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第一章 承の舞・21

「既に、その兆候はあったからね」

 月が姿を隠す今宵は、数歩先の闇すら見通せない。それがまるで人間の生き方を象徴しているかのようで、凪はその深緑の双眸を細めた。

「紛れ込んでいるなんて、彼等は思いもしないでしょうね」

 夜闇に虚しく響く自らの足音を聞きながら、凪は今日の出来事を思い出す。

 興味半分で立ち寄った街だった。特に興味を惹かれるような伝承もない、ありふれた街。最初は、そんな印象だった。

 だが、街に入るなりそれが一変した。活気溢れる陽気な気配の片隅に、まるで隠れるようにして存在する、けれど決して掻き消す事の叶わない異質な気配があった。

 それは、敢えて人気のない路地裏へと入った瞬間に確信へと変わった。足音もなく、女一人を取り囲んだ影。

「彼等の目的は何だと思う?」

 民俗学者は各地に残る伝承や言い伝えを研究し、そこから闇に埋もれし歴史を紐解こうとする。この世界に散らばった過去の欠片を拾い集め、その全てを合わせた時、そこに現れるものは果たして、何を語るのか。

「幻の都とされる『天元郷(てんげんきょう)』と、空白の百年」

 未だ解き明かされていない歴史の中で、その全貌が謎とされる最大の闇。空白の百年と呼ばれる、歴史書より消された記憶と、それ以前の書物には必ずといっていい程登場していながら、空白の百年よりも後のものからは完全に姿を消した、幻の都。

 歴史上最大の謎を追う旅の中で、彼等は時折姿を現した。まるでこちらが真実に近付く事を阻むかのように、問答無用で襲い掛かってくる。時には、今日のように、自らの命を投げ出す事すら厭わない。

 背後に、大きな集団がいる。それを、今日、確信した。でなければ、躊躇いもなく命を投げ出すなどという洗脳が出来るはずがない。


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