表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂気の魔法  作者: 波方 真季


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/57

第8話 対象LO


春休みの喧騒が嘘のように落ち着きを取り戻したパーク。

とはいえ、もう間もなく訪れるゴールデンウィークの嵐を前にした、ほんの束の間の静けさに過ぎない。


新緑が芽吹き始めた園内の空気を吸い込みながら、ゆりはいつものように無線を確認し、今日の担当であるスナックワゴンの巡回へと足を運んでいた。


新入社員として右も左もわからず必死だったあの日々から、一年。

気づけば、ゆりはもう二年目の社員として後輩を指導する立場になっていた。


次に回るのは、新アトラクションのオープンを間近に控えたエリア。

その入り口のすぐ横にある、スナックワゴンの様子をチェックするのが今日の彼女の業務だった。


「お疲れさまでーす」


いつもの調子でスタッフたちに声をかけ、ワゴンの在庫やマシンの稼働を確認しようとした、その瞬間。


ふと、アトラクションの方に視線をやったゆりの目に、見覚えのある姿が映り込んだ。


──蓮。


新アトラクションの前で、管轄の社員たちと何やら指示を交わしている彼の姿。

その存在感は、遠くからでも強烈に視界を奪った。


気づいた直後、蓮もまたゆりの視線に気がついて、パチンと軽快にウィンクを飛ばす。

いつもの軽薄さを纏いながらも、どこか意味深な光を宿した笑みと仕草。


ゆりは、フィッと顔を逸らし、蓮の仕草を無視するように、あえてスナックワゴンへ集中し、業務に没頭する。




少し時間は流れた。


「シードと、バターを1ケースずつ……バケットは、そうですね、3ケースお願いします!」


手際よくワゴンの在庫を確認しながらスタッフへ指示を飛ばし、補充に向かわせた瞬間、不意にじっと注がれる視線を感じた。

ふと横を向くと、ワゴンのすぐそばで腕を組み、何やら面白そうにこちらを眺めている蓮の姿。

同時に、いつの間にかワゴン前の列が急に長く伸びていることにも気づく。


「恐れ入りまーす!こちらの植え込みに沿ってお並びくださーい!ありがとうございます、こちらへお願いしまーす!」


蓮の存在を意識の端で感じながらも、ゆりは一切無視して、すぐさまお客様対応に集中した。

列を整理して声をかけていると、その中に、スナックバケットを肩から下げた来園者が、外れてしまったストラップを必死に直そうとしている姿が目に入った。

ゆりは、笑顔で手のひらを差し出す。


「よろしければ、お付けいたしましょうか?」


「ありがとうございます!」


カチッ、カチッ。

慣れた手つきでストラップを留め直すと、来園者は安心したように笑みを浮かべ、バケットを受け取った。


「メルヘンな一日をお過ごしください!」


笑顔でそう伝え、軽く会釈して手を振ると、ゆりは再びワゴンへと戻った。


パチパチパチ──。


唐突に聞こえてきた拍手の音。


「君の仕事っぷりはつくづく素晴らしいね、早瀬さん」


見ると笑顔で目を細めながら手を叩き、歩み寄ってくる蓮の姿。


「鳳条代表…ずっとそこにいますけど、暇なんですか」


「いや? バニクラの最終チェック中だけど、あまりの君の素晴らしい仕事ぶりについ見惚れてしまって」


「それなら早く戻った方が良いですよ。私、次のワゴンに行かなきゃいけなくて忙しいので」


「ねーつめたーい」


「では」


ゆりが踵を返して移動しようとした、その瞬間だった。


「ママー!!ママー!!!」


突如、甲高い泣き声が辺りに響き渡った。

振り返ったゆりと蓮の目の前に、目を真っ赤にした幼い男の子が現れる。

両手を振り回し、必死に何かを訴えるように「ママー!」と叫び続けている。


「お兄ちゃん、どうしたの?」


ゆりは慌てて駆け寄り、しゃがみ込んで目線を合わせる。


「ママとはぐれちゃったのかな?」


「ギャー!!!あ――ん!!!!」


そんなゆりの言葉など一切耳に入らず、子供は大粒の涙をぼろぼろと零しながらパニック状態で叫ぶ。


(迷子…だよね)


