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第一章 結の舞・13

 差し出された書物を反射条件で受け取ったアゲハに微笑みを残した凪は、立ち上がった。

「好い縁が、再び交わりますよう」

 胸の前で手を組み、再度深々と頭を下げた凪は別れの言葉を口にする。そのまま踵を返して歩き出した背を、追ってくる声があった。

「手紙…出してもいい?」

 大きな茶色の瞳に大粒の涙を浮かべながら、アゲハは遠慮がちにそう問いかける。

 造船技術の発展によって活発になった大陸間の交流に伴い、『伝想屋(アモナ)』と呼ばれる職種が誕生した。遠い地にいる家族や友人に手紙を届けるのは朝飯前。旅人のような定住の地を持たない流離い人にさえ、彼等は独自の情報網を用いて手紙を届けてくれる。

 手作りだとすぐに知れる分厚い書物を両腕に抱えながら不安そうにこちらの返答を待つアゲハに、凪は穏やかに笑って見せた。

「ええ。楽しみに待っています」

 そばかすの散った顔に広がった嬉しそうな笑みと、その頬を伝った穢れなき雫に背を向けたその歩みが、今度は止まることはなかった。

 絶対に手紙出すから、という少女の契りを背に聞きながら、速い歩みに従って視界を流れていく風景から早々に民家が消える。鉱山を有するカッサラの街は当然の如く山裾に広がっていて、開拓された街から一歩出ればそこは木々に囲まれた小さな森になっていた。

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