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25分の5の  作者: シンサク
9/60

第9話 もう一つの5人組(前編)

 丸刈りの少年ネギシヨシユキは、今回自分の出番がなくて、ホッとしていた。

 カサイヒョウコが【火炎噴射】の能力で、物体を通り抜ける能力の女子をリタイアに追い込んでくれた。

 カサイはちょっときついところもあるけど、頼もしい。彼女と同じチームになれてラッキーだったのかも。

 ヨシユキは良幸。幸運を祈る名前だ。名前の通り自分は比較的、運がいい方だとは思っている。

 本当に幸運の持ち主ならば、事故で死ぬことも、事故に巻き込まれることもなかっただろうけど。

 それより、遠からず自分の出番がまた回ってくるだろう。

 その時にちゃんとやれるのか。

やれなかったら見捨てられてしまうのだろうか。

  カサイは思い切って人に火炎を吹きかけていた。

 ドヤ顔を見せる彼女に、アナタにもこれくらいできるでしょ? と言われている気がする。

 だけど、ヨシユキの能力をーーこんなものを使用するのに緊張するなというのも無理な話だ。

 また、プレッシャーが重くのしかかってくる。

 

 突然、知らない場所で気がついて。

 自分が死んだと聞かされて。

 生き返りのチャンスを与えられると言われて。

 でも、生き返られるのは5人だけと付け加えられて。

 能力だのなんだのあれこれ言われて。

 どうしたらいいのかわからなかった。

 どうするべきなのかわからなかった。

 ヨシユキが気がついた場所には、他に男子が1人、女子が3人いた。

 ぱっと見、勉強のできそうなメガネの男の子セトエイチ。

 赤いカチューシャをつけた気の強い女の子カサイヒョウコ。

 ボブカットというよりも、おかっぱ頭という表現が似合う、市松人形みたいな女の子ホウジョウイチズ。

 自分が死んでしまったというのに、どこかのほほんとした雰囲気を漂わせるツインテールの女の子モモセノノ。

 カサイが天からの声の話、状況をかいつまんで説明してくれた。

 生き返りたいのなら、残り5人になるまで戦い合え。与えた能力を活用して。

 カサイは、5人生き返られるのだから、5人までなら手を組み協力し合える余地があると教えてくれた。

 確かにその通りだと思った。

 チームを組む組まないの話をしているうちに、空に浮かぶ残り人数を示すカウントが24になった。

 早くも誰かがリタイアした。

 さっそく戦い始めた者がいるのだとヨシユキは考えた。

 しかし、カサイによればそれは少し違うらしい。

 いくらなんでも人数が減るのが早すぎるとカサイは言った。

「おそらく、アタシたち以外の20人も5人ずつに分けられている」

 ほかの四組も自分たち同様、まず話し合いをしているはず。後先考えない子が先走ってほかの子に攻撃を仕掛けたりしない限りは。

 けど、よほどのバカでなければ、自分以外に4人いる状況で戦いを仕掛けたりはしない。1人くらい倒せても、残った3人に総攻撃に会う可能性が高いのだから。

「なら、なんで1人もう減ったんだ?」

「普通はいきなり攻撃する判断はしない。でも、そうしてもおかしくない状況は考えられるわ。

 誰かがチームを組むことを拒否してその場を立ち去ろうとした場合よ。

 そんな人を黙って行かせるのはリスクでしかない。

 どっちみち後で戦うことになるかもしれないんだから、背中を見せた時にでも攻撃しちゃったほうがいいのよ」

 カサイはそう説明した。

 なんにしろ戦う気の者がいることに変わりないということだった。

 やはり生き返りたいなら戦うしかない。ならチームを作るのが最善なのだろう。

 そんなこんなで、その場にいた5人でチームを組んだ。

 ヨシユキとしては、チームに加えてもらえて一安心はしていた。

 けれど、これで本当にいいのか? という思いもあった。

 戦うというのがやはり。

 いいのだろうか、本当に争いあって。

 自分が生き返りたいからと言って、他者を蹴落とすようなことをしても。

 それに戦うって、要は殺し合いじゃないのだろうか。

「殺し合いじゃないわ。みんなもう死んでいるもの」

 悩んでいたヨシユキにカサイは言った。

「今のアタシたちは幽霊みたいなものなんだと思うわ。だから殺し合いじゃない。

 やろうとしていること自体は、側から見れば殺し合いでしょうけど、違うものは違う。

 天の声だって、誰が生き返るのかを決めるための暴力行為や破壊行為の類は許されるってなことを言っていたでしょ?

