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25分の5の  作者: シンサク
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第4話 5人組

 空に浮かぶ残り人数を示すカウントが24になった。

 それが意味すること。誰かが開始早々、生き返りの権利を巡る争いから脱落したということ。

 一体誰が?

 いや、それは問題じゃないし、考えるだけ無駄だ。ここにはいない知らない誰かだ。

 問題なのは、誰かを脱落させた別の誰かがいるだろうということ。戦いに積極的な者、生き返りのために容赦なく他者を蹴落とすつもりの者がいると推測できること。

 すでに戦いは始まっている。

 残り人数のカウントが減ったことが、皆の不安を掻き立てたようだった。これから自分たちも否応なく争いに巻き込まれることが現実味を帯びてきた。

 一人で行動しようものなら、誰かに襲われてしまうのはないか。チームを組んだ者たちの格好の的になってしまうのではないか。

 その場にいた見ず知らずの5人でチームを組むことへの不安もあった。

 それでも、ここでチームを作っておかないと、後から他の誰かと手を組んだり、他のチームに入れるかわからない。

 この場にいる5人で協力し合うのが最良。みんなそう判断したようだ。

 身長体重その他もろもろ平均的な中学三年生男子のババタイキ。

 もう1人の男子ワタヌキケイ。

 黒髪ロングで端正な顔立ちの女子クオンジメイサ。

 お団子頭のぽっちゃり女子イワカベトウカ。

 三つ編みの関西弁女子カシバリナ。

 5人はチームを結成した。

 でも、本当にこれでよかったのだろうか、とタイキは思った。

 タイキは、この場でチームを作る意味を認識していた。

 ここで5人組を作ってしまったのは、ほかに残っている19人を切り捨ててしまうと決めたも同じだ。

 5人で生き返りを目指すのは、19人の生き返りのチャンスを閉ざすということだ。

 本当に戦ってしまっていいのかと考えてしまう。

 自分の考えが欺瞞的なことはわかっていた。

 だけど。

 チームを組んだんだ。チームのメンバーのために力を尽くすべきだ。

 自分が頑張らないと、この仲間たちは生き返ることができないんだ。

 自分もだけど、仲間たちを生き返らせるために戦うんだ。

 タイキはそう考えることで、残り19人と戦うことを肯定しようとしていた。

 

 あまり長々と一箇所に留まっていたら、素早く動き出した者たちに見つかってしまうかもしれない。

 タイキたちは能力を教え合うと、行動を開始した。

 移動しながら話し合う。

 あれこれ能力の使い道だったり、この戦いに関する疑問点などを話しながら歩いていると奇妙なことに気づく。

 建物の出入り口には長方形の穴が空いているだけでドアはない。

 ところどころ四角く穴が空いているのは窓なのだろうけど、窓ガラスははめられていない。窓枠も取り付けられていない。

 家屋のような建物であっても、中に家具の類は一切置かれていないようだ。

 外枠だけを作って工事をやめて、そのまま長年放置された建物の数々のように見えなくもないが。

「不思議だよな。なんか意味があるのかな?」

「隠れにくいようにだと思います」

 タイキの疑問にクオンジが答える。

「あと、隠れている人を探そうとする人が侵入しやすいようにというのもあると思います」

「そっか。ドアや窓に鍵をかけられた面倒だもんな」

 窓ガラスくらいなら、能力やその辺の瓦礫を使って壊すのは難しくはないだろう。

 とはいえ、余計な手間、時間、体力を使いすぎる。隠れる者と探して回る者の労力が釣り合わない。

 隠れる側が有利になりすぎないようにという配慮だろう。

 建物のほとんどが平屋で、二階建てがちらほらと、一つだけ四階か五階くらいの高さの建物が見えるだけなのも、人を探して回る手間を減らすだろうか。

「これまで見てきた限り、どうもこの世界の建物に木材、ガラスの類は使われていないようですね。あと、金属も。

 崩れたり、ひび割れたりしている建物の壁から鉄筋が覗いているということもありませんし。

 能力以外に武器になりそうなものや、道具として役に立ちそうなものを、あんまり置いときたくないのかもしれません」

「なるほど」

 あくまでも能力を駆使して戦うのをメインにしろということだろうか。

「瓦礫や石は武器として使えますが、それくらいなら構わないということなんでしょうね」

「攻撃的じゃない能力を与えられた人のためかな?」

 タイキの言葉にクオンジは答えず、何やら思案顔になる。

「そういえばーー」

 クオンジが言った。

「空からの声の話で、ちょっと引っかかっていることがあるんです。ーーもしかしたら」

 クオンジが何か自分の考えを口にしようとしたその時。

 黒いボールのようなものが、タイキの視界に映った。

 それはタイキたちから少し離れた場所に落ちてーー爆発した。

 爆音が轟き、爆風が吹き抜ける。

 悲鳴が折り重なる。

 仲間たちはみんなパニック状態に陥ってしまったようだ。爆煙ではっきり見えないが、それぞれに走り出したようだった。

 呼び止めようと声を張り上げた。だけどタイキの声は誰の耳にも入らなかったようだ。

 タイキはその場に取り残されてしまった。

 皆がどこかに行ってしまい、再度の爆発が起こるかもしれないのに、いつまでもこの場所に留まっているわけには以下ない。

 どの方向に向かうべきか迷って、イワカベとクオンジの二人が逃げていったと思われる方へと向かって走り出した。

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