表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/64

第一章 結の舞・7

「命を狙われる理由に心当たりは?」

 元来より頭脳労働は得意な方ではない。答えの出ない思考を早々に諦めた橋聖は、思慮深げに沈黙を守る凪へと問いを投げ掛けた。

「答えを知ってどうします?」

「ただの知的好奇心」

 警戒を覗かせた相手に軽く肩を竦めて本心のまま応えれば、外された視線は窓の外に広がる青空へと固定された。

「民俗学者は、時として紐解いてはならない歴史に出会う事があります。余所者に知られたくない歴史の継承者である守人に命を狙われる可能性は零ではありません」

「つまり、知られたくない歴史だから、それを突き止めようとしているお前を殺しちゃえって訳か」

 軽い口調で導き出された答えは、どう考えてもその態度が不謹慎に感じられるような非情な現実だった。

「嫌だね、短絡的な思考過ぎて」

「ですが、最も迅速で効率的な方法です」

 耳に滑り込んできた平淡な言葉に床に落としていた視線を上げるも、その視界に映ったのは窓の外を眺める横顔だった。流れ込んできた風にその金髪が揺れ、燃やすべきものがなくなった華蘭の匂いを攫っていく。

 命に対して淡白で冷酷な一面を持っていると思った。しかし、その命という括りには、どうやら彼女自身のものも含まれているらしい。

 ちらりと、机の上に置かれた短剣へと視線を遣る。

 よく使い込まれているものだという事が一目で判る、十字架のような形状の短剣。両側に刃が付いていないそれが、鋭利な先端で敵の急所を確実に貫く為の武器だという事を教えてくれる。

 彼女はこれで、一体何人の命を奪ってきたのだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