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 壱 猟奇的な堕天使、地へ下る

 やけに威厳のある神々しい男の容姿をした人は、地上からはるか上空、雲の上にある天界で僕に指さしながら言う。

「この堕天使めが!お前は墮刑だ!」

思えばこれが、僕が神様と天界で交した最後の言葉だった。


  ・  ・  ・


 僕が次に気がついた時には、少し弱い雨に打たれながら少しゴツゴツとしたアスファルトの上で倒れ伏せるかのように寝そべった状態だった。

僕は地面に手を付き、少し体を起こしてから独り言のようにぽつりとつぶやく。

「そうか、僕は墮刑されたのか」

墮刑。

天使が天界で罪深き行い、もしくは神様に反抗すると、翼と頭の輪が黒くくすみ堕天する。

すると、天界に住むという権利がなくなり、地上へと落とされる。

この一連の流れを墮刑と呼ぶ。

 まぁ、仕方ないことだよね。

僕は神の行いに反発し、最愛の姉、小野水華という一人の天使をこの手にかけ、自分の中にその天使の魂を吸収したのだから。

僕は手のひらを広げ、手のひらを見つめながら少し力を入れてみる。

すると、周囲の水が僕の手のひらの上で小さな球体のような形を維持するかのように表面を少しクヨクヨと波立たせながら集まる。

それを見た僕は何かを確信したかのように手のひらを勢いよく握る。

その時、集まっていた水は僕の指の隙間から勢いよく飛沫を立てるように発散した。

 そして僕はどこか寂しげになって独り言を言う。

「この力は誰にも渡さないよ。水姉」

水姉。

僕が小野水華という天使を呼ぶ時に使用していた呼び名だ。

僕の言ったこの言葉は誰にも届くことは無い。

ただ、自分の中で何かを決意付けるための意思表示のようなものだ。

僕はこの力を水姉にから託されたんだから。

 水姉の力。

水を統べる力。

簡単に言えば、水を思うがままに操ることが出来るのだ。

僕なんかに簡単にこの力を託してよかったのかな、水姉は。

まぁ、僕がこんなことを考えたってしょうがないか。

そう思いながら僕は立ち上がる。

 辺りは今まで見てきた景色とは一変し、人工物であるビルがそびえ立っており、僕はそのビル群に囲まれた小さな駐車場の中にいた。

人気がなく、あまり車も止まっていない。

だけど、周りからは人の話し声や歩く音、傘が雨水を弾く音、生活音のようなものが少し小さく聞こえてくる。

少しの雑音と寂しいようなこの景色でさえ、僕は珍しくて仕方がなかった。

 けど、やっぱり何か違う。

「静かすぎるな」

そうだ、静かすぎるんだ。

昔に比べ今は、人間の闘争心、血の気盛んな心は消えてしまっている。

昔の人間の私利私欲による自己中心的行動によって変化していった地上はもっと凄まじかった。