そう直感するも、冷静に判断してすぐさま無線を迷子センターへ繋ぎ、話しかけた。


ピッ



「対象LO、対象LO」



聞いた来園者が不安にならないよう、「迷子」を表すスタッフ内での隠語だ。


「ドリームガーデンエリア…えー、ピクシーレストラン前。服装は――」


「ギャー!!ママー!!!」


報告の途中で子供が突然走り出す。


「あっ!待って!!」


ゆりは反射的に追いかける。

制服のスカートを翻し、息を切らせながらも必死に伸ばす声で呼びかけた。


「お兄ちゃん!ちょーっとここで動かないで、じっと出来るかな?すぐにママに会えるからね!」


だが、その声も届かない。


「やーーだーー!!ママー!!」


子供は泣き声と共に足をバタつかせ、全く制御が効かない。

ゆりは眉を寄せ、焦りを隠せぬまま再び無線に声を飛ばした。


「すみません…対象LO、服装はノアの青いTシャツにデニムズボン…年齢は……」


「ギャー!!!ギャー!!!」


「お兄ちゃん、何歳かな….?」


泣き声にかき消され、返答などあるはずもなかった。


「ママー!!!」


またしても子供は方向を変えて走り出す。


「もー待ってって言ってるのに……!」


イライラではない。

只々焦りと不安が募る。

周囲の来園者も次第に立ち止まり、その様子を心配そうに見守りはじめていた。


「…ったく、なにやってんだあいつは」


後方から様子を眺める蓮は、呆れたように小さく吐き捨てる。

ふとワゴン販売に並ぶぬいぐるみパペットが視界に入り、蓮は足を向けた。


ゆりは、叫びながら走り去る小さな背中を追いかけながら、無線に飛ばす言葉も途切れ途切れになる。


「対象LO…現在ドリームガーデンエリアから… ウィルダネスチャレンジエリア方面へ移動中です……え?…年齢はー…恐らく3歳〜4歳、うーん2歳かな…」


「ギャー!!ママー!!!」


ドサッ。


全身で地面に叩きつけられるように、子供が転んだ。


あっマズい!


ゆりは駆け寄る。

だがすぐに、耳をつんざくような大音量の泣き声が炸裂した。


「ギャーーーーーーー!!!!!」


耳がキーンとなるほどの叫びに、辺り一帯の視線が一気に集中する。

通行人の大人も子供も、足を止めて振り返り、心配そうにゆりと泣き叫ぶ子供を見ていた。


「お兄ちゃん!大丈夫!?ケガしてないかな、見てもいい?」


「いやーーーッッッ!!ギャー!!!」


必死に声をかけるが、返ってくるのは拒絶と大号泣。

背中を撫でようとした手も振り払われ、どうにもならない。


(…うぅ…気まずい……)


頬にじんわり汗が滲む。

自分の声も、必死さも、子供には全く届かない。

これでは迷子センターに連れて行くどころか、一歩も動かせない。


(もぉ…どうしたらいいの……!)