 それにここであったことは生き返ったら忘れるとも言っていたし。

 忘れてしまうならいいでしょう。

 生き返ってさえしまえば、ここであったこと、やったことはなかったも同じ。

 覚えていないのだから、罪悪感を覚えることもない。

 アナタは生き返りたくないの?

 生き返りたいのなら割り切りなさい。

 神様なのかなんなのか知らないけど、あの声の主もそれでいいという考えなんでしょうよ。

 ほかの連中だって、やるしかないってんならやるでしょう。大多数はね。やらなきゃこっちがやられるわよ。

 ほかの連中もやる気ならこっちも遠慮する必要はない」

 カサイの言うことはもっともだった。

 ヨシユキは生き返りたい。

 十五歳で人生終わりなんて嫌だ。

 夢や望みがあった。生きて叶えたい夢や望みが。

 だから、ヨシユキはカサイたち4人と協力しあって、戦うことに決めた。

 戦って5人まで残って生き返る。

 ほかの死んじゃった人たち20人、じゃなくてヨシユキたちが動き出す前に減った1人を除いて19人には悪いけど。

 やるしかない。

 倒していくしかない。

 

 お互いの能力を教え合った後、カサイはざっくりとした行動方針や、戦闘の作戦も立ててくれた。

 そうして、ヨシユキたちというか、明確に決めたわけではないがカサイが実質リーダーみたいなものなので、カサイたちがと言うべきか。とにかくカサイが率いるチームは行動を開始したのだ。

 倒すべき自分たち以外の生還希望者たちを探し始めた。


 最初に見つけたのは、男子2人、女子3人で、ヨシユキたちと同じ男女比のチームだった。

「あたしら以外にも、無事5人でチームを組めた子たちがいたか」

 すでに1人リタイアしている以上、どこかは組めて4人のところがあるのは確定している。

 それ以外のところでも、その場にいた5人全員でチームを組めたとは限らないとカサイは言っていた。

 鈍い奴らが多い組みならば、チームで協力し合うことに思い至る前に、さっさとどこかに行ってしまったり行かせてしまったりということがあるかもしれない。

 実際、カサイチームの1人、おかっぱの女の子ホウジョウイチズは、天からの声の話しが終わって早々にその場を立ち去ろうとした。カサイが止めたが。

 チームを組んだ方がいいとはわかっていても、よく知りもしない子と組むのを忌避する者はいてもおかしくない。

 立ち去ろうとするものを行かせるべきではないと理解していた者がいても、上手いことその場を後にできた者だっているかもしれない。

 だから、5人チーム四つと、4人チームが一つ出来上がっているとは言い切れない。

 カサイの言葉には多少彼女の願望が含まれていたと思う。

 ヨシユキとしても、彼女の願望通りになっていてほしかった。

 もし、ヨシユキたち以外のところが、全て4人以下のチーム構成となっていたならば、自分たちは数の上で、有利となるのだから。

 だけど、少なくとも最初に発見したところは、チームの上限人数いっぱいの5人構成だった。

「別に5人いても構わないといえば構わないわ。

 ついているわ。あの子たち、5人近くに固まっている」

 カサイの言うように、5人の距離はかなり近い。身を寄せ合うようにというのは言い過ぎだが、固まって歩いてくれている。

「あれなら、一網打尽も不可能じゃない。アナタの能力を使う絶好の機会よ」

 カサイはヨシユキに向かって言った。

 ヨシユキは黒くて丸いものを手にした。

 爆弾だった。

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