どこまでも轟く誰かの悲鳴。

痛みで悶え苦しむ血反吐を吐くかのような重い声。

何かを切り裂く刃の音。

そんな音を聞く度、僕の心は踊り狂うかのように高鳴っていた。

脳の奥底から興奮していた。

けど、今は違う。

たった数百年前まで、人間たちは争っていたのに、いまはそんな世界とも一変してしまっている。

「退屈だ」

 僕は混沌が好きだ。

昔から人間の戦争の景色が好きだった。

戦争は全て、混乱そのもの。

全て混沌だった。

だけど今は秩序正しい。

そんなことを考えた後、僕は決意づいたように拳を握り、言う。

「これは、僕が地上に対して描いていた世界とは違う」

そして、黒くくすんだ翼を羽ばたかせ、ビル群のうちの一つのビルの屋上に足を踏みおろした。

 上からの景色は、やはり秩序正しい。

どこにも争いがない。

混沌がない。

やっぱりこれは、僕が地上に求めていた景色じゃない。

「混乱を招き起こそうか」

 そう言いながら僕は手のひらに力を集中させ、周囲の水を集めていく。

そして、イメージする。

昔、水姉が天使同士の喧嘩(物理)を仲裁するために使っていた大きな水の斧…

「水操〈水斧〉」

僕がそう言うと、僕の手のひらに集まっていた水の塊が大きな斧の形へと変貌する。

「多少は僕を楽しませくれよ?人間たち」

そう言いながら僕はゆっくりとビルの上から落下する。

 数秒後、僕はスクランブル交差点のど真ん中に勢いよく着地した。

辺りにものが落下する重い音が鳴り響き、あたりの視線が僕の方に集まった。

僕は高所から落下したにもかかわらず、骨折は愚か、強い衝撃による足のしびれすらなかった。

まぁ当たり前だ。

僕は元天使、堕天使なんだから。

天使や堕天使は魔力の込められている攻撃以外の攻撃は元のダメージとは違い、極端に減少されたダメージが自身への心身へのダメージとなる。

まぁこんなこと今考えたって意味のないことだけど。

 辺りがどんどんとざわめき始める。

「あの子、今上から落下してなかっか?」

「気のせいだろ」

「何あれ、コスプレ?」

「あの黒い羽といい、上の黒い輪っかと言いクオリティが高ぇな」

「あの斧、めっちゃすごくね?透明だぞ、ガラスか?」

へぇ、みんな堕天使を見るのは初めてか。

 そんなことを考えていると、ひとつの車が僕の目の前で急ブレーキをした。

そしてその中から1人、中年男性のような男の人がでてきた。

「おいお前!危ないだろ!」

なんだよこいつ…

うるさいなぁ…

僕はそんなことを思いながらそいつを少し冷徹な目で睨みつけた。

するとそいつは僕に対して怒りをあらわにしながら僕の方に近づいてきた。

「なんだお前?なめてんのか?」

そう言いながらそいつは右手で僕の胸ぐらを掴んだ。

 僕を楽しませてくれる最初の人間はこいつかな?