膝をつき、泣き続ける小さな背中に途方に暮れるゆり。

必死に子供を安心させようと笑顔を浮かべながらも、泣きたいのはこっちだと言わんばかりに内心は焦りと冷や汗が止まらなかった。




「ヤッホー!ぼくノア!私リラよ!」




突然響いた甲高い声に、ゆりは思わず顔を上げた。

そこにいたのは、両手にテーマパークのイメージキャラクター、ノアとリラのパペットをはめ、キャラクター帽子までかぶった蓮の姿だった。


「…え?」


あまりに突拍子もない光景に、ゆりは呆気に取られる。


「どうして泣いているんだい?このままじゃ、今日が悲しい物語になっちゃう。だから僕がハッピーエンドのページに書き換えてあげるよ!」


蓮がパペットを揺らし、わざとらしいほど明るく声色を変えてみせた瞬間。


「わぁーーん!!ママぁーー!!あーん…」


さっきまで耳をつんざくように響いていた大号泣が、不思議と音量を落とした。


「物語の力で、どんな願いも叶えてあげるよ!君の願いを教えて!」


キャラクターそのものの声で話しかける蓮。

子供は涙をぐしぐしと手の甲で拭いながら、しゃくり上げる。


「ままぁ…ママぁ…」


「もしかして、ママに会いたいのかな?じゃあ、ママに会えるページを開いてあげようか?」


蓮の明るい声と人形の動きに、あれだけ激しく泣きじゃくっていた子供が、少しずつ嗚咽のリズムを落としていく。


「ふぇっ……ひっく……ままに……あいたい……」


涙で濡れた頬をこすりながら、やっと言葉が形になった。


その瞬間、ゆりの耳に無線からの声が飛び込んできた。


《迷子センターにて、対象LOの親御様と思しきお客様を確認。ドリームガーデンエリアにて、3歳のキヨトくんを見失う。服装はノアの青Tシャツ、デニムズボン。現在、対象LOの位置情報どうぞ》


