表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/64

第一話 承の舞・1

 最初に視界に入ったのは見慣れない天上だった。半分夢の中を漂っている頭で、ここは何処だろうと漠然と思う。

 体を起こしかけ、駆け抜けた激痛に秀麗な顔を歪める。右肩を庇うように上半身を起こし、服の下に巻かれた包帯に左手で目を覆う。

 思い出せ。一体、何があったのか。

 まだ睡眠を欲する脳を強制的に覚醒させ、途切れた過去と今とを繋げようとする。

「・・・・・・・・・」

 霞みかかったようだった記憶が徐々に過去を紡ぎ始める。脳裏を駆け巡る光景に、無意識のうちに拳を握り締めていた。

 傷口が痛む。それは熱い脈動となって神経を駆け巡り、硬く目を瞑った闇に浮かぶ記憶が決して作り物ではない事を告げていた。

 刻まれた記憶が告げる。それは、確信だと。

「―――起きたか?」

 耳に痛い程の静寂が満ちていた部屋に突然響いた声に、驚いたように顔を上げた。視線を遣った先で、中途半端に開けられた扉を背に立つ青年の赤い双眸と目が合う。癖のない茶色の髪が、開けられた扉から入ってくる風に揺れた。

「貴方は…」

 音になった言葉は相手への問いというよりも独白に近い。頭の片隅に残る記憶を思い起こそうと、その深緑の双眸が細められる。

「他人に名前を尋ねる時は、自分からってのが礼儀ってもんじゃないのか?」

 後ろ手で扉を閉めた相手の、些か不機嫌そうな問い返しに、妙に納得した。

(なぎ)、と」

 礼節に欠けると承知で、いまだ鈍痛を訴えてくる肩の傷にベッドの上に上半身を起こした状態で凪は近付いてきた青年へと頭を下げる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