僕はそいつにだけに聞こえるくらいの声で言う。

「君は、僕のことをどれだけ楽しませてくれる?」

その後、僕は右手で斧を振り上げ、そいつの左頬に少しだけ深い切り傷をつけた。

その瞬間、そいつは僕の胸ぐらを掴んでいた右手を勢いよく離し、少し怯え震えた左手で左頬を触り、手のひらを確認する。

すると、そいつの左の手のひらに鉄臭い赤黒い液体がおおっていて、自身の左頬に深々と傷がついているという実感が湧き、どんどんと痛みが吹き上がってくる。

それと同時に、そいつの中の僕に対する恐怖感が爆発し、盛大に発狂しながら後ろを振り向き、車の方へ走っていった。

「うわぁぁぁぁ!!」

その一連の流れを見ていた周りの人達も同じく混乱し始め、辺りは一気に混沌に包まれ、あちらこちらから声が上がる。

「きゃーーっ」

「なんなんだアイツは!?」

「あの人、頬から血が出てたぞ!?」

「どけぇ!俺が先に逃げるんだ!」

その時、僕の心は大きな何かで満たされていく。

怯える悲鳴。

近くの人同士でさえ蹴落とし合う醜い言動。

血なまぐさい鉄の匂い。

無様に逃げ惑う人間たち。

その全てが僕を興奮させる。

僕は笑いながら言う。

「キャハハッ!いいねぇ!これこそ僕の求めてた地上の世界だ!」

 その時、さっきの男が車を発進させ、僕の方に突っ込んできながら言う。

「死ね!このクソ女が!」

それを見た僕は少し笑って言う。

「キャハッ、君はそんなんで僕に勝てると思ってるんだ」

そして僕はそいつが乗ってる車の数字の並んでいる板の上あたりを左手でつかんだ。

すると、バキッ!という音と同時に僕の掴んでいる部分は少しひしゃげ、車はピタリと静止した。

それでもなお、そいつは車を前進させようとし、アクセルを踏み続ける。

ただ、車は進むことなく、後輪だけが回り続けた。

「なんで動かねえんだ!?」

そいつは怒りに任せ、クラクションまで鳴らし始める。

そのクラクションのうるささに僕の笑いは少し怒りに変わる。

「うるさいよ、君。早く車から降りたらどう?もう何しても無駄なんだから」

ただ、そんなことを言いながら僕は少しだけワクワクする。

人間ひとりがこんなにも無様に僕に向かって立ち向かおうとしているからだ。

だけど絶対、こいつは僕に勝てない。

その醜さを見るのも、僕の遊びの一つなんだ。

そいつは言う。

「うるせぇ!俺にこんな傷をつけた落とし前はつけてもらうぞ!」

バカだねこいつ。

もう僕に勝てないって絶対気づいてるでしょ。

怒りの感情に身を任せて命を無駄にする気か?

そんなことを考えながら僕は言う。

「君、今降りとかないと知らないからね」

そして、僕は車をそのまま左手で垂直に持ち上げる。

その時、そいつは慌てるかのように車の運転席から転げ落ちる。

落ちた後、そいつは無様に腰を抜かしながら後ろに進み、僕に向かって言う。

「ば、化け物が…」

僕は言う。

「今更かい?お馬鹿さん」

その後、そいつは後ろを振り向き、腰の抜けたノロマでぎこちない動きをしながら逃げようとする。

その時、僕は右手に持っている水斧を上げ、そいつに振り下ろそうとする。

だけど、振り下ろせなかった。

あれ?

斧が振り下がらない…

どうして?

僕の意思では確かにこいつに斧を振り下ろそうとしてる。

けど、何故か斧はふり下がらない。

もしかして…

「水姉の魂が否定してる…?」

 この水を統べる力は水姉の魂を媒介にして使用することが出来る。

つまり、何らかの方法で魂が僕を否定すると、僕はこの力を任意のタイミングで使用することが困難になる。

だから今、恐らく水姉が僕の行動を否定しているから、僕は〈水斧〉を思うがままに使えない。

だけど、僕はそんなことよりも1つの小さな獲物を逃したことに対する残念な気持ちが大きい。

僕は右手に持っている〈水斧〉を見つめながらぽつりと言う。

「なんで僕を否定するの?水姉」

 その時、僕の辺りから声が聞こえる。

「お前は包囲されている」

「大人しく同行しなさい」

その声が聞こえた時、僕は辺りを見渡してみる。

すると、少し変な青いスーツのようなものを着た人たちが小さな黒い四角いような形のものに小さな穴の空いた武器のようなものを僕に向けていた。

僕は言う。

「君たち誰?僕に何か用?」

そういうと辺りの人達の一人が大きな声で言う。

「我々は警察だ!お前には大人しく我々に同行してもらう!」

ケーサツ?

天界で聞いたことある名前だな。

確か地上の秩序を守るために働く、言ってしまえば正義のヒーローか。

僕とは真逆だな。

「つまりみんな、僕の敵ってことだね?」

僕はそう言ってから左手で持ち上げていた車を誰もいないビル群の入口のようなところを軽く投げる。

ドーンと言う低い爆発音とともに車は爆発し、車近くのビルのガラスは粉々に砕け散った。

「次は君たちが僕の遊び相手だね?」

そう言って僕は、さっき大きな声で僕に話しかけた人に対して進み始める。

自分の思い通りの世界を想像していたら止まらなくなり、小説を書くという行動に移してみた所存です。

変な表現や文と文のつながり方など、変な箇所が多かったかと思いますが、面白いと思っていただけたら大変光栄です。

誤字脱字やここの単語の使い方が違うなど、ご指摘があればいただきたいです。

この物語の作者は飽き性なのでどのくらいのペースの投稿になるかは分かりません。

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