003 入学式 其ノ三
遅れてすいません。
場所は変わって今は、教室である。明日から毎日通い、
これから一年間お世話になる教室。
俺も運が悪いみたいだ。前の席はあの輪島である。
だが、まぁ俺のキャラ的には、運が良いことにしておこう。
なぜなら、前の席が女子ではなく、隣の席も後ろの席も
男子だからである。しかし、普通の男子ならば残念なこと
だが、俺は全く残念などではない。
教科書を忘れたとき、隣が女子だったら『教科書を忘れた
から見せてくれないかな?』なんて気安く言えないし、
配布物を配るとき、前の席が女子だったら緊張するし、
後ろの席が女子ならば、ずっと授業中見られている感じが
して緊張してしまうからである。
しかし、もう二度とこんな奇跡は起きることはないだろう。
次の席替えで必ず俺の前、後ろ、左右に女子がくるだろう。
先生は一体何を考えているのだろう?
席替えがくじ引きなんて、別に好きな席に座らせてくれれば
問題はないはずなのに…。そんなことを考えながら新しい担任
の先生の紹介を聞いているところである。
「なぁ、さっき言った一ノ瀬の事なんだけど、やっぱ今日この
瞬間に言っておくわ。俺、忘れっぽいし、今は暇だからな」
と輪島が後ろを振り返って言った。
どんな理由だよ。しかもどんな気まぐれだよ。
だが、俺にとっては、その事について今一番知りたいことの
一つである。
「ああ、早く教えろよ。」
「じゃあ、まずは俺が中学一年生の時から話そうか」
「………。」
「俺と一ノ瀬は、小学校は違うけど、中学一年から三年間
同じクラスだったんだが、一ノ瀬はどこにでもいる普通
の女子で友達も俺が見る限り男子も女子も多かったし、
勉強もスポーツもできていた。それに一ノ瀬と一番仲が
よかった女子、池浦 麗奈と毎日一緒にいた。
そう、一ノ瀬が殺した親友…池浦 麗奈と……。
なんだか俺が嫌いな辛気臭い話になりそうだな…」
「なんだよ…話すって言ったのは、お前じゃないか。それに
途中で話を切るなよ。」
「わかった。わかった。話すからそう慌てるなよ。じゃあ
続きを話すぜ。池浦 麗奈は小学校の時から好きな男子
がいたんだ。だが、もちろん付き合ってはいない。ただ
好きなだけで告白できずにいただけだ。それを一ノ瀬は
知らなかったんだなぁこれが…そのせいで池浦 麗奈は
しんだ。なぜなら池浦 麗奈が好きだった男子は、一ノ
瀬のことが好きだったんだから…。そして中学二年の時
その事件は起きた。その男子はついに一ノ瀬に告白をし、
そしてふられた。それを池浦は、目の前でみていた。だが
池浦としては、その男子を応援していたんだ。」
「じゃあ、池浦さんは、一ノ瀬さんに聞きにいったんじゃ…」
「そのとおり、そして呼び出した場所も悪かったんだよね。
そこは学校の屋上だったんだ。」
「そこで、喧嘩になって……」
「池浦は落ちた……。一ノ瀬の目の前で…」
そうか、そういうことだったのか…。じゃあ別に一ノ瀬が
直接殺した訳じゃなく、事故だったんだな。
「なんで輪島がそんなに詳しく知っているんだよ?」
「そんなことは簡単だよ。一ノ瀬が担任の先生に池浦が落
ちたときの状況を詳しく説明しているのを聞いた生徒か
ら聞いたんだよ。」
「でも嘘かもしれないじゃないか…」
「そうだな。信じるか信じないかは、お前しだいってやつ
だよ。俺も本当にこれが真実だとは思ってねえよ。だっ
て、俺のこの目で見てねえからな」
「なんだよその言い方、まるで一ノ瀬に直接聞けって言って
るみたいだぞ」
「そんなことは、思ってないよ。お前が知りたかったら聞き
に行った方がいいって言いたいんだよ。俺は別に一ノ瀬と
そんなに親しくもないし、もちろん恋人でもない。だから
俺は、この程度の話しかできないし、この程度のことしか
知らない。」
「…わかったよ。後は自分で決める。…ありがとな…」
「お礼を言われることは何もしてないよ。それに俺の情報が
嘘かもしれないだろ。もし一ノ瀬に聞いてそれが真実だと
わかってからでいいよ。まぁ聞くこと前提だけど…。聞か
ないと決めたならお礼はいらないよ」
それからしばらくして、初日の行事が全て終了してから放課後、
俺は急いで一ノ瀬のところへ走ったのであった。
渡辺くんは、ちょっと変態です。