思わず胸を撫で下ろすゆり。その横で、蓮がちらりと目配せしてきた。

無線から漏れた声は、もちろん蓮にも届いている。


「対象LOは…現在ウィルダネスチャレンジエリア、アドベンチャーコースター前です」


ゆりが的確に伝える。


《対象LOから、年齢、もしくは名前等の情報は聞けましたか》


その時、蓮が片手のパペットを高く掲げて、大げさな声を張り上げた。


「ママに会いたいのね!ノアならお安いご用よね!もちろんだよリラ!じゃあ、君の名前を魔法の絵本で当てるね!ワンス、アポンア、タイム!」


一人二役で小芝居をすると、くるりとパペットを回し、誇らしげに子供を指さす。


「わかった!名前はキヨトくんだね?」


「えっ!?どうしてわかったのー!?」


目を真ん丸にして、驚きに泣き声さえ忘れる子供。

ゆりは呆気にとられ、次の瞬間には蓮の視線と笑顔を正面から受け止めてしまった。


「対象LO、名前はキヨトくんで間違いありません」


無線に報告するゆりの声は、努めて冷静だった。


《了解。すぐにスタッフと親御様でアドベンチャーコースター前へ向かいます》


「了解」


無線を切ったゆりは、ようやく深い息を吐いた。

その横では、ノアとリラのパペットをはめたまま、子供と笑顔で話し続ける蓮の姿。


「じゃあ、キヨトくん。ママに会えるページを開くから、君のママの名前を教えて?」


「……ママは、はしもとぉ〜ママ!」


「橋本ママだね!ねぇねぇキヨトくんは今日はどこから来たの?」


「えっとね…お家から来たよ!」


蓮は両手のパペットを動かしながら、優しい声で子供に語りかける。

ママを待つ間のこの時間を、少しでもこの子の不安が無くなるように、楽しいひと時になるように。


「乗り物は何か乗ったかな?」


「のったぁ!ジェットのやつ!」


ぎこちなくも嬉しそうに答えていくうちに、キヨトの表情から恐怖と涙がゆっくり薄れていった。

パペットを操る蓮と、それに夢中で応じるキヨト。

ゆりは蓮のそんな意外過ぎる対応に驚きを隠せなかった。


ゆりは迷子センターのある方角をじっと見据えていた。

すると遠くに、迷子センターのユニフォームを着たスタッフと、その横を必死の形相で駆けてくる女性の姿が見える。

キヨトの母親に違いなかった。


「鳳条代表、来ました」


ゆりは小声で蓮に合図した。

蓮はすっと子供の目線に合わせてパペットを掲げる。


「さぁ、そろそろ君の願いを叶える時間が来たようだね」


「ほんとに?ほんとに叶うの?」


「もちろんだよ。」


蓮はどんな不安も吹き飛ばすかのような自信あり気な笑顔で力強く言う。




「キヨトくんが物語を信じていればね」




大きな瞳で蓮を見つめたキヨトは、小さく、でも力強く頷いた。


「ぼく……物語を信じるよ!」


「ワンス・アポンア・タイム!」


蓮の声が響いた瞬間。


「キヨトーーー!!!」


「ママ……!ママーーー!!!」


泣き叫びながら駆け寄る母子が、強く抱き合う。

あれほど大きな声で泣いていたキヨトの声が、今度は安堵の泣き声に変わり、母親の腕の中で小さく震えていた。


「ほら、これ。」


蓮は自分が被っていたキャラクター帽子をキヨトにの頭にちょこんと乗せ、手から外したパペット人形を差し出した。


「もうママから離れたらだめだぞ、せっかくの一日が台無しになっちゃうんだからな」


「うんっお兄ちゃん、ありがとう!!」


安心感溢れる蓮の笑顔。

パペット人形を受け取ったキヨトの表情には、すっかり笑顔が戻っていた。


ゆりはその光景を見つめながら胸の奥が温かくなるのを感じた。


「バイバーイ!」とキヨトが大きく手を振り、母親が何度も会釈をしながら親子は遠ざかっていく。

ゆりは大きく息を吐いた。

張りつめていた肩の力が少し抜ける。


「ありがとうございました…助かりました、本当に」


隣に立つ蓮へと頭を下げる。


「ったく、お前子供の扱い慣れてねぇだろ」


呆れ顔の蓮に、ゆりは図星を突かれたように顔を引きつらせた。


「うっ…ぐ…鳳条さんは、なんであんなに慣れてるんですか。ノアとリラの声マネ上手くないですか?」


ゆりの問いに蓮は当然かの如く答えた。


「馬鹿かお前。これでもパークの経営責任者だぞ?どんな時でも、常に来園者がどうしたら喜ぶのか、何をすれば笑顔になるのか知ってて当たり前だろうが」


その言葉に、ゆりの胸が一瞬熱を帯びた。

ストーリーテイルの社員としての魂を刺激され、心臓が不意に跳ねる。


「……私の中で鳳条さん…ちょっとキャラ変しました」


「俺のキャラは元々ノアとリラそのものだ。ノアとリラは俺の心の化身だからな」


「それは無いです。ノアとリラに失礼ですよ」


「は?お前ぶっとばすぞ」


思わず吹き出して笑うゆり。

その笑顔は、従業員として作る笑みではなかった。

