野郎が照れた所で気持ち悪いだけなんだが、

世の女にとっちゃご褒美なんだろう。

性格は破綻してるが、無駄に美形だしよ。


現在クズには惚れた女がいる。

中級神であるリリシャ、百合の女神だ。


そのルックスと俺様な性格を最大限に生かし、

気に入った女は片っ端から落としてきたクズだが、

彼女にたいしてはいやに引け腰である。


リリシャに一目惚れ以来、下半身が大人しくなったのは助かる。

毎回加害者罪悪感0の修羅場の仲裁をさせられる身としては。


クズは腐っても上級神なのだから、無理矢理物にしてもおかしくない。

だがそれをしないのは彼女が初恋の相手だかららしい。

散々食い散らかしておいて何言ってんだコイツと考えたが、

今のところ言ってない。未だにうわあとは思うけど。


「これを彼女に届けてくれ」

「へーへー、わーったよ」


で、俺はそれの橋渡しをさせられているのだ。

自分で行けば良いだろ、と言ったら顔を見るのも恥ずかしいだと。

初恋拗らせるとやばいのはよくわかった。


渡された絢爛な腕輪に、

自然物大好きなアイツが喜ぶのかねえと悩みつつ、

俺は目的の地へと向かった。






「ア、アロ!」

「よう。あ、これ土産な」


主に劣る神とはいえ、不躾な態度を取る俺を咎める事なく、

リリシャは俺を出迎えてくれた。

主から受け取った腕輪を渡せばリリシャは頬を染める。

あれ、好感触なのか。やったなクズ、評価が上がったぞ。


「できるだけ付けてやってくれ、主が喜ぶ」

「えっ、あ、これ……ディーノ様からなんですか」


さっきとは打って変わってしょんぼりされた。

なんでだ。よくよく見たら趣味が合わなかったのだろうか。

ディーノって誰だと一瞬考えたが、うちの主の名前である。やっべ忘れてた。


「あー……じゃあこれはどうだ」


と言って、来る途中、神力で作っておいた百合を渡す。

こんな事もあろうかと対策は練っておいたのだ。

プレゼント選びの失敗もこれで多少は中和できただろう。


「つっても俺の神力じゃ、こんなもんだけどよ」

「そ、そんな事ありません!素敵です。

 凄く……嬉しいです……」


やっぱり自分の化身の方が嬉しいか。

腕輪は忘れ去られたようだ。やっぱり好みじゃねーのか。

一度主にも進言しておいてやろう。

そりゃたまには惨敗をザマアwwwって指差すのも良いが、

あんまりへこまれてもめんどくせえし。


「じゃあ俺帰るわ」

「えっ、あ、あ、あの!アロ!」

「なんだ?」

「そ、その……アロは、私の事、どう、思ってますか……?」


主の想い人。だがネタばらしとか主からのリンチ確定。

とはいえ、若干主にも配慮してやろう。

主の言い分から俺が同意できる言葉を選んだ。


「かわいい、俺の知る限り、一番愛らしい女だ」






「かわいい……アロが、私の事、かわいいって……」


来客が去った後、百合の女神は回想していた。

最後にかけられた言葉を何度も何度も。

そんな彼女の頬は紅く色付いている。


この時点でだいたいの人は悟っただろう。

皮肉にも百合の女神が愛しているのは何を隠そうアロである。

どうしてそうなったのかは順番に説明するとしよう。


百合の女神は愛らしくいじらしい。

美や月の女神とはまた違う美貌の持ち主だった。

その為、他の神から絡まれる事もしばしばある。


随分前、彼女は窮地に追い込まれた。

上級神である調和の神に迫られたのだ。

自分よりも位の高い男、逆らおうにも敵わない。

強引に唇を重ねられそうになったその時、

調和の神は彼女の前から吹っ飛んだ。


『てめえもか』


淡々と呟く三白眼の男。見覚えはない。

だがこの天使が拳を振るってくれたおかげで自分は助かったのだ。

そう。逆らってくれた、神より劣る立場でありながら。

この打算無き救済は百合の女神の心を打つには十分過ぎた。


実はアロはこの時、ひっじょおおおおに機嫌が悪かった。

主の女性関係の清算に回らされてげっそりしていた所に、

嫌がる女に迫っている男。また彼が主の天敵である事も拍車をかけた。

女癖の悪さが苦労の原因と重なり、気付けば手が出ていた。

+マウントポジションでとにかくその麗しき貌を殴りつけた。

むしゃくしゃしてやった。反省も後悔もしてない。


ちなみに後日、この顛末を聞いた彼の主は、

宿敵の美貌を原形を留めない程ボコボコにした僕を褒め称えていた。

更に報復にきた調和の神をコンビでつるし上げた。

この主従、とことん外道である。


更にその後、百合の女神は自分を助けてくれた男を捜す為、

現れた集会にて、彼の姿を見つけた。思わずじっと見つめる彼女。

熱視線を向けられた天使は気付かなかったが、

彼の隣にいた戦争の神はその可憐な姿に胸を打ち抜かれた。

といった経歴の末、今に至るのである。


戦争の神はまさか下僕に愛しの女神が惚れているなど知らない。

下僕は主の暴走を抑えるためにも恋を成就させようと必死である。

百合の女神は男との仲を取り持たれてると気付かず待ち侘びるだけ。


さて、この辺の足りない三角関係はどこに向かうのやら。

それは神様だって、まだわからない。

ネタバレ


実はアロ(→)←リリシャ←←←←←ディーノ

身分差から抑えてる無自覚の恋情をアロが気付けば試合終了。

主の想い人とか関係無い。ディーノ、お前は泣いていい。

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― 新着の感想 ―
[一言] この三角関係ある意味めちゃくちゃ怖いです。 でも、泥沼デスマッチが見てみたい・・・・ そしてアロが勝利して、欲しい。 つーか、上司に苦労している人はみんな幸せになるべきです。 続編希望します…
[一言] あ、あはははは… 何ともまあ、綱渡りな三角関係ですね…(^^;; 自覚した時点で試合終了、自覚しなくてもエンドレス。これなんて無理ゲー? とりあえず、タラシはもげろ。
[一言] 後書き笑せていただきました。 女癖の悪いヤローどもの幸せは心底どうでもいいですが、健気な女神と苦労人のアロは幸せになって欲しいです。 こういう女癖悪い上、自分からいけなくて他人でいる奴なんて…
2012/09/24 03:34 退会済み
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