第一章 結の舞・11
何気なく立ち寄った街で、彼と出会い、言葉を交わし、一時とはいえその背に命を預けた。
偶然と、そう片付ける事に対して、直感は異を唱える。
「私と同じ首飾りを、彼も持っていました」
その直感は、乱れた衣服の下で輝いていた赤色の水晶玉によって根拠を得た。
彼と自分が出会った事。それは、偶然では決してない。
必然。宿命とでも、いうのか。
「少し、彼と行動を共にしてみましょうか」
今までに交わした会話では、彼の全てを見定めるにはあまりにも情報不足だった。まるで世界を斜め横から見ているかのような皮肉な態度の裏に隠された本当の姿を、知らなければならないような気がした。
「あれだけ含んだ言い方をすれば、興味は持ったでしょう」
彼と行動を共にする理由は既に得られた。後は、彼がそれを了解するかどうかだ。過去を追うにしても、彼は一匹狼のきらいがある。果たして、同行者を迎え入れるだろうか。
「ここ数年で培った話術の見せ所ですね、結良」
柔らかな白猫の頭を撫でながらおどけたような笑みを浮かべて見せた凪の、窓の外に広がる遥か彼方まで続く青空を見遣る横顔は、何処か淋しげでさえあった。
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