蓮に初めて向けられた、素のままの少女のように無邪気で可愛らしい笑顔だった。


そんなゆりの笑顔に、胸の奥が熱くなるのを自覚しながら、蓮は口を開いた。


「今日、来てよ」


突然の言葉に、ゆりは思わず蓮を見る。

どこへ、などと聞かなくても、もう答えはわかっていた。


「今日ですか?」


「早番だよね?一緒に飯食って帰ろ」


蓮との三度目の夜が、いつかは必ず来る。

その予感は、ずっと胸の奥で確信へと変わっていた。

だからこそ、病院で処方された薬を毎日欠かさず飲んでいる。

もはや、断る理由など存在しなかった。


「ユニフォーム管理棟のゲート横付けだけはやめて下さいね」


「……!」


第一声は「無理です」か「嫌です」そう返されると思い込んでいた蓮は、不意を突かれたように目を見開いた。

そう言われたら、また軽口を重ねて、なんだかんだ押し切るつもりでいたのに。

まさかの、あっさりとした承諾。

その予想外の返答に、胸の奥でわずかに弾むものを感じる。


「で、どこで待ってればいいの?」


「車はどこに置いてるんですか?」


「本部ビルの地下だよ」


「では着替えたら伺いますので、鳳条代表は車内でお待ちください」


視線は来園者で賑わうパークに注がれたまま。

口調も、仕草も、あくまで業務中のスタッフ。

プライベートな約束なのに、どこまでも冷静で淡々とした返答。


「はーい」


対する蓮の返事は軽いトーン。

けれど胸の内は軽くなかった。

予想を裏切られた驚きと、抑えきれない高鳴りが同時に渦を巻いていた。




一日の業務を終えたゆりは、ロッカーで制服を脱ぎ、私服に着替えると、深くひとつ息を吐いた。

その瞬間、ポケットに入れたスマホが震える。


「知ら番……」 ※知らない番号


画面を見つめたまま少し迷った末、通話ボタンを押す。


「はい早瀬です」


《車、Cの23ね》


先ほども聞いた、馴れ馴れしい声。


「………鳳条さんに番号教えた覚えないんですけど」


《お前の職場の経営者だよ?データ持ってねぇわけねーだろ》


「個人情報の私的利用ですよ」


《うるせーから早く来い》


「はいはい、わかりました」


《じゃ》


一方的に通話が切れる。

無機質な「通話終了」の表示を見つめ、ゆりは思わず大きくため息をついた。

鞄を肩にかけ直すと、体に染みついた一日の疲れを感じながらも、足取りは迷いなく本部へ向かう。


夜の帳が落ちた本部ビルの自動ドアを抜け、静かなロビーを過ぎて地下へのエレベーターに乗り込む。

降り立った地下駐車場は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っており、コンクリートの冷気が足元を撫でた。


「えーと….C………Cの…23…」


ゆりは呟きながら駐車場の表示を確認しながら歩みを進める。

すると薄暗い照明に照らされ、奥まったスペースに一際異彩を放つ黒塗りのリムジンが停まっている。

無機質な駐車場の中で、その存在感だけが異質に浮かび上がっていた。

ゆりが近づくと、運転手が無言で一礼し、後部座席のドアを開ける。

車内からはわずかに冷房の効いた空気と、革張りの匂いが漂い、日常とは切り離された別世界が広がっていた。


「お疲れ様です、お待たせ致しました。」


「お疲れ」


乗り込む瞬間、ゆりは自然とそう口にすると奥に腰掛けていた蓮は、軽く片手を上げて返した。


重たいドアが閉まると同時に、外界の音がすべて遮断され、車内は二人だけの密室となった。

そしてその空間で、気楽そうな調子で蓮が口を開く。


「どこ行こっか、何か食いたいもんある?」


「……蓮の家でいいよ」


返ってきた言葉に、蓮は思わず眉を上げる。

その声音は、淡々としている。

けれど二人きりになった途端、急に呼び捨て。

しかもタメ口。

業務中のきっちりとした敬語から解かれたその口調は、妙に距離が近い。

なによりも、ゆりの口から発せられた「蓮」という音。

ただそれだけで耳の奥に残る、数日前に二人で名前を呼び合った甘すぎる時間を鮮やかに呼び起こされ、胸の奥をくすぐられるような感覚に陥った。


「は?俺んち?何もないよ」


「何か取るとか、買い物して作るとかなんでもいいよ」


ゆりの中では、手っ取り早く計画を遂行するには、余計な寄り道よりも、二人きりの時間を長く持つのが一番いい。

そんな打算を少しも感じさせない調子で告げるゆり。


「まぁいいけど…お前仕事した後にによく飯作ろうなんて気になれんね」


「じゃあ取ろう」


「おっけー」


短く軽い返事。

だが、蓮の胸は妙に熱を帯びていた。

こうしてリムジンは、夜景の中を滑るように進み、彼の自宅マンションへと向かっていった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