001 入学式 其ノ一
遅くなってすいません
彼女の名前は一ノ瀬 夕凪。
俺とは別の中学からこの高校に来たそうだ。
さっきから彼女の自己紹介が今まで、まだ続いていた。
彼女が言うには、中学時代から彼女は世話好きで有名だった
らしい…そのせいで俺に声を掛けたそうだ。
人見知りをしないタイプとは、全く羨ましい。
だが、こんな美女に話しかけられた俺は、案外ラッキーだった
かもしれない…彼女は、俺がまだ一度も彼女の目を見ていない
ことにきずいていないからだ。
淡々と自分の事について話している。
「それでね……ねぇ?聞いてる?」
「あっ…その…ご…めん…なさい…」
有頂天になりすぎて彼女の話を最初しか聞いていなかった。
最悪だ。入学式初日から同じ学校に行く一人の女子に最悪の
印象を与えてしまった。
「大丈夫?本当に顔色悪いよ…」
助かった。なんて鈍いんだ。だが今はその鈍さと俺の顔色に
感謝したい。
「大丈夫、大丈夫! ちょっと考え事していただけ…」
「そう? じゃあ今度はあなたの事を教えてよ…等価交換ね」
聞いとけばよかった。
「えっと…じゃあ…俺の…名前は…名前は…渡辺 隼人です」
「渡辺くんね」
「よ…よろしく…お願い……します」
「えぇ~~。それだけ?趣味とか得意なこととかないの?」
「えっと………好きなタイプは心の広い人です!」
思いっきり叫んでしまった。しかも趣味と得意なこと関係なく
好きなタイプを…。こんなに知らない美人な女子に自己紹介
をすることが難しいとは…高校入試よりハードだ。
「へえそうなんだ…私は優しくて他人のために頑張る人かな」
俺の話に合せてくれた。
意外だった。
流石にドン引きされると思った。いや普通の女子なら名前を
言っている時点で引くだろうが…彼女の俺への対応は違っていた。
一瞬俺は、彼女の顔を見てしまった。様子を伺ってしまった。
「ありがとう」
何故かお礼を言ってしまった。
「いえいえ、こちらこそ道案内をしてくれてありがとうね」
だが、まだ高校には、たどり着いていない。
名前の設定に時間がかかってしまった
設定にはいつも苦労します。