第十九話:戦場のボーイズ・ライフ
何本もの車道が交わる交差点。その周囲を歩行者天国とし、更に中央部を封鎖して、そのステージは設置されていた。
太い電源ケーブルが何本も繋がった大型トラック。そのボディーが大きく展開し、『歌が宇宙を救う』チャリティーコンサートの舞台となる。
既に周辺は大勢の人だかり。足の踏み場も無く、周囲のビルから窓越しにステージを眺める見物客も多い。
「もう時間が無いぞ! 機材の立ち上げ急げ!!」
「中継車が渋滞に捕まって、少し遅れるそうです!」
「なら中央公園に回してる車を融通してもらえ! ショースケさんの指示だって言えば大丈夫だ!」
慌しく走り回るスタッフ。
ここで行われるのは公開生放送。失敗は許されない、一発勝負の舞台。準備は入念に行って来たが、突然のトラブルというものはどんな現場でも起り得る。
「おい、あのトラックなんだ?」
設営準備スタッフの責任者が、歩行者天国の端に停められた小さなトラックに目を止めた。
放送機材関連会社のロゴが入った、ごく普通のトラック。だが準備機材にああいった車両は含まれていなかった筈だが?
「さっきプロデューサー連絡ありまして、状況次第でサプライズ演出を行うから、その機材だと……」
「なっ! あの無能野郎、現場に断りも無く勝手な事しやがって!」
大声で毒づく設営責任者。相当な不満が溜まっているようだ。
「どうします、チーフ?」
「構わん、ほっとけ! プロデューサーが言い出した事なら、自分でなんとかするだろ! 邪魔になるようなら、蹴っ飛ばしてどかしとけ!」
こうして最前線で起った小さなトラブルは放置され、設営準備は着々と進んで行った。




